「広野の旅人たち」その3/開拓民を夜盗虫(ヨトウムシ)が襲った
今日は令和元年9月27日。
前投稿に引き続き、
本「広野の旅人たち ~新十津川物語2~」
(川村たかし著/偕成社)より引用します。
小説「石狩平野」(船山馨著/河出書房)では、
北海道開拓農民を蝗(イナゴ)が苦しめるシーンがありました。
※ここでも道草 「石狩平野」を楽しむ 4/「蝗」(2019年9月2日投稿)
「広野の旅人たち」では、夜盗虫(ヨトウムシ)でした。
夜、あかりを持って畑へ出ると、あたりいちめんに
ザワザワという音がたちこめている。
くらくなるのをまって、虫が食っている音なのだ。
指ほどのふとさの虫は、びっしりと亜麻(あま)の茎に
よじのぼっている。
はたきおとしてふみつけるが、しがみついているので
はなれようとしない。
わらぞうりはすぐ虫のみどりの体液にぬれて、おもくなった。
あんまりきみがわるいので棒やくわを持ちこんでおしつぶした。
けれども、一本の茎に七ひきも八ひきも
ぶらさがっているのだから、なかなかつぎへすすめない。
そのあいだに一本の葉を食いつくした虫たちは、
つぎからつぎへと移動した。
(156p)
去年まで一ぴきも見なかった虫が、吹きこぼれるように
発生したのだ。やっと虫退治をしたのち、
畑にはなにひとつのこっていなかった。
十日ばかりまえにはみどりの波をうっていた畑はくいつくされ、
焼けこげてむごたらしいすがたになってしまった。
全村、亜麻は全滅していた。
(159p)
4pに渡って、記述された人間と夜盗虫の闘いは、
数でまさる夜盗虫の圧勝でした。
空から大挙飛来した蝗と同じで、
地から出てきた夜盗虫は開拓民を絶望させます。
開拓をあきらめ、町に出ていく人たちもいました。
ヨトウムシはヨトウガの幼虫。
☝ このサイトに次のように書いてありました。
1匹当たり1000~3000粒ほどの卵を産むため、
ふ化すると大量発生します。
この数は尋常ではないですね。
つづく
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