2019年12月11日 (水)

知れば知るほど、素晴らしい人/中村哲さん

今日は令和元年12月11日。

  

昨晩放映された「クローズアップ現代+ 中村哲医師 貫いた志

昨晩見て、今晩も見ました。

亡くなられて知った人ですが、にわかファンとなりました。

知れば知るほど、素晴らしい人です。

番組の写真です。まずは基礎勉強。☟

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中村哲さんの言葉、文章です。☟

  

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あの同時多発テロの時に、こう考えていた人がいたのですね。

現地にいたからこそでしょう。

私には全く思いが浮かばなかったことです。

 

 

 

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下痢で亡くなる。

ここでも道草 11月19日は「世界トイレの日」でした(2018年11月20日投稿)

この記事を思い出しました。

日本では下痢で亡くなることはなかなか想像できません。

でも想像しなくてはなりません。

  

「医者100人より、水路1本」

これも実体験からの言葉。    

  

  

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だれも好んで戦争をしていない。命をかけない。

安心して食べていけることが、何よりも大きな願い、望み」 

治安が悪い中で、この考え方を通したことが素晴らしい。  

  

   

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「世界平和」のための戦争。

何かおかしいぞと思っていましたが、中村哲さんは、とっくに

解答を持っていました。

    

  

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みんなが安心して暮らせることが、何よりなんですよね。

ここんところが、中村哲さんの基本です。

   

 

 

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ヘリコプターの機銃掃射で、危険な目に合っていました。

それでも作業を続けていました。

  

 

 

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基本ですね、やっぱり。

今日の朝日新聞朝刊のコピーです。 

(クリックして拡大して読んでみてください)

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我々より先に無名の先駆者がたくさんいる。それは脈々と続い

ている。だから小さくても大きくても、いいと思ったことをま

っすぐ続けること。

  

 

印象に残る言葉がたくさんあります。

言葉だけでなく、実行しているから、言葉に重みがあります。

現場に出向いて活動するところも見倣いたいです。

長野市のボランティア活動に参加したのは、

ささやかだけど、私にとってはいい出発点になりました。

(次の記事からボランティア活動に参加した時のことを

書いていこうと思います)

  

記事の中に出てきた「医者、用水路を拓く」を読んでみようかな。

  

今晩は夜ふかしをしました。

でもこの記事を書きあげたかったです。

明日からもいいと思ったことをやるぞ。

「さよならテレビ」はどんな映画なのだろう?

  

今日は令和元年12月11日。

  

12月10日朝日新聞夕刊に気になる記事がありました。

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映画「さよならテレビ

どんな映画なのだろう?

 

2018年9月に地元東海テレビで放映された

ドキュメンタリー番組の映画化。

う~ん、放映された時には気がつかず、録画していません。

 

このブログを読んでいただいたらわかると思いますが、

テレビ番組をいかに教育に活かせないかなあと

考えている私にとっては気になる映画です。


YouTube: 映画「さよならテレビ」予告編(プロデューサー:阿武野勝彦/監督:圡方宏史)

 

とりあえず行動。

「劇場鑑賞券をお願いします」とハガキに書いて

送ることにしよう。  

どんな映画なのか、実際に見に行って確かめたいですね。

 

2019年12月10日 (火)

小説「出口のない海」⑦回天を伝えるために死のうと思う

  

今日は令和元年12月10日。

  

前投稿に引き続いて「出口のない海」 (横山秀夫著/講談社)

から引用します。

  

出撃の時に、回天のハッチは、外にいる整備員が閉めます。

  

  

「ハッチ閉めます。ご成功を祈っています!」

「伊藤、これまでありがとう」

「こちらこそ、ありがとうございました! --閉めます・・・!」

ゴクンと重い音がしてハッチが閉じた。

鼓膜に密閉の圧が掛かる。

(242p)

  

鼓膜に密閉の圧が掛かる

この一行が素晴らしい。緊迫感が伝わります。

  

  

  

