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2020年2月

2020年2月 4日 (火)

「立川談志を聴け」② 太陽が沈む時”ジュッ”と音がする

  

今日は令和2年2月4日。

  

前記事に引き続き、

立川談志を聴け」(山本益博著/小学館文庫プレジデントセレクト)

より引用します。

  

落語はそもそも”はなし”家と呼ばれ、噺とも咄とも書いてそれ

に当てた。つまり、いま思いついた言葉のようにしゃべる、口

から出まかせで話す、それが落語の話芸だった。

だから、噺はいつもファジーな状態でよいのだ。”完璧”を目指

そうとするから台詞も所作もすべて固定したくなってしまうの

であって、いつも揺れ動いているものなら、大切なことは何よ

り”即興”なのである。

高座はいつでも出たとこ勝負、観客との共同作業によって、は

じめて噺が成立するといってよい。これが談志の落語の特徴で

あり、危険をはらんだ魅力といえよう。

志ん朝の古典的様式美にのっとった、さながら役者の芝居がか

った長兵衛も見事だが、談志のあくまで人間のリアリティを追

究する脆(もろ)くて弱い長兵衛も、人間の真実の優しさにふ

れて素晴らしい。

(50~51p)

  

「長兵衛」は落語「文七元結」の登場人物。

実際に両者の「文七元結」を見て、比較してみたいです。

今の世の中、その気になればできます。

両者とも亡くなっているのに。

  

  

談志を知るには「やかん」がすごくいい。明治でも大正でもい

いから当時の速記本に出てくる「やかん」を並べてみると、い

かに談志のオリジナリティと独創性があるかがわかってもらえ

ていいかなと思う。

(136p)  

  

この本には、2つの「やかん」が掲載されています。

一つは「落語百選」(麻生芳伸編/ちくま文庫)に載ったもの。

伝統的な「やかん」

もう一つが立川談志さんの「やかん」

  

知ったかぶりのご隠居と八五郎の会話が楽しい。

特に面白かった談志さんの「やかん」の一部を引用します。

  

