「PL学園最強世代」からの引用その3.巨大な壁「ALS」
今日は2月6日。
前投稿に引き続き、
「PL学園最強世代 あるキャッチャーの人生を追って」
(伊藤敬司・矢崎良一著/講談社)からの引用
そもそも過去の球歴や実績などを振り返ったり、
「凄いね」と言われることは正直好きではない。
そえはあくまでも過去であり、
今現在の評価とは何ら関係ないことですから。
ましてや、それで仕事ができるわけではないし、
そのことにしがみついても、
なんらプラスにはならないと思っていました。
ただ心の中で≪あれだけ苦しい思いをしたから乗り越えられる≫と、
どんなアクシデントが襲ってきても
私のバックボーンには常に野球がありました。
しかし、ALSという病はそのバックボーンをもってしても
適わない巨大な壁となり、
私に「絶望」という言葉の意味を嫌というほどわからせてくれました。
ALSは、今まで積み上げてきた小さなプライドや自信を
完膚なきまでにぶち壊してくれました。
そんな中で、私はもう野球を見る気を失くしていました。 (199~200p)
「私に「絶望」という言葉の意味を嫌というほどわからせてくれました。」
が特に印象に残りました。
とても残酷な病気だと思います。
野球を見る気を失くしていた伊藤さんが、
後輩たちの活躍を見たいために、
再び野球観戦に行くことになります。
そのための準備がたいへんでした。
そして、最大の障害は試合の日程であった。
平日に行われる初戦はスタッフのスケジュールが難しく、
休日前に組まれた2回戦が唯一観戦可能な試合だった。
夜の試合なので、10月28日~29日の1泊2日になる。
チームが初戦で負けたらどうするのか?
これだけの準備をしておきながら、中止するのも癪なので、
そのときには観光旅行に切り替えることにした。
初戦、JR東海はJR九州に3-1で勝ち、2回戦進出を決める。
エース川野慎也の完投勝利だった。
大会前の練習で、選手たちは
「なんとしても初戦を突破し、伊藤さんが観戦できるようにしよう」
と言葉を掛け合っていたという。
そんな話を聞かされ、敬司は胸が熱くなった。 (203p)
読んでいた私も胸が熱くなりました。
やっぱり人は「誰かのために」となった時に、
頑張れる生き物だと思います。
そしていよいよ試合観戦。
旧知の人たちと挨拶を交わすたび、敬司は思った。
≪変わり果てた自分の姿を見て、どう思ったのだろう?≫
みな、一様に驚きの表情を浮かべていた。
言葉には出さないが、「頑張っているんだな」と
喜んでくれる人もいれば、
「かわいそうに」と哀れむ人もいただろう。
ただ、敬司の心の中で、
≪どんな姿になろうとも、隠れるような行動は取りたくない≫
という強い決意があった。
この世の中には、原因さえもわからない得体の知れない難病が、
ALSを含めゴマンとある。
誰もが苦しい毎日を送っていたはずだ。
まずは一人でも多くの人に認知してもらえないと、
問題が山積している障害者への社会保障制度の改善にもつながらない。 (209p)
私が伊藤さんと同じ立場だったらどう思うだろうか?
そう思って読みました。
生き方の参考になる文書です。
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