沖田は顔を上げた。

「でも一つだけ聞かせてください。祖国防衛ではなく、ならば

並木少尉はなんのために死ぬのですか」

「それをずっと考えてたんだ」

並木は遠くを見つめた。

「俺はな、回天を伝えるために死のうと思う」

「伝える・・・?」

並木は頷いた。

「勝とうが負けようが、いずれ戦争は終わる。平和な時がきっ

とくる。その時になって回天を知ったら、みんなはどう思うだ

ろう。なんと非人間的な兵器だといきり立つか。祖国のために

魚雷に乗り込んだ俺たちの心情に憐れむか。馬鹿馬鹿しいと笑

うか。それはわからないが、俺は人間魚雷という兵器がこの世

に存在したことを伝えたい。俺たちの死は、人間が兵器の一部

になったことの動かしがたい事実として残る。それでいい。俺

はそのために死ぬ」

(272~273p)

  

これは作者がこの作品を書いた主題でもあると思います。

  

  

ボレロが聞きたくなった並木は、休暇に陸に上がった時に、

沖田と一緒に国民学校を訪れます。音楽室に行って、

そこにいた女教師に、ボレロを聴かせてほしいと頼みます。

女教師は、ここにはレコードはないが、女学校に行けばあると言って、

自転車で出かけます。女教師は、2人が特攻隊員だと知っていて、

どうにかしてあげたいと思ったのです。

並木と沖田は、音楽室で待つことになります。

  

 

外で音がした。見ると自転車が倒れていて、膝を擦りむいた女

教師が立ち上がるところだった。構わず小走りでこちらにやっ

てくる。

「すみません、お待たせしちゃって」

女教師は肩で息をしていた。

「大丈夫ですか」

「あ、平気です。でも・・・・」

女教師は顔を曇らせた。

「なかったんです。ボレロのレコード」

「ああ、いいんです。お気持ちだけいただいて帰ります。本当

にありがとうございました」

並木と沖田は折り目正しく挨拶をして音楽室を出ようとした。

その背に声が掛かった。

「あの・・・オルガンではいけませんか」

並木は振り向いた。

「オルガン?」

「うまく弾けるかわかりませんけど・・・」

女教師は黄ばんだ楽譜を握りしめていた。

並木と沖田は明るい顔を見合わせた。

「ぜひ、お願いします」

足踏み式のオルガンからボレロが流れ始めた。女教師は何度も

つっかえ、何度も弾き直した。だがそれは胸に響いた。どんな

有名な交響楽団が奏でるボレロより心に残った。

(273~274p)

 

この小説を読むと、「ボレロ」が聴きたくなりますよ。

きっと。


YouTube: Bolero (Gergiev)

  

  

ふ~疲れた。でも引用したい文章は全て書きうつしました。

ミニ財産になりました。

本の返却期限は今日まで。間に合いました。

小説「出口のない海」⑥怖い言葉「最後は一人になるんだな」

 

今日は令和元年12月10日。

  

前投稿に引き続いて「出口のない海」 (横山秀夫著/講談社)

から引用します。

  

並木らがボートに乗り込み伊号潜水艦に向かうと、見送る基地

隊員は岸壁に鈴なりだ。(中略)

岸壁、島、山、追い掛けて来るくるボート。すべて、人、人、

人で埋め尽くされている。

並木は胸に熱いものを抱きながら、潜水艦の外ラッタルを駆け

上った。厳粛な儀式は並木の心を死の決意に導いた。大勢の人

々の見送りの声は闘争本能に火をつけた。男にとって最高の死

に場所。よくそう口にしていた沖田の気持ちが今ならわかる。

これほどまで一人の人間の存在を、その死を、大きく見せてく

れる門出が他にあるだろうか。

(219p)

  

  

このように書きながら、次のページでは、潜水艦上に一人残っ

た並木の心情を対照的に描いています。

  

海はまた静まり返った。

たった今まで胸にあった興奮が嘘のように冷え切っている。

いっときの幻だったのだろうか。

並木は甲板に立ち尽くした。他の搭乗員が艦内に下りていく。

が、並木は動かなかった。

頬に風を感じていた。

身を切るような孤独感が襲ってきた。力の抜けた手を離れた桜

の枝が、甲板の縁に滑って海に落ちた。

後方の波間に遠ざかっていくその枝を見つめた。

ーーー最後は一人になるんだな・・・・。

野球部の仲間と別れ、家族と美奈子と別れ、とうとう沖田や隊

のみんなとも別れた。そして最後はたった一人回天に乗る。

一人で死ぬ。(中略)

