« 本「デフ・ヴォイス 法廷の手話通訳士」③ 家族の中で唯一のろう者の苦しみ | メイン | 本「デフ・ヴォイス 法廷の手話通訳士」⑤ コーダが主人公のドラマ・映画 »

2024年1月18日 (木)

本「デフ・ヴォイス 法廷の手話通訳士」④ ろう者は二つの言語を持ちもち二つの文化を知る存在

  

今日は令和6年1月18日。

   

前記事に引き続き、

「デフ・ヴォイス 法廷の手話通訳士」

(丸山正樹著/文春文庫)より引用します。

  

う〜ん、長いけど引用します。

とにかく今まで知らない世界、

勝手にこうだろうと思っていた世界のことが

書かれた本です。

そんな役割をこの本で感じます。

では引用。

  

「Dコム」と素子がなぜ、ろう者を語る上で欠かせない存在になった

のか。

その理由は、数年前に素子が日本手話研究会理事長の宇津木と共同で

思想誌に掲載した、

「デフ文化宣言」

なる一文にあった。 そこで素子は、

「日本手話は『Deaf (デフ) = ろう者』の母語であり、ろう者とは、

日本手話という、日本語とは異なる言語を話す、言語的少数者である」

と宣言するとともに、「Dコム」を結成し、「Deaf (デフ) =ろう者」

と「日本手話」の存在を世間に知らしめるべく運動を始めた。

ここで、ろう者を表す英語のスペルの頭文字が、小文字ではなく大文

字の "D" であることには意味がある。

素子たちが模範とするのは、一九七〇年代にアメリカのろう者たちが

起こした「デフ・コミュニティを言語的少数者、文化的集団と捉える

運動」だった。彼らは、自分たちの集団を「耳が聴こえない」ことに

よってではなく、言語(手話) と文化を共有することによって成り立つ

社会とした。その際、英語で耳の聴こえない人のことを表現するdeaf

という単語の頭文字を大文字にし、Deafという言葉を、新たに彼らの

コミュニティのメンバーを指すものとした。

素子たちもそれに倣い、自分たちはdeaf (単に耳が聴こえない者)では

なく、 Deaf(ろう者)なのだと主張するに至った。

その主張の中心は、それまで「障害者」という病理的視点からのみし

か語られていなかったろう者を、「独自の言語と文化を持つ集団」と

してとらえ直したところにある。

つまり、ろう者にとっての言葉とはあくまで「日本手話」のことであ

り、「日本語」は「第二言語」に過ぎない。 文化もまたしかり。 従

って、日本手話と同時に日本語も解し、日本文化も受容するろう者は、

二つの言語を持ち二つの文化を知る「バイリンガル・バイカルチュラ

ル」な存在として定義される。

それらの主張には、これまで障害者として健常者より劣った存在とさ

れてきたろう者に、誇りと自信を取り戻させる、いわば「民族独立宣

言」としての意義があった。

だがその急進的な主張は、聴者・ろう者の両方から、激しい異議と批

判を巻き起こすことにもなった。

真っ先に異議を唱えたのは、同じ聴覚障害者仲間であったはずの中途

失聴・難聴者たちだった。Dコムの主張によれば、ろう者の言語は日

本手話のみであり、日本語と同じ文法を持つ日本語対応手話や、手話

に日本語の発声を交えて行うこと――それは「シムコム」と呼ばれた

は排除される。日本語対応手話は言語的には手話ではないので「手指

(しゅし)日本語」と表記するのが正しい、という向きさえあった。

すなわち、それらの言語を用いる中途失聴・難聴者は「ろう者ではな

い」と定義されることになってしまうのだ。 彼らが怒るのは当然だっ

た。また、他の障害者運動に関わる者たちから、「自分たちは障害者

ではない」と主張することは障害者を差別することにつながる、とい

う批判がなされた。

さらに、長年ろう教育に携わってきた人たちからは、Dコムが掲げる

「日本手話至上主義」に対し、強い懸念が表明された。一つには、ろ

う児の親の多くは聴者であり日本手話が話せない人たちであることを

踏まえ、親子関係、家族間を断絶させるものにならないか、という危

惧。第二には、聴覚口話法やトータルコミュニケーションの可能性を

否定することで、ろう児が「日本語習得」の機会を逸してしまうこと

にならないか、という憂慮だった。さらに、先天性の失聴者の中でも

最近は日本語対応手話を使うことに違和感がない、むしろそちらの方

がコミュニケーションをとりやすいと感じている者もいる、という意

見もあった。

それらの異議・批判に、素子たちはことあるたびに応えてきてはいた

が、噛み合わないまま議論は平行線をたどっていた。そこで、ろう者

の問題に関わる者たちが一堂に会し、「ろう者とは何か」をはっきり

させようではないか、と催されたのが今日の集まりだったのだ。

(122〜125p)

  

これは小説の中での架空の話ではないと考え、調べてみました。

Wikipedia ろう文化

ここが参考になります。

小説では「D文化宣言」とありましたが、

Wikipediaの記述では「ろう文化宣言」のようです。

そしてこの宣言を出した一人が木村晴美さんです。

もしかしたら、この人が素子のモデルでしょうか。

  

木村晴美さんは著作があります。

その中で、この本が、上記の引用文の内容に近いと考えます。

Img_3784

amazon

「日本手話とろう文化」(木村晴美著/生活書院)

この本、幸いにも地元図書館にあったので、

先ほど予約しました。

  

ろう者はこんなに考えて、世の中に働きかけていることを

知りたいと思いました。

コメント

コメントを投稿

最近の写真

  • Img_8528
  • Img_2991
  • Img_2990
  • Img_2987
  • Img_2983
  • Img_2981
  • Img_2979
  • Img_2977
  • Img_3293
  • Img_3292
  • Img_3291
  • Img_3290

楽餓鬼

今日はにゃんの日

いま ここ 浜松

がん治療で悩むあなたに贈る言葉