「バナの戦争」④ 世界が何もしてくれないことへの怒り
今日は令和2年2月3日。
前記事に引き続き
「バナの戦争」(バナ・アベド著/金井真弓訳/飛鳥新社)
より引用します。
時間は有限なので、厳選して引用します。(これが難しい)
【バナのお母さん】
バナ、死についてあなたに説明しなければならないのは、母親
の務めの中でも一番つらいものだった。戦争が起こる前、あな
たは死のことをまだ知らなかったのに、突然、死がそこらじゅ
うに存在するようになったのだから。
(中略)
(バナの友人の)ヤスミンが(爆撃で)亡くなったとき、私の
中でも何かが変わった。あの後の残虐な数カ月、私たちが包囲
されたときも。恐れや苦悩とともに、私は怒りを覚えるように
なった。私たちだけが耐えなければならず、世界が何もしてく
れないことへの怒り。わが子を守れない無力な自分への怒り。
爆弾を落とすことや子どもが殺されることが許されている世界
への怒り。人には寛大で公平にやさしく接しなさいとあなたに
教えた私が、こんな世界しか与えてあげられないことへの怒り
を。
(139p)
バナのお母さんの文章は、戦時下で大人が感じるであろうことが
書いてあります。したがって共感するところが多いです。
私もそう思うだろうなと思います。
特に「世界が何もしてくれないことへの怒り」はドキッとします。
【バナ】
包囲や爆弾にすっかりうんざりだった。ずっとこわがり続けて、
人がけがしたり死んだりするのを見て、それでも希望をなくさ
ないようにするのは、本当に難しい。前みたいに幸せなときが
戻ってくるなんて思えなかったし、ますますひどくなるだけだ
った。
ママに聞いてみたの。シリアやアレッポの外にいる人たちは、
わたしたちに起こっていることを知っているのかなって。どう
して人を殺すのをやめなさいって、だれも政府に言わないの?
人には親切にして、助けてあげなきゃいけないのに。パパとマ
マはそう教えてくれた。だったら戦争をしていいはずがないわ。
こんなにたくさんの人や子どもたちが死ぬなんて、まちがって
る。
(159p)
もっともな疑問だと思います。
一人一人ならどの人にも親切心などの優しい気持ちがあるけれども、
国レベルになると、思うようにいかない。
当然のことがそうならない。
バナは、ツイッターで自分たちのことを発信し始めます。
【バナ】
毎日ツイッターで、アレッポがどんなにひどいことになってい
るか伝えた。こわい思いをしたらそのことを書いた。世界にス
テキなことを伝えるのも楽しかった。わたしの歯が抜けたとき
のこととかね。
ママは、英語でどう言ったらいいか、いっしょに考えてくれた。
わたしたちはたくさんの写真や動画も撮った。世界中の人に、
シリアで起こっていることを見てもらえるように。どんなひど
いか目で見ないと、みんながわたしたちの話を信じてくれない
かもしれないと思ったから。死体の山やぼろぼろになった建物
とかを、全部見ないと。
(163p)
インターネットは力です。内戦中の現場から少女が様子を
伝えることができるのです。
【バナ】
すぐにメッセージが届き始めた。世界中の大人からも子どもか
らも。みんながわたしの話を聞いてくれているなんて、信じら
れない気分だったわ。しかもとても親切なメッセージを返して
くれたの。
(162p)
よかったねとホッとした文章。
でも国レベルでの変化はなかなか起こりません。
彼女はこんなものも見てしまいます。
【バナ】
一週間後にマルワのお父さんは見つかったけど、遅すぎた。爆
弾で死んだとき、人の体は建物と同じようにぺちゃんこになる。
建物と同じように灰色になる。ぐにゃぐにゃになったり、足と
か腕とか体の一部がちぎれたり、顔がとれてしまうときもある。
とても見ていられない。
けれど、わたしは思ったの。もし世界中の人が、そんなひどい
様子を見たら、ものすごくたくさんの人が一瞬で死んでいるの
を知ったら、わたしたちを助けてくれるかもしれないって。
(166p)
酷い光景です。
それを7~8歳で見てしまったのです。
つづく
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