「孤塁」⑤約半数がうつによる休職を経験
今日は令和2年12月6日。
前記事に引き続き、
「孤塁」(吉田千亜著/岩波書店)より引用します。
津波による行方不明者捜索活動の時のことです。
捜索中には、カラスがたくさんいた。カラスがいると、遺体がある。
カラスには嗅覚がなく、視力がよいことを上司に教えてもらった。
ゴミ袋が半透明でも、中身が見えるのだという。カラスには、上空
から遺体が見えていたのかもしれない。不思議と捜索の手助けにな
っていた。
(174p)
体験者だからわかることです。
災害現場で二次災害を受けるのは消防だ、と富樫正明は話す。国・
県・東京電力の被害想定やマニュアルは、「安全」の上にあるただ
のシナリオでしかない。惨事ストレスやPTSDなどの職員へのメ
ンタルヘルス対策も事故前は準備されていなかった。原発事故から
2~3年の間に、係長以上の職員のうち、約半数がうつによる休職
を経験した。
(179p)
放射線被ばくの恐怖、捜索による遺体の発見は、
消防士の心を蝕んだと思います。
この本で涙を流したのは、「エピローグ」でした。
そこの話は引用しません。
またこの本と再会した時に読みたいです。
ふたたび「あとがき」からの引用をします。
初めて双葉消防本部に行った時に話をしてくれたのは、今は退職さ
れた渡邉敏行さんだった。その渡邊さんが、「全員から話を聞いて
もいいよ」と言ってくださったのを真に受け、「本当に全員の方か
らお話を伺いたい」とお願いした。郡山市から浜通りに何度も通っ
たが、双葉消防本部のみなさんが、川内村からどういうルートで郡
山市に搬送したのか、あるいは川内村からどういうルートで大熊町
の現場に向かったのかを、その往復によって私自身が理解する手助
けにもなった。中通りから浜通りに抜けるには、山を越える。「郡
山市への搬送
」や「浜通りへの出勤」は、一言で言えば簡単に聞こえるが、つま
り、1~2時間ほどかけて毎回、山越えをしているのだ。
(205~206p)
郡山から浜通りへの往復は、2月の旅行で体験しています。
私にもわかります。山越えでした。
予想以上に時間がかかりました。
あるシンポジウムで宇都宮大学の清水奈名子さんが、「原発事故に
おいても、男性はかくあれ、というものを押し付けられてしまった」
とジェンダーの視点から示唆してくださった。自らの命や家族を思
い、内心では恐怖を感じ、「逃げたい」と思っていた消防士もいた
ことも改めて考えさせられた。
(207p)
そうか、こういう視点もあるのだと思いました。
以上、最近にはない量の文章を引用しました。
時間はかかりましたが、これぞ道草。
私の時間の使い方だと思います。
東日本大震災についていい勉強ができました。
コメント