美しい海。母なる海。だがそれは、二度と陸地を踏むことを許

さない、出口のない海でもあった。

(220~221p)

  

「ーーー最後は一人になるんだな・・・・」

怖い言葉だなと思います。

並木に限らず、たくさんの別れの後に死は来るんだよなあ。

長生きはしたいけど、長生きすることで孤独感は増すことでしょう。

死も怖いけど、孤独感も怖い。

回天での死は、それ以上ない恐怖の死に方です。

  

小説のタイトル「出口のない海」は221pに登場。

  

  

並木は孤独感を振り払おうと、次のようなことをしようとします。

  

並木は手早く発進用意を済ませ、胸ポケットから三枚の写真を取り

出した。よく見えるように機械の隙間に挟む。(中略)

 

3枚の写真は、美奈子の写真、家族の写真、出征前の最後の試合の

メンバーの写真。

  

近づいた。いよいよだ。

発進したら、写真の中のみんなの名を一人一人呼ぼう。呼びながら

敵艦に突っ込もう。そう決めていた。佐久間の名も呼ぶ。北の名も

呼んでやろう。

ありがとう。さようなら。みんなに、そう言いながら突っ込もう。

ーー俺は一人じゃなかった。俺はいつだって素晴らしい人たちに囲

まれていた。俺は・・・・俺はみんなと・・・。

(254~255p)

  

  

小説「出口のない海」⑤回天隊という紛れもない現実の中にいる

 

今日は令和元年12月10日。

  

前投稿に引き続いて「出口のない海」 (横山秀夫著/講談社)

から引用します。

ただ、まだ「出口のない海」を読んだことなくて、これから読

んでみたいと思っているのでしたら、私のブログを読むのを止

めた方がいいです。今から出撃シーンが出てきます。手に汗を

握る展開です。どうなるんだ!とドキドキします。すごい小説

なのです。私のブログを読んで、筋が見えてから読むとそこん

ところが楽しめません。止めましょう。

  

 

 

並木は聞いてみたくなった。

「沖田ーーーお前、早く出撃したいか」

真顔が向いた。

「もちろんです。明日行けと言われれば喜んで行きます」

「明日でもか」

「ええ。早ければ早いほうがいいです。それに、このままじゃ、

姉たちだって殺されてしまいますからね」

「ん。そうだな・・・・」

死ぬのは怖くないのか。喉まで出かかった質問を並木は呑み込

んだ。どれほど打ち解けても、それだけは言えない。たった一

つ存在する特攻隊基地のタブーだ。

(159p)

  

「死ぬのは怖くないのか」を言えない状態が続く生活。辛いか

ったろうなと思います。

  

  

歩数で測った線まで離れる。振り向いて、ポケットから寄せ書

きのボールを取り出す。親指と人差し指の間に挟み込む。

サイドスローからボールを送り出した。

ボッ。毛布がへこむ。

ボールを取りに行き、線まで戻り、また投げる。

ボッ。

死を覚悟した。自棄(やけ)っぱちに流れる時間も過ぎ去った。

しかし、だからといって送別会で流したあの涙が自分の本心だ

ろうか。

心静かに、そしてお国のためにと、喜んで死ねるだろうか。

ボッ。

送別会の涙は乾いていた。夢の中の出来事のように思える。

本当に死ぬのが恐くないのか。みんな、本当にそうなのか。

俺だけなのか・・・・。俺だけが生きることに未練を持ってい

るのか。

ボッ。

わかっている。もう生きることを考えてはいけない。確実な死

が約束されているのだから。

明日に夢を持ってはいけない。その夢はどう足掻(あが)いて

も実現できないのだから。

でも・・・・。

魔球を完成させたい。完成させてから死にたい。ちっぽけなこ

とでいい。自分がこの世に生きていたという証を残したい。

ボッ。

ーーーいいだろ、それぐらい・・・。

(164~165p)

