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2020年3月25日

2020年3月25日 (水)

「100時間の夜」② ハリケーン・サンディーは実存してた

今日は令和2年3月25日。

  

前記事に引き続き、

「100時間の夜」(アンナ・ウォルツ著/野坂悦子訳/

フレーベル館)より。

  

印象に残った文章を引用します。

  

私は落ち着いて、携帯電話をとりだす。美術館の中は、インター

ネットが無料なんだ。

「ハリケーン・サンディー」で検索する。

記事をいくつか読む。

そして、くすくす笑いだし、笑いが止まらなくなった。くすくす

笑いの発作っていうのがあるなら、そんな発作におそわれたんだ。

だって、ハリケーン・サンディーは実存してたから。しかも、も

うすぐやってくる。進路はまだ確かじゃないけど、ただ通過する

んじゃなくて、月曜日にニューヨークを直撃する可能性があるそ

うだ。

ってことは、ほんとの話なんだ。この世界には何十万も都市があ

るのに、私はよりにもよって、あと二日で、ハリケーンにおそわ

れる街を選んで逃げ込んだ。

笑いの発作はもちろん、あっというまに消え、そのあとは美術館

でぐずぐずしていられなくなった。現実を避けている時間はもう

ない。セスとアビーのところへ行かなくちゃ。みんなでハリケー

ンにそなえないと。

(100~101p) 

 

  

そうです。この辺りぐらいから、

私はこの物語に入ることができたと思います。

読むのを止めなくてよかったと、今は思います。

 

前記事で書いたように、オランダ在住の著者が、

たまたまニューヨークに滞在している時に、

ハリケーン・サンディーに襲われた体験から生まれた物語。

実感がこもっています。

次の文章もそうです。☟

  

地下鉄の駅には、ハリケーン・サンディーを知らせる巨大なポス

ターが、あちこちに貼ってある。電光掲示板には、地下鉄の運行

は今晩7時まで、と注意する掲示が出ている。

「観光客は気の毒ね。ニューヨーク見物に来るのに、たまたま今

週を選ぶなんて・・・」

そう言ったとたん、自分もそんな気の毒な観光客のひとりだった

と気がつく。

(143p)

  

きっと、実体験なのでしょう。

Sandy_oct_25_2012_0320z

参考:Wikipedia ハリケーン・サンディ(☝ 写真はここから)

  

  

ジムの発言。

「つまり、それがこの世でまちがったことなんだ。みんな、ほん

とはしたくないことをしてるのに、それでたくさん金を稼いでる。

ドラッグを売る。売春する。そんなこと、するつもりはないんだ

と思う。だけど、金のためにやってるんだ。」

(155p) 

  

金のために、本当はやりたくないことをしている。

厳密に言えば、そういうところはあるかもしれない、自分でも。

でも少しでもやりたいことをやって、お金を稼ぎたいですね。

くどいけど、残り2年だから。

  

  

どうにかなりそう。私たちはここで、このハリケーン避難所にす

わって、ひょっとしたら直撃するかもしれない嵐を待っている。

ほかの800万の人たちといっしょに、ハリケーンの細かい動き

を追っている。このあと正確になにが起こるか、だれも知らない。

ひょっとして、サンディーが私たちの手前でカーブしてくれたら、

万事オーケー。でも、ひょっとしたら街の半分が壊れて、がれき

になるかもしれない。

(160p)

  

昨年の台風15号、19号のことを思い出す文章です。

  

ハリケーン・サンディーは、

ニューヨークに停電をもたらしました。

 

「クソッ」ジムの顔も、下から携帯電話で照らされている。「ネッ

トはつながらないし、電波さえない。マンハッタンのどまんなかで、

信じられるか?」

「うそっ!生まれてから一度も、電波が消えたことなんてないよ!」

アビーはそう言って、自分の携帯電話を見た。「それに、バッテリ

ーがあともうちょっと・・・市長はこのことを伝えるべきだったよ。

『みなさん、手遅れになるまえに充電しなさい』って!」

私は部屋のまんなかで足を止める。いまでは、暗闇を感じられる。

暗闇はあちこちから、私の肌を静かに押してくる。私はそれを吸い

込む。

(171p)

  

ちなみにアビーは10歳。電波は常にあったでしょうね。

暗闇の描写がよかったです。静かに押してくる感じは、

共感できます。

 

 

引用する文章はここまでです。

100pくらいから物語が見えてきて、

あまりに大きな問題を抱えてしまった親子は

残りのページ数でどうなるか心配しましたが、

どうにか乗り越えてホッとしました。

何より、ハリケーン・サンディーを一緒に乗り切った、

4人の少年少女の成長が素晴らしかったです。

  

自分の勤務する中学校の図書館に、

生徒に読むことを勧められる本があることはいいこと。

3月には入って「星ちりばめたる旗」「近松よろず始末処」に

引き続き、「100時間の夜」もお薦め本になりました。

ただ最初の100pは難しいかもと予告したい。

  

「100時間の夜」① ティーンエイジャー向けに書き下ろされた本でした

今日は令和2年3月25日。

  

勤務校の図書館の本、3冊目を読破しました。

919rzpwugl amazon

「100時間の夜」(アンナ・ウォルツ著/野坂悦子訳/

フレーベル館)です。

あまり読んだ事のない種類の本でした。

当初、主人公の女の子の心の中の思いが脈絡もなく出てくるように思え、

そして他の登場人物とのたたみかける会話で、

いったいどんな話なんだろうか見通せず、

読むのをやめようかと途中で思いました。

しかし、ハリケーンに襲われて大停電になったり、

主人公の女の子がなぜオランダから脱出して

ニューヨークに来たのかが判明したあたりで、

ストーリーが定まってきて、

最後は達成感を持って読み切ることができました。

  

訳者によるあとがきが、スッキリまとめてくれていたので、

書き写します。

将来、この本どんな本だったかなと思い出すときには、

役に立ちそうです。

  

1981年生まれの若手作家、アンナ・ウォレツが、ティーンエイ

ジャーのために書きおろした『100時間の夜』をお届けします。

父さんが起こしたスキャンダルにたえられなくなった14歳のエミ

リアは、オランダから飛行機に乗り、ニューヨークへ逃げ出します。

でも、あこがれのニューヨークでエミリアを待っていたのは、思い

がけないことばかり。セスやアビー、ジムとの出会い、そしてなん

と巨大なハリケーン・サンディーが街を直撃することになって・・。

2012年10月29日にニューヨーク市をおそったサンディーが、

800万戸を停電させ、多くの命を奪ったことを覚えている方も多

いでしょう。3か月のニューヨーク滞在中、作者自身がそのハリケ

ーンに遭遇したことがきっかけで、『100時間の夜』は生まれて

きました。

前作『ぼくとテスの秘密の七日間』(フレーベル館)と同じように、

作者は、にぎやかな会話で読者を楽しませながら(※私は最初はついて

いけませんでした)家族とは、孤独とは何かを読者に問いかけます。エ

ミリアだけでなく、クールなジムも、親の生き方を肯定できずに家

を飛び出したことがわかり、ユダヤ系の兄妹セスとアビーも、数年

前に死んだパパのことを自由に話すことができません。

けれども大停電を一種の「冒険」として乗りこえた4人には、強い

結びつきができ、心のばねに、それぞれの家族が再生にむけて一歩

ふみだすのです。

(364~365p)

   

ティーンエイジャーのために書いた本を、

定年間際のおじさんが読んだので、最初は戸惑いました。

でも大丈夫でしたよ。

後半は充実した読書でした。

   

次の記事では、気に留まった文章を引用します。

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