(八)「でも、地球は丸くて太陽の周りを廻っているんでしょ」

(隠)「バカが固まったな。オイ、しっかりしろよ、地球って

 なァ広いんだぞ。大きいんだよ。広大無辺なんだぞ。横浜か

 ら別府の方まで地球だぞ。お天道(てんど)様なんぞとくら

 べる奴があるか。太陽が地球の周りを廻ってるんだ」

「本当ですか」

「本当にも何にも、”日が昇る””日が沈む”ってのはあっち(天

 道)が動いてる証拠だろ。第一お前、天道なんてどのくらい

 の大きさだと思ってるんだ」

「・・・・まァ・・・・このくらい・・・・」

「そうだよ、朝日と夕陽の時にちょいと大きくなるだけで、あ

 とは、ここにあるお盆ぐらいのもんだ。そんなものと地球と

 一緒にする奴があるか。それに太陽ってのは間抜けなヤツだ。

 ピカピカ光ってて眩(まぶ)しいやい。昼間ァ明るいんだか

 らいらないんだ。夜出てこい。肝心な時に出てこねえ、間抜

 けなヤツだ、ありゃァ・・・」

「でもォ・・・」

「何が”でもォ”だ」

「ホラ先生、地球儀ってのがあるでしょう」

「あるよ、知ってるよ」

「あれで見ると地球は丸いでしょう」

「お前ネ、まさか文房具屋で売ってるもの(品物)なんぞ信用

 してるんじゃないだろうな・・・」

「・・・はァ・・・ねェ」

「何が”ねェ”だ。で、何だ」

「するとお天道さまは・・・・」

「東からでるだろ、で・・・・」

「”西に沈む”と・・・」

「そう」

「西のどこに沈むんです?」

「海だよ、西の海。(中略)」

「山に沈む時もありますよ」

「力の無い太陽は、時々海までいかないうちに山ン中に落っこ

 ちるのもいるが、ま、たいがいは海だ。海辺に行って太陽が

 沈む時、耳ィ澄まして聞いてると”ジュッ”て音がするよ」

「しますか」

「するよ。何度も聞いてるよ、俺は・・・」

「で、また次の日の朝、出てきますよ」

「新しいのがでてくるんだ」

「”新しい”のが、ですか?」

「そうさァ、海に沈んだら、太陽は”ジュッ”と消し炭みたいに・・・。

 お前太陽の燃えカスをみたことがないのか」

「ありません」

「だから妙なことを言い出すんだ、妙な奴らの言うことを信用

 するんだ。いいか、燃えてるもの(太陽)が海だぞ、水ン中

 に落ちりゃ、黒くなって消えちまう。それが次の日になると

 燃えて出てくるんだから、”新しいのが出てきた”と考えるの

 が、ごく正常、普通の人の考えだろうに・・・」

「で、また次の日も、出てきますけど」

「わからねえ奴だなァ、その次の日は早い話、三番目のが出て

 くるんだよ。順に順に出番を待ってるんだ」

「どういう風になってるんですかネ」

(191~195p)

  

読みながら笑ってしまったところです。

”ジュッ”がお気に入りです。

Youtubeで見ることができました。


YouTube: 【落語】立川談志 やかん

  

この動画の7分45秒あたりから、上記の「地球は丸い」

「太陽の方が動いている」話です。

授業で見せるならここからですね。

「立川談志を聴け」① 落語家の口調を写した速記本

 

今日は令和2年2月4日。

  

今度読んだのはこの本です。

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立川談志を聴け」(山本益博著/小学館文庫プレジデントセレクト)

  

  

引用していきます。

  

落語は口伝による伝承芸だから、音楽の楽譜に当たるような定

型の記録はない。師匠から弟子へ、先輩から後輩の落語家へ噺

が伝わるとき、教わる側に一切の裁量がまかされている。

そこで噺の骨子は忠実に伝わりながらも、そこに何らかの新し

い工夫なり省略なりが加わることとなる。これが落語という話

芸の最大の魅力でもあるのだ。

いまでは音声、映像による記録が容易に可能だが、それが出来

なかった明治の時代には、落語家の口調をそのまま写しとる速

記という形式が生まれた。この速記本のおかげで、明治・大正

の落語家の高座での噺の運びがかなり正確に知ることが出来る

のである。

(46p)

  

なるほどです。

レコードに録音できたのが明治12年。

※参考:ここでも道草 日めくりより/日本で最初にレコーディングした人物(2020年1月26日投稿)

明治時代に録音はそんなには普及しなかったことでしょう。

速記本を作成した人はすごいなあ。

落語ファンなら読みたかったでしょうね。

そして後の時代の人にはとても参考になります。

  

  

これはもう芝居であって、しゃべくりの舌耕芸ではない。映像

時代に対応し、噺の世界に演劇的リアリティを持ち込んだ、志

ん朝の独創的話芸といってよい。五代目圓生の高座が、上半身

の動きを最小限に抑え、すべては台詞優先で噺を聞かせようと

する舌耕芸の伝統にのっとった型であるのに対し、志ん朝のそ

れは、昔だったら邪道といわれかねないほどに噺を見せること

に重点を置いている。志ん朝の落語は、この芝居の所作を抜き

にしては成り立たない高座で、しかも、それを正統派のように

感じさせてしまうところが、志ん朝の芸の凄さなのではなかっ

たか。

(50p)

  

  

「志ん朝」というのは3代目古今亭志ん朝(1938~2001年)

大河ドラマ「いだてん」で準主役だった5代目古今亭志ん生の次男。

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こういう見方があるのですね。

なるほどです。

2020年立春の朝に思う

今日は令和2年2月4日。

立春の朝です。

立春は運勢が変わる日であると、以前占い師のおばあさんに

教えてもらいました。

昨年の日記を見ると、2月4日から自転車通勤をスタート。

2月8日に自転車事故を起こしています。

ここでも道草 自転車転倒で予想外の重症/不幸中の幸い(2019年2月10日投稿)

ここでも道草 現場に行きました/あの段差はどうにかしたいです(2019年2月10日投稿)

最悪のスタートだったので、

これからの1年は良くないかなという予感。

その予感は当たってしまいました。

6月にはへたばってしまってダウン。

休職となりました。

辞職まで真剣に考えた1年でした。

占い師のおばあさんに見てもらっていたら、

今までの1年はきっと良くない年だとし、

無理しないようにと言われていたことでしょう。 

  

でもそんな1年も、命は失わずに終えることが出来ました。

何はともあれ切り抜けました。

これまでの1年が「冬」だったなら、次は「春」です。

少しは運勢が良くなると考えたいです。

 

