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2016年2月 6日 (土)

「PL学園最強世代」からの引用その4.気管切開

  

今日は2月6日。

  

前投稿に引き続き、

「PL学園最強世代 あるキャッチャーの人生を追って」

(伊藤敬司・矢崎良一著/講談社)からの引用です。

  

青山には、都市対抗の本大会で、

観戦に訪れた敬司にウイニングボールを手渡すという目標がある。

監督就任後、連続出場は果たしているが、

まだ監督初勝利を収めていない。

「なにがなんでも、と思っています。

それでほんのちょっと、1割くらい、恩返しができるかな、と。

でも、伊藤さんは

『俺に恩返しするくらいなら、後輩をかわいがれ』と言われると思います。

『恩は下に返していくもんや』って怒られます。

そういう人なんです」   (216~217p)

  

「恩は下に返していくもんや」

格好いいですね。

格好いいと思うことには真理があるんだよなあ。

  

  

今、病気の敬司が生きていくうえで、

彼を取り巻くたくさんの人たちがいる。

妻の桂子、娘、大阪の敬司の両親、弟夫婦、桂子の両親、

そして介護に就くヘルパー、ケアマネージャー、医療のスタッフ・・・・。

そうした人たちが、それぞれの立場で頑張っていることで、

敬司の今の生活は成り立っている。

実際のところ、もはや「頑張っている」のレベルを超えて、

「度を越して、いっぱいいっぱいになっている」(桂子)という状況がある。

(中略)

敬司自身、そうした状況はわかっている。

わかってはいるが、わからないようにしている必要がある。

自分のために誰かが大変な思いをしているということを、

わかりすぎてしまうと、

今度は自分が生きにくくなってしまう。

それゆえ、わからないようにしている。

しかし、そのことをずるいと責めるのは酷だ。

敬司は敬司で必死に生きている。  (232~234p)

  

その立場にならないと分からない気持ちだと思いました。

現在、敬司は気管切開を拒否している。(中略)

気管切開を行うことで、誤嚥の苦しみはやわらげられる。

そして、延命に繋がる。

ただし気管切開すると、在宅での介護は現実的に難しくなる。

おのずと専門の施設に入り、入院介護の形に切り替わることになる。

そのことは桂子もはっきりと伝えている。

それに対して、敬司は「絶対に(病院には)入りたくない」

という意思表示をしている。

気管切開の拒否については、桂子も同じ考えを持っている。

公的機関は気管切開を推奨しているのか、

日本ALS協会(ALS患者の療養生活の向上と治療方法の確立を目的とし、

1986年に設立された非営利団体)などの機関誌には、

管切開した患者の取材記事や写真がよく掲載されている。

しかし現実には、その選択肢を選ばない人も数多くいるという。

世界的に見ると気管切開を積極的に行うのは日本くらいで、

外国ではその割合が圧倒的に少ない。

気管切開を行えば、おのずと二十四時間介護体制が必要になる。

経済的な問題などを考えると、それが許されるのは、

現実的には一部の患者に限られてくる。桂子は、

「現状、それを選ばせてあげられなかった家族が、

すごく非人道的みたいなムードを感じます」と問題点を指摘する。 

(239~240p)

  

気管切開に関する問題点は、同じALS患者のヒロさんも言っています。

ここでも道草 “ヒロ”難病ALSとの闘い6/ブログの代読(2014年8月10日投稿)

命をかけた、周りにいる人たちの人生も巻き込む選択だけに、

その立場になったらきついだろうなあ。

  

 

すべては、ALSという病気が招いた悪循環だった。

ALSという病気は、運動神経を壊すだけでなく、

様々な有形無形のものを壊していく。

家族の絆、人生の目標、自分のプライド・・・・。

そして病気は敬司の身体だけでなく、

周りの人々の心や人間関係までも蝕んでいく。

それでも、周囲の人間が無意識に支え合うことで、

最悪の事態だけは回避できるのかもしれない。

救いようもなく介護に疲れ果て、最悪の選択をしてしまう家族も現実にいる。

しかし、そうすることもやむをえないほど、

周りの人間も追い込まれています。 (243p)

   

  

介護のたいへんさをこの本でよくわかりました。

  

2本前の投稿で紹介した次のサイト。

全国障害者介護制度情報 重度訪問介護で暮らすー難病ALS-

ここで患者Mさん、Nさんの生活が紹介されています。

農家の人たちです。

マスコミに登場している人たちだけでなく、

そうでない人たちもALSになり、闘病していることをあらためて知りました。

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