ハッブルのこと その6/太陽系は中心から外れ、人類もまた結果的にそうなった
今日は1月29日。
前投稿に引き続いて
昨年11月24日放映「コズミックフロント NEXT 宇宙の革命児!
エドウィン・ハッブル」より。
この番組は、今現在youtubeで見ることができます。
私の文章を読んでも、イメージが浮かばない方は、
ぜひこの映像を見てください。
YouTube: 〔コズミックフロントNEXT〕天文学の革命児! エドウィン・ハッブル〔Cosmic Front Next〕
今晩書くのは、上の映像だと24分25秒付近からの内容です。
ナレーター:ワシントンにあるスミソニアン博物館。
1920年、ここで、渦巻き星雲の正体にいどむ
大論争が行なわれました。
「グレートディベート」です。
壇上に立ったのは、ウィルソン山天文台のハーロウ・シャプレー。
そしてリック天文台のヒーバー・カーティスです。
シャプレーは、渦巻きを生まれたての星と、
それを取り巻くチリやガスの集まりと考えました。
ちょうど太陽系が誕生する時の状態です。
そしてそれらは全て「天の川銀河」の中にあると主張したのです。
一方、カーティスは、これに真っ向から反対します。
渦巻きは「天の川銀河」と同じような大量の星の集まりだと
考えました。
そして「天の川銀河」の外側の、ずっと遠くにあるものだと、
主張したのです。
このカーティスの説に、ハッブルも所属するウィルソン山天文台の
研究者たちは、猛反発します。
根拠としたのが、メンバーの一人、ヴァン・マーネンのデータです。
マーネンは、観測データから、渦巻きが回転していると主張します。
渦巻き星雲の渦巻きが回転していることが、
どうしてカーティスの説に反発する根拠になったのか?
そのところについては後日の投稿で。
この「グレートディベート」について、
「膨張宇宙の発見~ハッブルの影に消えた天文学者たち~」
(マーシャ・バトゥーシャク著/地人書館)では
次のように書いてありました。
なお、本の中で「グレートディベート」は「大論争」と訳されています。
1920年の最も記憶に残る天文学史上の出来事は、
ワシントンDCで、ハーロー・シャプレーと
ヒーバー・カーティスが会い、
国立科学アカデミー会員の前で宇宙の構成について
議論したことだった。(中略)
この時代を画す対決は一般には「大論争」として知られているが、
実際のところ、それは適切な表現ではない。
2つの講演が続けて行われただけと言った方がよく、
この出来事は科学を対象とする出版物にさえ
取り上げられることはなかった。
天文学界では、この4月の会合にまつわる由緒ある伝説
ーその記憶は、”宇宙の巨人たち”が激しく衝突したというもので、
言ってみれば、『真昼の決闘』の天文版であるー
が、時を経て少しずつ発展し、過度に潤色されたため、
最後は対立する2つの陣営が最高の殿堂で
科学知識を戦わせて相まみえた「ホメロスの戦い」と
表現されるようになったのである。 (238p)
「グレートディベート(大論争)」と聞くと、
熱い討論がなされたように思えますが、
その会合の様子が書いてあるところを読むと、
「静か」なイメージがあります。
後に潤色されたイメージなのです。
ハッブルと同じウィルソン山天文台に勤めていたシャプレー。
(シャプレー在勤時期は1914年~1921年、
ハッブルは1919年から亡くなる1953年まで)
シャプレーの功績は、私たちが住む太陽系が、
「天の川銀河」の中心ではなくて、
中心からは外れた場所にあることを証明したことです。
そのことを書いた文章を引用します。
彼(シャプレー)がやりとげたことは、
コペルニクスの法則にまで及ぶほどだった。
16世紀に、コペルニクスが地球を太陽系の中心から
動かしたのとちょうど同じように、シャプレーも太陽系の位置を
銀河系の心臓部から動かしたのだ。
「太陽系は中心から外れ、人類もまた結果的にそうなったが、
これは人類がそれほど大きな存在ではないことを
意味するのだから、どちらかと言えば良い考え方だ。」
(210p)
いいことを言うなあと思いました。
人間は自分を中心に考えがちで、
それが地動説・天動説論争になりました。
そして人類は、今度は銀河系の中心から外されたのです。
今は当たり前のことですが、当時の人たち、
それもたった100年あまり前の人たちにとっては
大きな衝撃だったようです。
そのような功績を残したシャプレーですが、
この「グレートディベート」での内容は、
後に間違っていたことを認めています。
間違った理由の一つが、同僚のマーネンの
渦巻きは回転しているという主張なのです。
そのことについてはすぐにでも書きたいけど、
後日にします。
「ハッブルのこと」シリーズは小休止。
ハッブルの話、関心をもって観ました。ハッブルは知っていましたが、このいきさつは初めて知りました。
30代に同級生に誘われて、ハレー彗星の観測で天文台に行ったり、高い山での彗星観測にいたりしました。おかげで一般の人より、天文に詳しくなりました。
最近天体観測とはご無沙汰していますが、映像を観て、
網状星雲だとか、女性が取り出したハッブルの観測記録のカード
の隅に「M31」とあるので、これはアンドロメダ銀河だ、などと興奮しました。
昔の記憶がよみがえったようです。
アンドロメダ銀河はカシオペア座のWの左のVと
ペガサスの四辺形(秋の星座)の角との間にあるので、
肉眼でもぼんやりと確認できます。双眼鏡なら渦がわかります。
M42(オリオン座の三つ星の下にある)もとても有名です。
久しぶりに、星について思い出しました。ありがとうございました。
投稿: クラリン | 2017年2月 1日 (水) 18:08
クラリンさん、コメントをありがとうございます。
アンドロメダ銀河は一度確認したいです。
ただ現在、インフルエンザと闘っている最中。
しばらくはできません。
投稿: いっぱい道草 | 2017年2月 2日 (木) 04:31