「冬」の期間に、「読書」と「登山」ができ、

長野市のボランティア体験もできました。

横浜や名古屋での研修も受けることが出来ました。

これらは「春」の期間の活動に活かしたい。

  

「冬」で仕事を休んで充電したと前向きに考えて

今日からの1年を頑張りたいです。

今日は出勤です。1月14日以来2日目。

教頭先生と再び復職プログラムの打ち合わせです。

2月中旬から毎日の勤務が始まる予定です。

その詳細が今日わかります。

  

生活のBGMはスピッツのアルバム「見っけ」です。

その中から1曲。


YouTube: スピッツ / 優しいあの子

  

いい1年にしたい。大事な今日。

  

2020年2月 3日 (月)

パラリンピック〈13〉 道下美里選手優勝/世界最古のパラ競技とは?

  

今日は令和2年2月3日。

  

今日(2月3日)朝日新聞朝刊の記事です。

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昨日行われた別府マラソンで、

道下美里選手が世界新で優勝しました。

(視覚障害の部 女子T12クラス)

歌がとっても上手な道下さん。

ここで記事にしました。☟

ここでも道草 パラリンピック〈3〉伴走ロープのニックネームは?(2019年10月14日投稿)

  

  

同じ新聞のテレビ欄の写真です。☟

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午後8時からNHKEテレで放映される

ハートネットTV」に注目しました。

 

世界最古のパラ競技? 心の格闘技?

何だろう?

  

調べました。

  

アーチェリーでした。

9 ハートネットTV

  

そうでした。

ここで記事にしました。☟

ここでも道草 パラリンピック〈5〉(2019年10月27日投稿)

ここでも道草 パラリンピック〈6〉(2019年10月28日投稿)

  

  

機会があるごとに、過去の記事を読み直して

理解を深めていきたいです。

「バナの戦争」⑤ 生きていくのに疲れちゃった/私たちは生き抜いた

 

今日は令和2年2月3日。

  

前記事に引き続き

バナの戦争」(バナ・アベド著/金井真弓訳/飛鳥新社)

より引用します。

   

【バナ】

もう疲れ切っちゃって、希望なんか持てなかった。生きていく

のに疲れちゃった。爆弾がわたしたちの上に落ちてきて、これ

以上生きなくてもよくなったら楽かもしれない。

(192p)

  

生きていくのに疲れちゃった」は辛い言葉です。

  

バナと家族は、チャーターされたバスで

命からがらアレッポを脱出することができました。

さらに飛行機でトルコに避難します。

  

 

【バナのお母さん】

バナ、あなたを守るためなら私はどんなことでもする。でも、

あなたは黙ってはだめ。あなたの声をあげさせないことこそ、

彼らの望みなのだから。この世の始まりから、平和の担い手を

黙らされようとしてきた。

でも、あなたを沈黙させようとする行為は、あなたのメッセー

ジがどれほど強力なものかを証明するだけ。あなたは世界を変

えられるし、彼らもそのことを知っている。だから私たちは口

をつぐまないし、平和しか望まない幼い少女を傷つけたがる卑

怯者に負けるつもりはない。罪のないシリアの人々や、戦争に

よって被害を受けているほかの国の人々のために、私たちは声

をあげ続けなければいけない。

私たちは、戦争がどれほどむごいものかを知っている。私たち

が声を発しなければ、だれがやるの?私たちは生き抜いた。そ

の奇跡に対するお返しは、ほかの人たちが生きられるように手

助けすること。

(218p)  

   

「私たちは生き抜いた」よかったです。

   

これが最後の引用。

 

【バナ】

難民キャンプで暮らさなければならない人がいるのはまちがっ

ている。いつもこわい思いをして暮らしている人や、友だちや

家族を助けられない人、ママが死ぬところを見てしまう人がい

るのも、ちゃんと飲める水や食べ物や家がない人がいるのもま

ちがってるわ。何かがまちがっているとわかっていたら、直さ

なくちゃね。どこの国に住んでいても、みんな助けあわなきゃ

だめなのよ。

(224p)

 

まちがっていることが、直るような世の中になってほしいと

切に思います。しかし、国レベルでは非常に難しいことも、

昨年読んだ「シリア内戦」でも感じました。

どうにかならないのか。

みんな戦争はまちがっていると思っているはずなのに。

  