  

先に出撃するの隊員たちの送別会に出席した並木は、

隊員たちの清々しい顔に感動して涙します。

その後の、シーンです。映画でもあったけな。

  

本当に上手な文章表現だと思います。

アプリ「OCR」を使えば、文章を写真に撮って、文字化でき

ます。でも、一字ずつうっていきたい文章なので、OCRを使

っていません。一字ずつうった方が、身になるという古い考え

の持ち主です。それと、労力がかかるので、本当に残したい文

章を精選できます。

  

 

並木も佐久間も回天隊という紛れもない現実の中にいる。恐い、

とひと言漏らしたら終わりなのだ。死にたくないと人に縋(す

が)ったら、もうこの現実の中にいられなくなってしまうのだ。

たとえ、地球上にどれほど自由で愉快で希望に溢れた世界があ

るのだとしても、たった今、ここに回天隊は存在し、並木も佐

久間もその只中にいる。男なら喜んで死ねという世界で、寝起

きし、飯を食い、息をしている。

(185p)

  

この文章を読んで思い出したのが、堀川城(浜松)を家康に攻

められて自害した土豪、山村修理の辞世の句。

ここでも道草 「直虎紀行」/堀川城跡 山村修理の辞世の句(2018年1月21日投稿)

  

「安穏に、くらせる人は、幸せよ」

  

世の中には安穏と暮らしている人はいるが、

今の自分は死ぬしかないことを言っていると思います。

それが現実。

それは運命なのでしょうか。

そこに至るまでは、自分で決断してきた積み重ねのはずですが、

死を目前とすると、こう思うだろうなと思います。

  

     

出撃の朝は明けた。微風。快晴。(中略)

美奈子がくれた千人針は行李の中に残した。弾に当たらぬお守

りは必要ない。自分自身がその弾なのだ。

部屋を出る時、誰かに呼ばれたような気がして振り返った。も

う二度と見ることのない空っぽの部屋が、故郷の景色のように

懐かしく感じられた。

(218p)

 

誰かに呼ばれたような気がして振り返った

こんな体験したよなあということを文章化してしまっています。

 

 

つづく

小説「出口のない海」④あまりに完璧な自爆特攻兵器

 

今日は令和元年12月10日。

  

前投稿に引き続いて「出口のない海」 (横山秀夫著/講談社)

から引用します。

   

馬場大尉が重々しく言った。

「天を回らし、戦局の逆転を図る。名付けて回天である。弾道

に搭載する1.6トンの炸薬は、いかなる戦艦、空母といえど

も一撃で轟沈(ごうちん)可能だ。この回天が何十基、いや何

百基と敵艦に襲い掛かり、ことごとく敵艦を海に葬るのだ」

大量の爆薬・・・・。潜望鏡・・・・。

並木はすべてを悟った。

ーーーそういうことだ。俺たちは魚雷の目になって敵艦に突っ

込むんだ。

(136p)

  

 

川棚の魚雷艇訓練所にいた頃、「震洋(しんよう)」という特

攻兵器を見た。ベニヤ板に貨物自動車のエンジンを取り付けた

だけの、お粗末な船だった。これに爆薬を積み込み、水上を走

って敵艦に突撃するのだという。ただし、そのまま自爆してし

まうのではなく、敵艦に接近したところで搭乗員は海に飛び込

んで逃げる。だから水泳の達者な者を搭乗員に選んでいる。そ

んな説明を聞かされた。

  

それは気休めには違いない。敵艦に接近してから海に飛び込ん

でも、爆発の威力から逃れることは難しい。しかも敵との戦闘

のさなか、味方のいる海岸に泳ぎつくなど不可能だろう。だが、

気休めとはいえ、ともかく建前は自爆兵器ではない。死を覚悟

して行く「決死隊」であっても、必ず死ぬ「必死隊」ではない。

同じようでいて、二つの間には天と地ほどの開きがある。

  

