「本心」②/貧乏って、何が嫌かって、 四六時中、お金のことばっかり
今日は令和5年1月16日。
前記事に引き続き、
「本心」(平野啓一郎著/文藝春秋)より。
「お金、欲しいよねぇ、ほんと。・・・・貧乏って、何が嫌かって、
四六時中、お金のことばっかり考えてないといけないでしょう?お
金持ちより、よっぽどそう。働いていても、買い物してても、こん
なふうにごはん食べてても。お金持ちは、好きだからお金のことを
考えてるんだろうけれど、わたしなんて、お金なんか、全然好きじ
ゃないのに、大嫌いなものについて考えることで、一生の大半の時
間が過ぎていくって、悲しくない?一度で良いから、頭の中から、
完全にお金のことを追い払って生活してみたい。どんなにスッキリ
するかなって。スーパーで、値札見ないで買い物したい。賞味期限
切れギリギリの安売りを必死で探すんじゃなくて、きっと、全然違
う人間になれると思う。」
(133p)
この小説は、格差社会の様子も表現していました。
私も、現役で働いていた時は、
正直、あまりお金のことは考えなかったけど、
退職して、ハーフで働くようになって、
給料がガクンと下がったので、
ちょっとお金のことが気がかりな生活に変わってきました。
蓄えも、これから生きていくのに十分なのかどうかも
まだ見えてきません。
お金のことを、四六時中ではないけど、考えることが増えたかな。
台風の直撃は、やがて避けられなくなった。
雨は、二日前からしとどに降り始めた。
豪雨というには、あまりに静かで、局所的に激しく降る夕立とは違
い、街の全体が、一部の隙もなく濡れていた。
(145p)
「しとど」が不明?
きっと初めて聞く言葉です。
意味は?
「びっしょり濡れるさま」というのがあったけど、
どうも意味が違うようです。
後ろの文章とうまく整合しません。
雨の量が多いことを意味に含みます。
2日前から、”あまねく”雨が降り始めた感じかな。
幾つになっても、男性は、女性に何か教えたがるでしょう?
(238p)
苦笑い。自分のことは棚に上げておいて、
そういう男性をたくさん見てきたなとは思います。
だんだん遠慮するようになってきたのではないかな。
僕は、無音の室内に反響する自分の声に驚いた。何故か急に、「咳
をしても一人」という、昔、国語の時間に習った句が脳裏を過った。
(260p)
「咳をしても一人」
これだけが作品です。
※カクヨム
☝ このサイトに解説があります。
尾崎放哉(ほうさい)の自由律俳句。
引用します。
この句は放哉の晩年、小豆島に小さな庵を構えていた頃のものです。
小さな庵の中で、咳をするも、その音が響くだけ。
咳き込む放哉に声を掛けてくれる人は誰もいない。
死を前にした放哉の孤独がありありと感じ取れます。
私が死ぬ時は、誰かいてほしいな。
うちの奥さんが結婚を承諾してくれた時、
頭には「この人に看取られて死ぬんだ」と即浮かんでいました。
その直感は当たるのか。
もうひとつ「過った」
読み方が浮かばなくて調べました。
「よぎった」でした。なるほど。
浮んでほしかったな、自分。
まだつづく
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