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2021年8月 3日 (火)

「維新前夜」② この本での田辺太一、水野忠徳の描かれ方

   

今日は令和3年8月3日。

   

前記事に引き続き、

「維新前夜 スフィンクスと34人のサムライ」

(鈴木明著/小学館)

より引用していきます。

  

いうまでもなく、高島秋帆の名は、幕末における最大の砲術家として、

よく知られている。(中略)

秋帆は、その後さまざまな事件に巻き込まれ、十年の長きにわたって、

幽閉の生活を送らされた。秋帆が、これらの苦難をのりこえて、再び

幕府講武所の教官に返り咲いたのは、嘉永六年である。この年、秋帆

が予言したイギリスではなかったが、アメリカのペルリが浦賀に来航

し、黒船騒ぎで日本中が沸き返っていた。秋帆が再起用になったのは、

その丁度二か月後、ということになる。

(92p)

  

「いうまでもなく」と書かれたけど、高島秋帆についてよく知りません。

でも、大河ドラマの「青天を衝け」でこの名前を聞いたぞと、

繋がりました。

玉木宏が演じていた人が、この高島秋帆だったのです。

勉強になったぞ。ちなみに秋帆は「しゅうはん」と読みます。

幕末の人たちの名前は読みづらい。

  

     

田辺太一は、幕府のエリート校であった昌平黌(しょうへいこう)で

「並ぶものなき秀才」といわれた男である。唯、儒者の次男だから、

太平の世ならば「優秀な先生」として、その生涯を終ってしまったか

も知れない。

時代が田辺太一を必要とした、というのが、一番適切な表現であろう。

太一が二十二歳のとき、ペルリが来船した。それから六年後、横浜が

開港されると、太一は甲府の先生から江戸に引き戻され「外国方」の

勤務となった。二十八歳である。

田辺太一の仕事は、横浜における外国人と日本代表との交渉を「筆記」

することだった。「筆記」といえば、唯の速記者のようにみえるが、

そうではない。外国人との交渉の内容をよく理解し、誤りのないよう

に他人に伝えることが「筆記」である。「筆記」をするには、外国へ

の知識だけでなく、幕府が何を考え、日本の針路をどのように目指し

ているのか、根本のところを、よくよく理解していなければならない。

田辺太一の主人筋に当たるのが、これまた天才、傑物とうたわれた水

野筑後守忠徳であった。幕末には数多くの者が「外国奉行」となり、

思いがけない人材を輩出したが、その中でも、「開国とは何か。貿易

とは何か。外国通貨との為替や相場が、日本の”両”に如何なる影響を

及ぼすのか」ということを、本当に理解していた老中は、この水野筑

後守一人であった、といっても、いい過ぎではない。

水野筑後守は田辺太一の才覚を頼りにし、田辺もまた、水野を心の底

から尊敬していた。二人は、お互いの智恵を出し合いながら「メキシ

コ銀と一分銀の交換レートを如何にすべきか」とか、それが日本に及

ぼす経済的波及効果など、それまでの日本が、嘗て一度も経験したこ

とのなかった難事に取り組んでいた。

(97~98p)

   

「万波を翔る」の主人公の田辺太一、副主人公的な水野忠徳。

作家が違うと、描かれ方が違ってくるのが楽しい。

「万波を翔る」だと、2人は天才、秀才っぽくなかったです。

でも「万波を翔る」と「維新前夜」を読んだことで、

幕臣にはなじみが出てきたのがうれしいです。

教科書に載っていない人は、たくさんいるんだなあ。

  

   

当時のフランス支配者ナポレオン三世は、パリを近代的な都市にする

ことに熱中し、同時に新しい「シルクロード」を海に求めていた。パ

リーリヨンーマルセイユースエズーシンガポールー上海、そして江戸

を結ぶルートが一番理想的だが、そこにはいくつかのネックがある。

まず第一に、地中海はスエズのところで陸地になっており、印度洋に

直行できない。このために、荷物は一旦陸に下され、アレキサンドリ

アからスエズまで陸揚げして運び直さなければならないが、これは大

変なエネルギーの浪費である。

1850年代に入って、フランスの外交官レセップスが「スエズに運

河を作って、アジアへの直線コースを便利にしよう」と考え、ナポレ

オン三世もこれを許可して、1859年に世界的な大工事にとりかか

った。

(180~181p) 

  

渋沢栄一にも影響を与えたスエズ運河の大工事には、

このような背景があったのですね。

フランスによる工事だったんだ。

これも勉強になった。

  

  

つづく  

     

  

  

  

  

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