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2024年9月15日 (日)

本「日本海軍はなぜ過ったか」④ 軍隊は抑止力 戦争をしないための力

  

今日は令和6年9月15日。

  

前記事に引き続き、

「日本海軍はなぜ過ったか」

(澤地久枝、半藤一利、戸髙一成/岩波書店)

から引用していきます。

  

半藤

古賀さんという人はどちらかというと、米内光政、山本五十六、井

上成美の〝海軍三羽がらす"の系統に入っているんですよ。しかも堀

悌吉さんとも仲のいい、手紙ものべつ交換しているような、そうい

う提督のはずなんですね。その方が、山本さんが死んだあと連合艦

隊司令長官になって、山本さんがしたような航空戦のことなんて考

えないような、大艦巨砲による艦隊決戦を考える。あんなに開明的

だと言われていた人が、やはり、いざとなると日本海海戦になっち

ゃうんだ。

(60〜61p)

  

作戦を考える上層部の頭が古かったというわけです。

航空戦の時代なのに、いざ自分が司令官になって考える時に、

ずっと過去の勝利、日本海海戦の戦法で考えてしまったのです。

  

 

半藤

あの当時のことをよく調べますと、組織というのは不思議なくらいに、

少し飛び抜けて一歩進んだ人はいらないんです、邪魔なんですね。 排

除の論理というか、阻害の論理というか、「俺たち仲良くやってんだ

から、おまえ、そんなつまんない変なことを言うな」というような、

排除の精神が動くんです。どこの会社や組織でもそうだと思います。

なかには盆暗(ぼんくら)でも偉いことを言う奴もいるけれど、そう

いうのではなくて、きちんとした勉強をして素質的にも優れた人がい

たにもかかわらず、海軍としての組織は排除するんです。軍人という

のは、仲良しクラブでまとまっていく、つまり、余計なことをやるな

よ、という考え方が強いんです。そういう意味では、この反省会も、

ちょっと残念なんですよね。もうちょっと一歩、突っ込んでくれれば

いいんですけど、たぶん、過去の経緯などご存知でないところがある

んでしょうね。

ある意味、条約派はやっぱり、一つ飛び出て先が見えていた方々だっ

たと思いますよ。留学もされてますしね。たとえば、山本五十六や嶋

田繁太郎と同級生の堀悌吉さんは、フランス文学は原書で読んでいる

くらいのものすごい知識人ですね。

それから有名な話ですけど、艦隊派の連中がヒトラーを信奉して、

「ドイツはすごい、『マインカンプ(我が闘争)』を読んだらものすご

い、あんな素晴らしい男はいない」なんて言っていると、 井上成美

さんが「馬鹿、もっとよく読め。その本は日本をクソ味噌にけなして

るんだ。ヒトラーは日本人なんか認めていないんだ」と言った。「そ

んなことは書いていない」と艦隊派が言い返すと、「俺は原書で読ん

でるんだ」と。みんな、日本の悪口はカットされている日本語の翻訳

で『我が闘争』を読んでいるだけなんです。

つまり、堀さんにしろ井上さんにしろ、組織より先に進んでいる、

優れているんです。こういう人たちはいらないんですよ。それで、

井上さんを邪魔なヤツだと排除する。そういう、仲良しクラブなんで

すね。

(83〜84p) 

  

条約派の方が、先が見えていたのですね。

こういう人物を排除したことから、

日本は戦争に進んでしまったのでしょう。

戦争を始めた理由は、たくさんあると思いました。

  

戸髙

海軍はとくにメカニカルというか、個人の能力だけでは戦えない組織

なので、組織のほうに責任があって、個人にはない、という意識がず

っとありますね。ですから、何か失敗しても「それは部署の失敗であ

って、私の責任ではない」というセンスが根底にある気がします。や

はり責任というものは、どこかの段階で個人に行かなければいけない

ものだと思いますし、そういったところがないものだから、何があっ

ても、どんな失敗をしても、「これはまずかったねぇ。でも直接は、

私の責任じゃないから」とみなどこかで思っているんですよ。こうい

った感覚がどんどん、被害を拡大している。真剣味が足りなかったと

ころですね。

半藤

私もそう思いますけれど、海軍は、というよりむしろ、軍隊というも

のの責任ですよね。軍隊というものの、それを指揮をする人たちが、

末端の人たちのことなんか全然考えない。それこそ、一銭五厘の葉書

で連れてこられる。

澤地

「軍馬より、おまえらのほうが安い」と。

半藤

まさにその言葉が示すとおりなんですね。海軍がどうのこうのではな

く、軍隊というものがそういうものなんだ、ということだけは、はっ

きりと言える。そしてそれは、これからもそうだと思います。

戸髙

末端の兵隊のことを考えて戦争はできませんから。そういう意味で、

だからこそ、戦争はしてはいけない。戦争というものは、開戦決意を

した瞬間に、国家指導の敗北だと思います。武力衝突を回避しながら、

自国の意思を通すというのが外交であり、国家間の戦いですよ。戦争

をしないためのはずの軍隊が戦争をしてしまったら、それ自体が敗

北だと思いますね。

半藤

そう思わないといけませんね。軍隊そのものは抑止力として、戦争を

しないための力としての存在であるのに、それを、軍隊のほうが率先

して自らの判断で「戦争だ」と言うのは、そのときに、負けたんです。

(123〜125p)

  

この文章には、教訓が2つありました。

責任は個人が取らなくてはいけない。

そして、軍隊は抑止力であって、戦争をしないための力だということ。

日本が軍隊を持つことは、やはり正当なのです。

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