「崩壊するアメリカの公教育」① 鈴木さんが留学したいと思った理由
今日は令和2年7月25日。
この本を読みました。
「崩壊するアメリカの公教育 日本への警告」
(鈴木大裕著/岩波書店)
この本を読むきっかけは、新聞記事でした。
※ここでも道草 「一人ひとりの自己実現を教育の目標」とする できるかな?(2020年7月4日投稿)
この記事の内容を裏打ちするような内容の本でした。
引用します。
高校1年生の時、留学したいと思った理由は、「このままでは自
分がユニークになれない気がする」というシンプルな懸念だった。
(3p)
「ユニーク」とは?
「独特で、他にはないようなもの」という意味でした。
私にもこの気持ちはずっとあります。
鈴木さんに比べて、それに向けての実行力が
不足しているんだろうなあ。
でもまだまだこれから。
「自由と平等の国」アメリカのの憲法が、教育を受ける権利を国
民の基本的人権として保障していないことをあなたはご存知だろう
か。
実際、最低限の教育を受けられない子どもも多く、アメリカは国
連が採択した子どもの権利条約も批准していない。2015年にな
って南スーダンとソマリアが相次いで批准したため、国連加盟国
193か国中、署名しておきながら未だ批准していない国はとうと
うアメリカだけとなった。(中略)従来、アメリカでは土地にかか
る固定資産税が教育予算の主要な財源となっており、地価の格差に
よって露骨な教育予算の不平等が生じる。高級住宅街に有名私立校
顔負けの教育施設やスタッフを誇る公立校が存在するかと思えば、
教育ニーズの高い貧困地区の学校では経験豊富な教員を雇えず、教
科書も人数分揃えられず、チョークやトイレットペーパーさえまま
ならない所もある。世界で最も裕福な国アメリカで今日も続くこの
ような不平等を、私たちはどのように理解したらよいだろうか。
(6p)
教育における格差がアメリカでは生じています。
※ここでも道草 「みんなにお金を配ったら」① 大衆全体を守るという視点の福祉政策(2020年6月7日投稿)
「みんなにお金を配ったら」を読んだ時に感じた、
アメリカの格差、差別を感じた本でした。
一つ言えるのは、今日のアメリカの公教育政策を陰で動かしてい
るのは、ピアソンのような一部の企業であり、その目的は子どもた
めでも国のためでもなく、いかなる国家にも忠誠を持たない多国籍
企業の利益のためだということだ。
そのピアソンが、2015年からOECDが運営する国際学習到
達度調査(PISA)のマネージャーに参入した。企業の企業によ
る企業のための教育「改革」をリードしてきたピアソンと、人間の
教育を経済的アジェンダに服従させる新自由主義的教育価値観を世
界に広めてきたOECDとの組み合わせには、世界規模の危機の予
感さえする。ピアソンは、さらに国際的な競争を煽り、「PISA
型学力」に合わせた教材、カリキュラム、模擬試験、データシステ
ム等の開発を展開するだろう。
アメリカの悪しき流れが日本に来るかどうかは、日本がいかに腰
を据えてPISAに対応するかにかかっている。
(40~41p)
英国に本拠地があり、世界の教育に影響を及ぼしていると思われる
ピアソンという企業のことを初めて知りました。
さらにPISAのこと。今までPISAの結果に日本の教育は
左右されてきたと思います。
しかし、待てよと思わなくてはいけないようです。
「アジェンダ」とは?
「行動計画」のような意味でした。
新自由主義教育改革が、人間の教育を標準テストの点数」=「学
力」=「グローバル市場における競争力」という狭い定義に閉じ込
める中で、教師の教育学に根差した知識、教員免許、そして確固た
る経験に培われた教師の直感、柔軟性、子どもに対する包容力など
は、従来の価値を失っていった。「効率性」追求の名の下に、ビデ
オやiPad等のテクノロジーを導入する代わりにプロの教員を削減す
る現在のアメリカのトレンドの背景には、このような教育ビジョン
の貧弱化がある。
(65p)
数値化と標準化に伴う商品化のもう一つの例は、教えるという行
為のテクニック化だ。ただ点数をあげることだけが求められるのだ
から、学校は進学塾化し、教えるということはもはや点数を上げる
ためのテクニックでしかなくなってしまう。ティーチングが、誰で
もどこでもすぐに使えるテクニックに分解、商品化され、販売され
るのだ。
(77p)
テストで高い点を子どもたちに取らせるテクニックがある教師のみが
評価される。現実アメリカではそこまでの状況になったのです。
つづく
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