「人はなぜ・・・許せないのか」③ 人類は知能指数を年々向上させている
今日は令和2年3月6日。
前記事に引き続き、
「人は、なぜ他人を許せないのか?」(中野信子著/
岩波新書)より引用していきます。
SNSで飛び交っている、正義中毒者がなぜか頻繁に使用する
単語は「バカ」です。
自分が絶対的に正しいという過剰な思い込みから、異なる考え
を持つ他人をバカと決めつけ、攻撃(バッシング)を加えます。
(34p)
1984年、ニュージーランド・オタゴ大学のジェームズ・フ
リンが提唱したところでは、人類は20世紀以降、知能指数(
IQ)を年々向上させていると言われます。1932年と19
78年のIQを比較すると13・8ポイント高くなっており、
1年に0・3ポイントずつ上昇していくというのです。これは
「フリン効果」と呼ばれています。(中略)
栄養状態の改善や、情報、知識を得るためのツールの充実によ
って人は着実に知能は上がっているはずなのに、互いをけなし
合い、不毛に消耗し合う正義中毒がどんどん重篤になっている
というのは、なんとも皮肉な話です。元々は人間も動物も同じ、
ただ生まれて、食べて育ち、起きて寝て、子を産み育てて死ん
でいく存在だったのに、なまじ脳を発達させてしまったために、
苦しむようになってしまった。互いにバカと罵(ののし)り合
いながら、解決しようのない、そもそも解決する気もない争い
を続けているのが人間という種の特徴なのだとしたら、最も悲
しい生き物だと云えるかもしれません。
(35~36p)
先日読んだ「赤めだか」の文章を思い出します。
古典落語が生まれた頃のほうが、人間は単純だった。
「生まれ変わってやり直しだ」と言えた時代だった・・・かも。
比較例としてウサギを考えてみましょう。ウサギの大脳は、正
義中毒を起こすには小さ過ぎ、人間のように正邪を基準とした
行動は取りません。なぜ生まれたのか、などという問題で悩む
こともないし、死ぬということもおそらく意識はしていないで
しょう。ひたすら草を食(は)み、子どもを作って、育てて一
生を終える。このループを、文字通り無心に行っているわけで
す。
人間は大脳を発達させてしまったばかりに、ウサギと同じ行動
をする脳の周りに、大脳新皮質と呼ばれる、思考を司る部分が
増設されていきました。
大脳新皮質が人間の繁栄と生存をもたらしたことは間違いあり
ません。人間は、生き延びて種として繁栄していくことと引き
換えに、生きている意味をわざわざ考えなければいけない、と
いうやっかいな宿命を背負ってしまったわけです。知性がある
からこそ愚かさがあり、愚かさのない知性は存在し得ないとい
う裏表の関係があると言ってもよいでしょう。インターネット
とSNSの登場は、人間の知性と愚かさとの新しい捉え方を呈
示したのではないでしょうか。
(42p)
「愚か」という概念は、知性を持つようになったから出現した
概念だということかな。
なるほどと思って読んだ文章ですが、最後の一文が不明です。
つづく
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