「10年目の自閉っ子、こういう風にできてます!」その1/フラッシュバックを克服する方法
今日は3月17日。
この記事の中で、ニキリンコさんの本を、
図書館で予約したことを書きました。
※ここでも道草 20190223報告その3/キミヤーズ塾 数列や循環小数を教えるのは自己中だから(2019年3月3日投稿)
予約したのは、「自閉っ子、こういう風にできてます!」(花風社)
でしたが、このシリーズ、何冊かあるため、
思った本ではないのがやってきました。
「10年目の自閉っ子、こういう風にできてます!」(花風社)
このシリーズの最新刊かな?
2014年発刊の本です。
読みました。
いくつか引用します。
このシリーズは、自閉症スペクトラムと診断されている
翻訳家のニキ・リンコさんと、アスペルガー障害の二次障害としての
解離性障害から立ち直った作家、販売員の藤家寛子さん、
それに進行役としてこの本の出版社社長の浅見淳子さんの、
女性3人の対談の形で進んでいきます。
ニキリンコ:だから「知的な障害の非常に重い方の方が
不平不満を持たずに就労継続できる」という話はよく聞きますけど、
その人たちももしかしたら、余力がないから気がつかないという
可能性もあるんじゃないかな。不満がないなら支援の手を離しても
いいと思うかもしれませんが、本人が不満も表明せず、
ご機嫌だからと言って、周囲から見て改善の必要な点がないとは
限らない、と思いました。重度の人は就労が続くというのを、
決まり文句にしては危ない。中身を見ずに持ち上げたり、
不満そうだからと下げたりしてはだめです。
浅見:「困らな感」の問題ですね。本来は困るべきところで、
きちんと困るこができない、という問題。
(58p)
思い当たることあり。こういう視点を持ちたいと思って読みました。
ニキリンコ:お習字は子どもの習い事だと思っていたので、
教頭先生か誰かがどっかの書道展に入選したと聞いたときは、
大人のくせに子どもの習い事をする人がいることに
びっくりしました。
お習字って大人がしていいの?って。
浅見:そうですね。たしかにお習字習いに行っても大人は
いませんしね。「見えないものは、ない」認知特性を持った人
としては当然の疑問なんですよね。
(130~131p)
「見えないものは、ない」
こんな認知特性を持った子に出会う可能性あり。
覚えておき、対応したいです。
浅見:いいところを伸ばす、っていうのは療育の中で
たびたび言及されますが、私はこの10年で、
それだけじゃないなあ、と思うようになりました。
「長所を伸ばす」ことも生きる力に使えますが、
「短所を利用する」こともできると考えるようになりました。
それは『発達障害は治りますか?』という本を作って、
「強みは弱みの裏にある」と教えていただき、
そしてお二方(ニキリンコ、藤家)をはじめとする方たちを見て、
それを実感する機会に恵まれたからかもしれません。
(165p)
藤家さんは、逃げるために「他の誰かになる」解離性障害を
発症しました。でも立ち直る時には、この手法で、
「なりたい自分」を作って目指していました。
ケチで堅物だという欠点を、地道な努力ができる能力として、
販売員として頑張っています。
ニキリンコさんは、いろいろなことをスルーできない脳の
持ち主。考えすぎるところがあります。
でもこれを武器にして、論理的に苦難を克服してきました。
浅見さんはこのようなことを言っていると思います。
地元で嫌な思いをした体験のある藤家さん。
そこで働くことはフラッシュバックをして大変ではないかと
聞かれます。
藤家さんはこう答えていました。
藤家:高校の先生方は、私のことを覚えていて、
よく声をかけてくださいます。きっと、記憶にあるのは、
ひどく病弱だった私だと思います。
だけど、定型の人って、記憶力はそんなによくないから
病弱だった私の記憶もおぼろげで、担架で何回運ばれたとか、
救急車で搬送されたこととか、
そこまで忠実に覚えていないと思うんです。
だから、こっちから、「こんなに元気になりました!」って
言葉をかけるようにしています。そうしたら、
「おう。頑張って働けよ!」という会話になって、
そこで終わりです。
何も怖いことはありません。
(209p)
さらにこうも言っています。
藤家:私はいつも、フラッシュバックを起こす時、
16~17歳に戻っていた気がします。だけど、そういうのは、
脳の中で起こっているだけ。思い切って目を開けたら、
ちゃんと34歳の景色が広がっている。
生きているのは、「今」なんだと気づけば、
たとえ地元であっても、怖いものはないと分かるのです。
だから、今も働き続けることができています。
(210p)
フラッシュバックへの対応の新しい視点だと思いました。
定型の人たちの記憶力の悪さを利用するのが
いいなと思いました。
浅見:私が読者の皆様にお伝えしたいことは、
社会が荒波じゃないっていうことですね。
少なくとも、荒波だけではありません。
癒す力は、社会にもあります。(中略)
ニキリンコ:ていうか、小さい頃に教えられていたのが
極端に厳しい社会だったんですよね。
実際に社会に出てみたら、言われていたほどつらくなかった。
(中略)
大人って、えてしてしつけの中で「そんなことでは社会に出て
通用しないぞ」っていうのを強調するんですよね。(中略)
目先のしつけとか学級運営のためにエア社会やエア会社を
持ってくるんですよね、しつけのツールとして。
そして社会や会社が脅しのツールにされると社会や会社が
迷惑です。
(288~289p)
思いこんでしまう発達障害の子どもに決めつけて言うことは
良くないことだという意味だと思います。
ニキさんは情報収集が大事だと言います。
大変な会社もあれば、そうでない会社もあるという
決めつけない認知が、将来にとっては大事なのです。
例として、ブラック企業のことが挙げられていました。
「どうせほぼ全部がブラック企業」と誤解すると、
いろんな弊害があります。
1 怖くてすくんじゃう・・・就職活動できません。
2 「ブラック企業でも勤まるくらい強靭な自分になってやる」と
思って、見当違いな所を鍛えに走る・・・やはり就職活動する
暇がありません。
3 本当にブラック企業に入っちゃったときに、「よそもそうだ」
と思って逃げられなくなる。
4 せっかくブラックほどじゃない会社で働けているのに、
繁忙期や非常事態に当たったときに「ブラックだ!」と
濡れ衣を着せちゃう。
5 「ブラックじゃない会社で働けている自分だけが得をして
申し訳ない」と落ち込む人もいる。
(295~296p)
認知の偏りで、こうまで思ってしまうんだと思いました。
障害を持つ子どもたちを担任していたなら、
決めつけるのは怖いと思いました。
教師も気をつけるし、障害を持った人たちは、
雑談ができる友だちが必要になってきます。
雑談によって、世間を知り、認知の偏りを防いでくれる可能性が
出てくるのです。
人と触れ合うことは、その意味でも重要なのです。
浅見:そうやって雑談友だちの存在が情報量を増やし、
世の中が怖くなくなるんですね。(中略)
ニキリンコ:たとえばバーゲンで買いすぎるとするでしょう。
雑談友だちが多ければ、漏れ聞くだけでも、
みんながやるんだとわかるんです。つまり、
バーゲンで買い過ぎってとんでもない罪ではないと
わかるんです。買いすぎてきて家で叱られるだけでは
それを学ばないんですよ。よくある失敗の一つで、
舞い上がるとついやってしまいがちなことだって
学ばないんです。
(301p)
勉強になります。
こういうことまで気をつけたいです。
もう少し引用したいです。
つづく
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