必ず死ぬとわかって行くのでは、もう人間ではいられない。そ

れは機械の一部だ。歯車だ。自分自身に対する確実なる死の宣

告は、人としての感情を捨ててしまわねば成立しえない。

やはり川棚にいた頃、回天は改良されているらしいとの噂を耳

にした。一型には脱出装置がないが、いま開発中の二型には付

いているのだという話だった。そんな根も葉もない噂に縋りつ

く思いでこの光基地に来た。だがーーー。

全ての希望は断ち切られた。回天は、あまりに完璧な自爆特攻

兵器だった。

(139p)

  

 


回天の形が、ほぼ魚雷であったことで、

「全ての希望は断ち切られた」のでしょう。

  

  

海がちかい。波の音が聞こえる。

ーーーなぜ、俺はこんなところにいるんだろう・・・・。

たった1年前にはグランドにいた。毎日みんなで野球をしてい

た。剛原や、小畑や、津田や、みんなで泥だらけになって白球

を追いかけていた。ボレロで冗談を言い合い、一球荘で喧嘩を

し、グラウンドで心を一つにした。なのに今は散り散りだ。み

んなバラバラにされて、自分一人ここにいる。一人で回天に乗

り、一人で死ぬ。

(140p)

  

並木の心の機微が、とても上手に表現されていると思いました。

死ぬほどの苦境ではなけど、辛い時にはこう思う時があります。

さすが、作家です。

  

  

並木と起きたが親しくなったのには、もう一つ理由があった。

いま二人の間をちょこまか行ったり来たりしている「カイテン」

である。

茶色の毛の子犬だ。まだ目が見えないようなのを沖田がどこか

らか拾ってきた。食糧事情が悪い昨今だ。犬にまで食べさせる

余裕はないと飼い主に捨てられたのだろう。カイテンという名

に並木は反対したのだが、沖田はひどく真剣な顔で言ったもの

だ。救国の兵器の名を付けてどこが悪いんですか。こいつだっ

てきっと喜びますーーー。

 

基地では誰もが「回天」をあまり口にしない。そもそも軍の機

密だから軽々しく口にできないし、だからではないが、普段は

「的(てき)」とか「艇(てい)」とか呼んでいる。心のどこ

かで、その名を避けているところがあるのかもしれない。回天。

それは死を意味する言葉でもあるからだ。

「カイテン、メシだぞぉ!」「おーい、カイテン、カーイテー

ン!どこだぁ!」

こうなるともう、回天は本当に救国の兵器なのだろうかと疑わ

しくなる。並木は内心苦笑しつつ、そんな沖田とともにカイテ

ンの世話をするのが日々の楽しみになっていた。

(157p)

 

とてもユーモアのあるエピソードだと思う。

実際にあった話なのか、横山秀夫氏の創作か。

ちなみに「漫画で読める 出口のない海」にはなかった話です。

  

  

つづく

小説「出口のない海」③ボレロを聴きたくなる小説です

  

今日は令和元年12月10日。

  

前投稿に引き続いて「出口のない海」 (横山秀夫著/講談社)

から引用します。

  

並木は首を傾げた。マスターが赤いベストを着ていなかったか

らだ。

(マスター)「何だい?」

不思議な気がした。2年半もボレロに通いつめていて初めて目

にする(マスターの)ワイシャツ姿・・・。

並木は聞いてみたくなった。

「ねえマスター、前に、目立つから赤いベストを着てるんだっ

て言いましたよね?」

「そっ、目立たないと迷子になっちゃうからね」

「迷子・・・・?」

「僕は広島生まれでね」

ポットを傾けながら、マスターは意外な話を始めた。

「5歳の時、日清戦争に出征する父を宇品港まで見送りに行っ

たんだ。父の好物のおはぎをたくさん抱えてね」

マスターはヒロ坊と呼ばれ、父にすごく可愛がられていたという。

 

その日、宇品港は出征する兵隊と見送りの家族でごったがえし

ていた。母に手を引かれてやってきたヒロ坊は、はしゃいでい

るうちに迷子になってしまった。父と母は出会えたが、ヒロ坊

を探し回り、1時間の面会時間は瞬く間に過ぎてしまった。父

は好物のおはぎに手もつけず、母と話らしい話もしないまま、

引き裂かれるようにボートで輸送船へ向かった。ヒロ坊を頼む、

ヒロ坊をよろしくな。そればかりを繰り返し母に言いながら。

 