  

  

「バナの戦争」④ 世界が何もしてくれないことへの怒り

  

今日は令和2年2月3日。

  

前記事に引き続き

バナの戦争」(バナ・アベド著/金井真弓訳/飛鳥新社)

より引用します。

時間は有限なので、厳選して引用します。(これが難しい)

  

  

【バナのお母さん】

バナ、死についてあなたに説明しなければならないのは、母親

の務めの中でも一番つらいものだった。戦争が起こる前、あな

たは死のことをまだ知らなかったのに、突然、死がそこらじゅ

うに存在するようになったのだから。

(中略)

(バナの友人の)ヤスミンが(爆撃で)亡くなったとき、私の

中でも何かが変わった。あの後の残虐な数カ月、私たちが包囲

されたときも。恐れや苦悩とともに、私は怒りを覚えるように

なった。私たちだけが耐えなければならず、世界が何もしてく

れないことへの怒り。わが子を守れない無力な自分への怒り。

爆弾を落とすことや子どもが殺されることが許されている世界

への怒り。人には寛大で公平にやさしく接しなさいとあなたに

教えた私が、こんな世界しか与えてあげられないことへの怒り

を。

(139p) 

  

バナのお母さんの文章は、戦時下で大人が感じるであろうことが

書いてあります。したがって共感するところが多いです。

私もそう思うだろうなと思います。

特に「世界が何もしてくれないことへの怒り」はドキッとします。

  

【バナ】   

包囲や爆弾にすっかりうんざりだった。ずっとこわがり続けて、

人がけがしたり死んだりするのを見て、それでも希望をなくさ

ないようにするのは、本当に難しい。前みたいに幸せなときが

戻ってくるなんて思えなかったし、ますますひどくなるだけだ

った。

ママに聞いてみたの。シリアやアレッポの外にいる人たちは、

わたしたちに起こっていることを知っているのかなって。どう

して人を殺すのをやめなさいって、だれも政府に言わないの?

人には親切にして、助けてあげなきゃいけないのに。パパとマ

マはそう教えてくれた。だったら戦争をしていいはずがないわ。

こんなにたくさんの人や子どもたちが死ぬなんて、まちがって

る。

(159p) 

   

もっともな疑問だと思います。

一人一人ならどの人にも親切心などの優しい気持ちがあるけれども、

国レベルになると、思うようにいかない。

当然のことがそうならない。

  

  

バナは、ツイッターで自分たちのことを発信し始めます。

    

【バナ】   

毎日ツイッターで、アレッポがどんなにひどいことになってい

るか伝えた。こわい思いをしたらそのことを書いた。世界にス

テキなことを伝えるのも楽しかった。わたしの歯が抜けたとき

のこととかね。

ママは、英語でどう言ったらいいか、いっしょに考えてくれた。

わたしたちはたくさんの写真や動画も撮った。世界中の人に、

シリアで起こっていることを見てもらえるように。どんなひど

いか目で見ないと、みんながわたしたちの話を信じてくれない

かもしれないと思ったから。死体の山やぼろぼろになった建物

とかを、全部見ないと。

(163p) 

  

インターネットは力です。内戦中の現場から少女が様子を

伝えることができるのです。

  

【バナ】

すぐにメッセージが届き始めた。世界中の大人からも子どもか

らも。みんながわたしの話を聞いてくれているなんて、信じら

れない気分だったわ。しかもとても親切なメッセージを返して

くれたの。

(162p) 

 

よかったねとホッとした文章。

でも国レベルでの変化はなかなか起こりません。  

  

彼女はこんなものも見てしまいます。

  

【バナ】

一週間後にマルワのお父さんは見つかったけど、遅すぎた。爆

弾で死んだとき、人の体は建物と同じようにぺちゃんこになる。

建物と同じように灰色になる。ぐにゃぐにゃになったり、足と

か腕とか体の一部がちぎれたり、顔がとれてしまうときもある。

とても見ていられない。

けれど、わたしは思ったの。もし世界中の人が、そんなひどい

様子を見たら、ものすごくたくさんの人が一瞬で死んでいるの

を知ったら、わたしたちを助けてくれるかもしれないって。

(166p)

  

  

酷い光景です。

それを7~8歳で見てしまったのです。

  

