« ハッブルのこと その5/ウィリアム・ハーシェル | メイン | なぜカラスは「烏」と書くの? »

2017年1月29日 (日)

ハッブルのこと その6/太陽系は中心から外れ、人類もまた結果的にそうなった

  

今日は1月29日。

  

前投稿に引き続いて

昨年11月24日放映「コズミックフロント NEXT 宇宙の革命児!

エドウィン・ハッブル」より。

  

この番組は、今現在youtubeで見ることができます。

私の文章を読んでも、イメージが浮かばない方は、

ぜひこの映像を見てください。


YouTube: 〔コズミックフロントNEXT〕天文学の革命児! エドウィン・ハッブル〔Cosmic Front Next〕

  

今晩書くのは、上の映像だと24分25秒付近からの内容です。

  

Rimg2474  

ナレーター:ワシントンにあるスミソニアン博物館。

  1920年、ここで、渦巻き星雲の正体にいどむ

  大論争が行なわれました。  

  「グレートディベート」です。

  壇上に立ったのは、ウィルソン山天文台のハーロウ・シャプレー。

  そしてリック天文台のヒーバー・カーティスです。

Rimg2475   

  シャプレーは、渦巻きを生まれたての星と、

  それを取り巻くチリやガスの集まりと考えました。

  ちょうど太陽系が誕生する時の状態です。

Rimg2476

  そしてそれらは全て「天の川銀河」の中にあると主張したのです。

Rimg2477   

  一方、カーティスは、これに真っ向から反対します。

  渦巻きは「天の川銀河」と同じような大量の星の集まりだと

  考えました。

    そして「天の川銀河」の外側の、ずっと遠くにあるものだと、

  主張したのです。

Rimg2478

Rimg2479   

  このカーティスの説に、ハッブルも所属するウィルソン山天文台の

  研究者たちは、猛反発します。

  根拠としたのが、メンバーの一人、ヴァン・マーネンのデータです。

Rimg2480

Rimg2481   

  マーネンは、観測データから、渦巻きが回転していると主張します。

Rimg2482   

渦巻き星雲の渦巻きが回転していることが、

どうしてカーティスの説に反発する根拠になったのか?

そのところについては後日の投稿で。

  

この「グレートディベート」について、

膨張宇宙の発見~ハッブルの影に消えた天文学者たち~

(マーシャ・バトゥーシャク著/地人書館)では

次のように書いてありました。

なお、本の中で「グレートディベート」は「大論争」と訳されています。

  

1920年の最も記憶に残る天文学史上の出来事は、

ワシントンDCで、ハーロー・シャプレーと

ヒーバー・カーティスが会い、

国立科学アカデミー会員の前で宇宙の構成について

議論したことだった。(中略)

この時代を画す対決は一般には「大論争」として知られているが、

実際のところ、それは適切な表現ではない。

2つの講演が続けて行われただけと言った方がよく、

この出来事は科学を対象とする出版物にさえ

取り上げられることはなかった。

天文学界では、この4月の会合にまつわる由緒ある伝説

ーその記憶は、”宇宙の巨人たち”が激しく衝突したというもので、

言ってみれば、『真昼の決闘』の天文版であるー

が、時を経て少しずつ発展し、過度に潤色されたため、

最後は対立する2つの陣営が最高の殿堂で

科学知識を戦わせて相まみえた「ホメロスの戦い」と

表現されるようになったのである。  (238p)

  

「グレートディベート(大論争)」と聞くと、

熱い討論がなされたように思えますが、

その会合の様子が書いてあるところを読むと、

「静か」なイメージがあります。

後に潤色されたイメージなのです。

  

ハッブルと同じウィルソン山天文台に勤めていたシャプレー。

(シャプレー在勤時期は1914年~1921年、

ハッブルは1919年から亡くなる1953年まで) 

シャプレーの功績は、私たちが住む太陽系が、

「天の川銀河」の中心ではなくて、

中心からは外れた場所にあることを証明したことです。

  

そのことを書いた文章を引用します。

  

彼(シャプレー)がやりとげたことは、

コペルニクスの法則にまで及ぶほどだった。

16世紀に、コペルニクスが地球を太陽系の中心から

動かしたのとちょうど同じように、シャプレーも太陽系の位置を

銀河系の心臓部から動かしたのだ。

「太陽系は中心から外れ、人類もまた結果的にそうなったが、

これは人類がそれほど大きな存在ではないことを

意味するのだから、どちらかと言えば良い考え方だ。」

(210p)

  

いいことを言うなあと思いました。

人間は自分を中心に考えがちで、

それが地動説・天動説論争になりました。

そして人類は、今度は銀河系の中心から外されたのです。

今は当たり前のことですが、当時の人たち、

それもたった100年あまり前の人たちにとっては

大きな衝撃だったようです。

  

そのような功績を残したシャプレーですが、

この「グレートディベート」での内容は、

後に間違っていたことを認めています。

間違った理由の一つが、同僚のマーネンの

渦巻きは回転しているという主張なのです。

そのことについてはすぐにでも書きたいけど、

後日にします。

「ハッブルのこと」シリーズは小休止。

コメント

ハッブルの話、関心をもって観ました。ハッブルは知っていましたが、このいきさつは初めて知りました。
30代に同級生に誘われて、ハレー彗星の観測で天文台に行ったり、高い山での彗星観測にいたりしました。おかげで一般の人より、天文に詳しくなりました。
最近天体観測とはご無沙汰していますが、映像を観て、
網状星雲だとか、女性が取り出したハッブルの観測記録のカード
の隅に「M31」とあるので、これはアンドロメダ銀河だ、などと興奮しました。
昔の記憶がよみがえったようです。
アンドロメダ銀河はカシオペア座のWの左のVと
ペガサスの四辺形(秋の星座)の角との間にあるので、
肉眼でもぼんやりと確認できます。双眼鏡なら渦がわかります。
M42(オリオン座の三つ星の下にある)もとても有名です。
久しぶりに、星について思い出しました。ありがとうございました。

クラリンさん、コメントをありがとうございます。
アンドロメダ銀河は一度確認したいです。
ただ現在、インフルエンザと闘っている最中。
しばらくはできません。

コメントを投稿

最近の写真

  • Img_8523
  • Img_8520
  • Img_8519
  • Img_8518
  • Img_8522
  • Img_8521
  • Img_8517
  • Img_8512
  • Img_8510
  • Img_8508
  • Img_8507
  • Img_8504

楽餓鬼

今日はにゃんの日

いま ここ 浜松

がん治療で悩むあなたに贈る言葉