輸送船が出航した後、ヒロ坊を見つけた母は悔し涙を浮かべて

言った。目立つ服を着せとけばよかった。もっと目立つ服をーー。

「僕にはなんのことかわからなくてね、父が食べなかったおは

ぎを腹いっぱい食べてご機嫌だった」

二人は黙した。小畑は洟をすすっていた。

並木はマスターを見つめた。

「お父さんとは・・・?」

「それっきりだったね。1年ぐらいして戦死の報せがきたよ」

体の芯を貫くものがあった。

昨日まで隣にいた人が明日にはいなくなる。それが戦争という

ものなのだろう。

マスターは、何事もなかったように、店の掃除を始めていた。

下手くそな舞姫のスケッチを収めた正方形の額を、丁寧に布巾

で拭いている。息を吹きつけたガラスに優しい顔を映している。

マスターは胸の中の思いを言わなかった。言いそうでやはり言

わなかった。

だが、聞こえた。

戦争なんて勇ましくも男らしくもない。ただ、悲しいだけだー

ーー。

(89~91p)

 

マスターの赤いベストの逸話は長くても引用したかったです。

「まさか、あれが最後の対面だった」という別れが、戦争中には

たくさんあったのだと思います。

死があっけなくやってきてしまうのです。

  

  

マスターは額(がく)の裏側の留め金をはずし、慎重な手で中か

らスケッチを取り出した。いや・・・。

それはただのスケッチ画ではなかった。やや厚みのあるレコード

のジャケットだった。マスターの手がくるりと裏を返す。

「ボレロ・・・」

美奈子が呟いた。

ラヴェルのボレロ。並木にもすぐにそうだとわかった。裏だと思

った面が表だった。舞姫のスケッチは、ボレロのレコードのジャ

ケットの、何も印刷のない真っ白い裏の面に描かれていたのだ。

並木は呆然とした。空転する頭の中で、しかし、霧が晴れるよう

に喫茶ボレロで一番の謎が解けていく。

「特別な時にかけるんだ」

そう言って、マスターは蓄音機の埃を払い、ネジを巻いた。

レコードが回り出した。

(111p)

 

「ボレロ」という喫茶店なのに、「ボレロ」が流れたことがなか

った喫茶店。出征する並木と見送る美奈子のために、特別に「ボ

レロ」が流れました。

  

並木がずっと聴きたいと思っていたボレロだ。美奈子がずっと聴

かせたいと思っていたボレロでもあった。

(112p) 

 

みんな娑婆っけたっぷりに「ジャズが聴きてえなあ」などと口に

する。並木はボレロだ。ああ、ボレロを聴きたいなあ、と思う。

美奈子の手紙を読み、美奈子に手紙を書く。その時だけ、胸にボ

レロが流れる。いっとき、軍隊のことも戦局のことも頭から消え

てなくなる。

(119p)

「頭の中」に流れるのではなくて「胸」に流れるんだ。

彼女の手紙を読んだり、彼女への手紙を書く時だから、

やっぱり「胸」なのでしょう。

  

この小説の中で、ボレロは時々出てきます。

死ぬ直前に並木がきいたボレロは、女教師が特攻兵の並木のため

に、オルガンで一生懸命に引いたボレロでした。ボレロが聴きた

くなる小説です。

 

 

並木が「回天」を初めて見た時のこと。

  

黒い物体が目に入った。その瞬間、ふと眩暈がして視界が暗く

なった。並木が目を瞑(つぶ)った。小さくかぶりを振り、そ

して、ゆっくりと目を開いた。

ーーーこれか・・・・。

知らずに拳を握り締めていた。

回天が眼前にあった。丸みのある弾頭が鈍く光っている。長い

胴体。前の方が太く、後ろ半分はやや細い。大きな魚に小さな

魚が後ろから突っ込んだような格好だ。二連のスクリューが尾

鰭(おびれ)のように目に映る。

魚雷だ。形そのものは魚雷に違いない。だが、それは巨大な棺

桶に見えた。鉄の棺桶ーーー。

(135p)