  

つづく

「バナの戦争」③ もっとしっかり準備しておくべきだった

  

今日は令和2年2月3日。

  

前記事に引き続き

バナの戦争」(バナ・アベド著/金井真弓訳/飛鳥新社)

より引用します。

  

 

【バナのお母さん】

おそらく私たちは、もっとしっかり準備しておくべきだったの

よ。アレッポでの戦争に対する準備を。

何年も前に、この戦いの種はいくつもまかれていた。「アラブ

の春」が招いたほかの国での争いや混乱を、私たちは見てきた。

どこかで政権が倒れ、指導者たちが退けられたり殺されたりす

るさまを見てきた。でも、すいうことははるか遠くの話で、絶

対にシリアでは起こらないーーー手遅れになるまで、だれもが

そう信じていた。

(64p)

  

【バナのお母さん】

シリアで武力衝突が始まったーー2011年、ダルアで暴動が

起こり、政府軍によってティーンエイジャーたちが逮捕され、

むごたらしく殺害されたーーのは、学校でスプレーを使ってア

サド政権に反対する落書きをしたというのが理由だった。私た

ちは衝撃を受け、絶句したけれど、それでもまだ自分には関係

ないことだと思っていた。悲劇ではあっても、現実には思えな

い。他人の苦しみをそう感じるのと同じように。

(64~65p)

  

お母さんのこの正直な気持ちは、共感できます。

きっと私が同じ立場でもそう考えるだろうなと。

お母さんの話から、戦争前のシリアは

平和であったこともわかりました。

  

  

【バナのお母さん】

戦争が起こる前に心配していたあれこれを今思うと、私はわら

ってしまうわ。あなたがくしゃみをしたり、少しでも咳をした

りするたびに、あわててしまったのだから。

この子はお菓子を食べすぎているんじゃないかしら?テレビを

どれくらい見せていいの?そんなことが一番の心配の種になる

のだったら、どんなにいいか。

何か食べるものがあるのかを心配するのではなく、あなたが何

を食べているかを案じるならいいのに。あなたに銃弾や爆弾の

破片が当たることではなく、ちょっとした風邪のことを心配す

るのならいいのに。

(70~71p)

  

そう思うんだよなあ。日本では、子どものゲーム時間が

問題になっています。

  

  

【バナ】

うちの近くの公園に小さな観覧車が組み立てられていたので乗

りにいった。ちょっとだけだよ、とパパ。まだ長い時間、外に

いるのを不安に思っていたの。安全なときでも、そういう不安

を追いはらうって難しい。

(弟の)ヌールは観覧車を気に入ってくれなかった。一周目、

てっぺんまで着いたときに泣いていた。でも慣れてくると、観

覧車が好きになってくれた。

わたしたちは十分間、観覧車に乗って何周もした。ママとパパ

はわたしたちを見ながらニコニコして手をふり、写真をとって

くれた。

あまりにもつらいことをたくさん経験すると、楽しい時間に気

づきやすくなるし、幸せな気持ちもさらに増えるの。

その日、わたしたちはとても幸せだった。そもそも戦争がある

なんてことを、ほとんど忘れるくらいに。

(110~111p)

  

爆弾が降りそそぐ街で、観覧車を組み立てた人がいることに驚き。

ふだんならささいなことが楽しく幸せに感じると

7~8歳の少女が記しています。

本当はもっと大きくなってから感じることだと思います。

戦争が少女を急速に大人にしていると思いました。

  

  

つづく

「バナの戦争」② 来る日も来る日も、爆弾、爆弾、爆弾

  

今日は令和2年2月3日。

  

前記事に引き続き

バナの戦争」(バナ・アベド著/金井真弓訳/飛鳥新社)

より引用します。

  

この本は、バナとお母さんの共同執筆です。

  

【バナのお母さん】

バナ、知っていた?アレッポは世界でももっとも古くから人が

住んでいた街のひとつなの。何千年ものあいだ、私が歩いてい

るのとまさに同じ場所を歩いてきたまさに同じ場所を歩いてき

た先祖たちとのつながりを感じると、気持ちが安らいだ。

アレッポ城にはいつも家族連れの恋人たちがたくさんいて、そ

の日も早春の一日を楽しんでいる人々でいっぱいだった。ごく

ありふれた、平和な毎日ーーー戦争が起こる前はそうだったの。

パパは仕事に行き、私は買い物をしてアベドおばあちゃんが料

理するのを手伝う。そして、夕食後は家族みんなで近所を散歩

したものよ。

今ではとても考えられない日々だけど、私たちはそんな毎日が

続くのがあたりまえだと思っていた。自分たちが歩いている場

所が、何世紀もそこにあった建物が、まもなく何もかも壊され

てしまうなんて、想像すらできなかった。

(13~14p)

