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2020年5月17日 (日)

「蚤と爆弾」② どうせ殺されるものなら医学の進歩に

今日は令和2年5月17日。

  

前日の記事に引き続いて、

「蚤と爆弾」(吉村昭著/文春文庫)に関係したことを

書いていきます。 

  

「蚤と爆弾」という奇異なタイトル。

なぜこのようなタイトルになったのかは

読み進めていくうちに理解できます。

 

引用していきます。 

  

 昭和3年、陸軍一等軍医の曾根二郎は、欧米各国の軍事防疫調査

の任を与えられ日本をはなれた。

 外遊中にかれが見たのは、各国の陸海軍が伝染病の予防と治療に

かなりの力をかたむけていることであった。またドイツとアメリカ

などで、ひそかに伝染病原菌を兵器の一つとして使用する研究が開

始されていることも知った。細菌を敵側にばらまき、それによって

敵の戦力を弱体化させようというのだ。

 曾根の頭に、最近が新たな意味をもつものとして刻みつけられた。

それは伝染病を発生させる恐るべき存在だが、逆用することによっ

てすぐれた兵器にもまさる効果をあげることに気づいたのだ。

(19p)

  

恐ろしいことに気づいて、曾根は実行に移します。

  

  

 ペスト鼠の血をすった蚤は、ペスト菌で汚染され、しかもその体

内で菌をはてしなく繁殖させている。蚤は、ペスト菌を多量にふく

む容器のようなもので、そのうえ移動性を発揮して地上に降りてか

ら人畜に寄生してゆくだろう。それは、人工的には決して作り得ぬ

素晴らしい細菌をはこぶ容器に思えた。

 結論として、爆弾にペスト菌をふくんだ蚤をつめこんで投下する

ことが、最も有効と判断された。しかも、爆弾を地上からかなりは

なれた上空で炸裂させれば、蚤は広範囲にばらまかれるだろう。

(34p)

  

こうして「蚤」と「爆弾」はつながりました。

  

 

 医学実験は、動物を使用することによって研究の成果を或る程度

たしかめることができる。しかし、実験に供された動物は、あくま

でも動物にすぎない。人間は、実験動物よりもはるかに複雑で全く

異質もものであると言ってもいい。できれば人体で実験を・・・・

というねがいは、積極的な研究実験者の中に無意識ながらもひそん

でいるはずだった。

(37p)

 

話は人体実験の話になっていきます。

  

 中国大陸でも満州でも、諜報員や俘虜たちが連日のように処刑さ

れている。実験動物はあくまでも動物であって、その実験は人体へ

の応用への一段階にすぎない。実験動物で得た成果が、そのまま人

体に適するかどうかはわからない。

 もしも、直接人体で実験できれば、答は短時日のうちに出る。

 かれらの眼には、中国大陸や満州で処刑される俘虜たちが大きな

価値を帯びた存在として映った。どうせ殺されるものなら医学の進

歩に供せられるべきではないか、とかれらは考えた。

(61p)

  

どうせ処刑される俘虜を使って、

人体実験をしてもいいのではという考えが、

熟成されていきました。

つづく

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