 

このページで、初めて回天が姿を現します。

そして何度も登場人物をのみ込んでいきます。

2019年12月 9日 (月)

小説「出口のない海」②古典的なセリフと出合ったのは、きっとこの本

今日は令和元年12月9日。

  

長野のことを書きたいけど、

明日までに本を返さなくてはなりません。

出口のない海」 (横山秀夫著/講談社)から引用します。

  

美奈子を送る並木。

 

「あ、もうここでいいです。ありがとうございました」

橋の袂(たもと)で、美奈子は深々とおじぎをした。そのまま

顔を見せずに小走りして、だが、すぐにスカートを翻した。

「古典的なこと言っていいですか」

「えっ?」

「私、ハダカ見られちゃったんですから、ちゃんとお嫁さんに

してくださいね」

(48p)

  

この古典的なセリフは覚えがあります。

この古典的なセリフに出合ったのは、15年前にこの本を読んだ

時だったのかなあ。

 

 

日本軍の快進撃は束の間の夢だった。

開戦から半年後の昭和17年6月、日本海軍の誇る航空艦隊が、

米海軍の機動部隊がミッドウェー海域で大敗を喫した。わずか二

日間の戦闘で虎の子の主力航空母艦六隻のうち、「加賀」「赤城」

「蒼龍」「飛龍」の4隻を失い、航空機322機と熟練した優秀

なパイロットの大半を海に散らした。

(70p)

  

社会科教師としては、小説を読みながらも歴史の復習です。

子どもの頃、日本の空母の写真が載った本を持っていて、その中で

「飛龍」がお気に入りでした。青っぽい本でした。あの本はどこか

にあるかな。

  

 

北が東京オリンピックのマラソンの候補選手だったという。誰もが

忘れてしまったが、日本では2年前の昭和15年に東洋初のオリン

ピックが開かれる予定だった。その東京五輪は日中戦争突入のあお

りであっさり中止が決まったのだが、中止決定の少し前、北はA大

競走部の監督に見込まれ、奨学金を受けて郷里の長野から上京した

のだという。

(72p)

  

このブログのネタで、幻の東京オリンピックのことは常連になって

きました。「あっさり中止」と書かれてしまったけど、大河ドラマ

「いだてん~東京オリムピック噺~」を見ていると、「あっさり」

ではないなと思います。

  

  

学生の身分ってやつが重たくなっちまったんだーーー。剛原の言葉

は誰の胸にも重かった。とりわけ、日ごろ勇ましいことを言ってい

た津田には堪(こた)えたはずだ。学生は戦争に行かずに済んでい

る。日本が勝ちまくっている間はそれでよかったが、戦局が怪しく

なってくるにつれ、徴兵猶予という特典は確かに後ろめたくもあった。

(86p)

  

「学徒出陣」は歴史的な出来事でしっているけど、当の学生たちが

どう考えていたかは詳しくは知りません。確かに、こう思うだろう

なと思って読んだところです。

  

  

今回はここまで。

午後9時から、ドラマを見ます。

  

小説「出口のない海」①12月8日 日本は冷静さを失っていた

今日は令和元年12月9日。

  

小説「出口のない海」(横山秀夫著/講談社)は図書館に

返す本です。手元に置いておきたい文章を書き留めます。

 

外野のほうでマネージャーの小畑聡が土埃(つちぼこり)を

舞い上げていた。ロイド眼鏡が鼻で弾むほど懸命に走り、

そうしながら両手をメガホンにしている。

「日米開戦だ!日本がハワイの真珠湾を攻撃したぞぉ!」

うおっ、と剛原は吠えた。

「ついにやったか!」

胸のすく思いがした。日中戦争は暗くジメジメした感じがして

嫌だったのだ。勝っているのか負けているのかよくわからない

ままだらだら戦っているし、そもそも相手は日本と同じアジア

民族ではないか。アメリカは違う。腹いっぱい食ってるくせに、

このうえ貧しいアジアを食い物にしようとしている列強だ。相

手にとって不足はないーーー。

(17~18p) 