  

舞台はアレッポ。歴史を感じることが出来た街に爆弾が落ちます。

  

  

【バナのお母さん】

あなたの名前はアラビア語で「木」という意味よ。強い女の子

になってほしかったから選んだんだけど、バナ、あなたはその

とおりの女の子ね。

(16~17p)

  

  

【バナ】

そのときから来る日も来る日も、爆弾、爆弾、爆弾。大きな飛

行機がいくつも空を横切ってきて、あっちにもこっちにも、ど

こにでも爆弾を落とした。飛行機がうんと低く飛んでいて、パ

イロットの顔が見えることもあった。

あの人は知っていたのかな?

自分が人を傷つけ、殺してるんだっていうことを。絶対知って

た。でも、どうしてそんなことできるの?

(36p)

  

【バナ】  

戦争を経験したことがない人は、爆弾にはひとつの種類しかな

いと思うかもしれない。でも、実際にはいろいろちがった爆弾

があるの。わたしは覚えが早いから、すぐわかるようになっち

ゃった。

どんな音がするかで、種類がわかる。

笛みたいに長くて甲高い音がして、大きくドカーンと鳴る爆弾。

車のエンジンがふかされるみたいな、ブーンブーンという音が

してから、ドカンと鳴る爆弾。

それから、落ちてくる間じゅう、バッ、バッ、バッと音がして

いる爆弾。これはクラスター爆弾(たる爆弾)で、小さな弾が

いっぱい入った大きな爆弾。地面にあたると、するどい破片が

一面に飛び散るの。

静かな爆弾もある。ほとんど何の音もしなうて、ドカーンと鳴

ったら空を明るい黄色に照らす爆弾。空を明るくする光はリン

と呼ばれるものよ。

(38~39p)

  

以前読んだ「シリア内戦」にも何度かでてきたたる爆弾。(樽爆弾)

※参考:ここでも道草 「シリア内戦」① 物理的な達成感も味わった本(2020年1月19日投稿)

動画がありました。

一つの爆弾から広範囲に小さな弾が飛び散って爆発する様が

見てとれます。


YouTube: クラスター爆弾を投下するロシア軍 着弾映像 シリア空爆

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そしてリンが光る爆弾。白リン弾。

Wikipediaによると、白リン弾は照明効果、焼夷効果があるそうです。

次の動画を見ると、落下した街では延焼が起こっています。


YouTube: ロシア軍 白リン弾投下の映像 シリア空爆

Photo

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バナは、爆弾の種類を覚えてしまうように、

普通の子どもがしないような体験を数多く体験します。

  

  

つづく

2020年2月 2日 (日)

「バナの戦争」① 少女から見たシリア内戦

今日は令和2年2月2日。

  

1月30日朝日新聞朝刊の記事です。

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シリア内戦は今も続いています。

この記事の中にあるアレッポで生まれ育った少女、

バナ・アベドさんが書いた本を読みました。

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バナの戦争」(バナ・アベド著/金井真弓訳/飛鳥新社)

  

シリア内戦の最中、2016年9月24日に、

バナはツイートします。

「わたしは平和が欲しい」

そしてアレッポの状態をツイッターで伝えます。

その中の1通。

「今夜、わたしは死んじゃうかもしれない。とてもこわい。

爆弾に殺されてしまう」

彼女は発信をし続けます。

アレッポが包囲される絶体絶命の危機を生き抜き、

トルコに脱出できた後に書いた本です。

少女からみたシリア内戦のルポルタージュです。

  

引用は明日。

おやすみなさい。  

「君が地球を守る必要は・・・」⑥ 食料も水も本当は足りているのに・・・・

  

今日は令和2年2月2日。

  

前記事の続きで、

君が地球を守る必要はありません

(武田邦彦著/河出書房新社)より

引用していきます。

  

  