  

 

1941年12月8日の出来事として描かれたところです。

こんなふうに思った人がいたのでしょう。

 

関連して、昨日12月8日の朝日新聞「天声人語」を書きうつ

します。

  

天声人語

古い文章を読んでいて、この書き手には未来が見えていたのか、

と思うことがある。武者小路実篤の「日米戦争はまさかないと

思ふが」も、その一つだ。日本が米英との戦争を始める17年

前、雑誌「文芸春秋」に載った。▼「恐ろしいことは中々(な

かなか)起(おこ)つて来ないやうに見えて平気で起つてくる

ものである」。そう書き出す文章は、日米戦争のうわさが出て

いることを懸念し、そんな戦争がいかにばかげているかを論じ

ている。▼いわく、日米が戦えば結果は明らかだ。米国も損を

するだろうが、一番ばかを見るのは日本だ。戦争は国を富ます

のではなく貧乏にするものだ・・・。「日本の運命は今実に大

事な時で、狂ひかけてゐるのを感じる」とも。▼真珠湾攻撃か

ら戦争が始まったのが1941年12月8日である。残念なが

ら、その時の武者小路に非戦論者の面影はなかった。「真剣に

なれるのはいい気持(きもち)だ。僕は米英と戦争が始まった

日は、何となく※昂然(こうぜん)とした気持で往来を歩いた。

と開戦直後に書いている。▼文豪の変わりようは、冷静さを失

った日本の姿そのものであろう。国力の差に対する懸念は、勇

ましい声にかき消された。言論弾圧そしてメディアの迎合によ

り批判は失われていった。不況や貧困に対処できない政治は信

頼を失い、軍人に光があたった。▼非戦論者としての武者小路

は「人間の殺しあいや、武力で勝負をきめるなぞと云(い)ふ

時代はもう過ぎてしまつていゝと思ふ」と述べていた。その理

想は今もまだ成し遂げられていない。

   

※昂然=意気の盛んなさま。自信に満ちて誇らしげなさま。

  引用:goo辞書

  

  

情報はいろいろなメディアから得ていこうと思いますが、

冷静さは失わないようにしたいです。

上記のような文章を読むと、あらためてそう思います。

「漫画で読める!出口のない海」は、小説「出口のない海」のダイジェスト版ではなかった

今日は令和元年12月9日。

  

15年ほど前に読んだけど、最近また読みたくなった本。

家の本棚で見つからず、図書館で借りて読みました。

81vefhksjnl amazon ※写真は文庫本。私が読んだのは単行本でした。

出口のない海」(横山秀夫著/講談社)

  

漫画本もあると知って、そちらも借りて読みました。

51hdjvzhyl amazon

漫画でよめる!出口のない海」(三枝義浩漫画/

横山秀夫原作/講談社)

  

私は、この2冊を読んでみて、先入観が崩れました。

小説「出口のない海」のダイジェスト版が「漫画で読める!

出口のない海」だと思っていました。

違いました。

  

出版の順番は「漫画で読める!出口のない海」が先です。

出版の経緯について、次のように書いてありました。

  

この作品は、横田寛(ゆたか)氏によって書かれた『ああ、

回天特攻隊』(光人社NF文庫)をもとに、追加取材のうえ、

脚本をおこし、1995年に漫画化したものです。

  

  

そして、小説「出口のない海」(2004年初版発行)の

出版の経緯は次のように書いてありました。

 

本書は’96年、マガジン・ノベルズ・ドキュメント『(漫

画で読める)出口のない海』(作/横山秀夫、画/三枝義

浩)として刊行された作品を全面改稿したものです。  

  

  

漫画で読める!出口のない海」を元に、より情景や心情を

詳細にして、ドラマチックにしたのが小説「出口のない海

だと思いました。2冊を比較して、横山秀夫さんの創作力の

すごさを感じました。

特に主人公並木浩二の心を揺さぶるライバル的な北勝也なんて、

どうしても気になる存在でした。

(それなのに、映画化された時には、北の存在は薄くなっていて

とても残念でした。限られた時間内で描かなくてはならない映画の

限界でしょうか)

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