筆者が10年ほど前にある発展途上国の国立大学の副学長に会

って、大学に施設を見学させてもらった。その大学の研究所は

「どうしたら石油を使って大量生産するか」という目的を持っ

たものばかりだった。そこで筆者が「日本は大量生産を進めた

結果、資源が無くなったり環境が悪くなるのではないかと心配

されています。このまま発展しても良いのでしょうか」と質問

したら、「私たちも日本人と同じ人間です。日本人の生活レベ

ルは一度、経験したいと思います」と言われてグーの音もでな

かった。

その時、筆者も傲慢になったものだと反省しきりだった。日米

や欧米の先進国がやりたい放題やって、環境を破壊し、石油が

枯渇しようとしている。だからといって、これから豊かになり

たいと思っている国に、「私たちが汚したので、セーブしてく

ださい」と言うのはあまりに身勝手なのは当然だ。

しかも世界の多くの国がまだ発展の途上にあって、人口で言え

ば5分の4の人たちが、「これまで植民地として圧迫され、そ

ろそろ発展しようと努力している人たち」だから、日本が石油

を節約したり、節約を呼びかけてもどうにもならないのは当然

だ。もし、節約を呼びかけられる資格があるとしたら、日本や

ヨーロッパではなく、発展途上国の人たちだろう。その人たち

に、「私たちは豊かな生活をあきらめるから石油を節約しよう

ではないか」と言われたら、その時には協力しなければならな

いかも知れない。

(180~181p)

  

10年前に発刊した本です。当時より石油の枯渇は

あまり問題になっていないように思えます。

今はとにかく温暖化です。気候変動です。

二酸化炭素を出さないようにしようと呼びかけられています。

しかし、その点で、武田教授の10年目の意見は同じです。

そして再びこの記事 ☟ に載せた論文

「日本は石炭火力で多くの人々の命を救える」

再読したくなりました。

ここでも道草 石炭火力を考える/石炭火力の勉強を始める(2019年12月28日投稿)

まずは発展途上国で、簡単に消えていく命を救わねばと

あらためて思います。次の文章も同趣旨です。

  

世界には約60億人の人がいて、そのうちの5分の1が先進国、

5分の4が発展途上国で、5分の4の人の収入は日本人の10

分の1ぐらいと覚えておけば良いと思う。つまり日本人から見

ると、生活が苦しい人が世界の80%もいて、日本に住んでい

るのは奇跡に近いとも言えるのだ。

貧しい人にとって、もっとも怖いのは「食べるものが手に入ら

ない」ということで、事実、アジアやアフリカを中心として8

億人の人が飢えていると国連は報告している。

それでも、もし世界中で収穫しているなら、環境問題というよ

り人類の生存に関わる重要な問題だが、実は、「8億人も飢餓

の人がいて、1年に東京の人口よりも多い1500万人が餓死

している」のに、世界全体の穀類生産高は人間の食糧として使

われる分は20億トンで、1人あたり300キログラムを超え

ている。つまり、本当は、「世界全体の人が十分な食事を楽し

めるだけの穀類が採れているのに、8億人の人が飢えている」

というまったく理解が出来ないことが起こっているのだ。

その理由の第一は、「昔は食料をわけたのに、今ではお金で買

うから」ということだ。

(中略)

お金持ちがたくさんの食料を買いこんで、その一部だけを食べ

て残りを捨てる。そうすると、全体としては食料が足りていて

も、お金持ちが余分に買って捨ててしまうから、貧しい人はひ

もじい思いをする。これが現在、世界全体の人が飢えないよう

な量の食料が採れているのに、8億人も飢餓の人がいる理由な

のだ。

(205~207p)

  

今年1月1日放映の「NHKスペシャル 10YearAfter

未来への分岐点」という番組で、淡水についても同じことを

言っていたことを思いだしました。

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食料も水も足りているはずなのに、

不足で苦しむのが現状なのです。

水不足に関する本も読んでみたいとこの番組で思いました。

  

  

最後の引用。

  

今後は是非、テレビの情報を鵜呑みにするのではなく、学校で

習ったことを使って自分で考える習慣をつけてもらいたいと思

う。

(204p)

    

 

読書もテレビ視聴も大事な勉強。

鵜呑みにしないためには、勉強を続け、発信し続け、

人の意見は聴き、できることは実行に移していくことかな。

  

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