「みんなにお金を配ったら」① 大衆全体を守るという視点の福祉政策
今日は令和2年6月7日。
1週間+1日かけてこの本を読みました。
「みんなにお金を配ったら ベーシックインカムは世界で
どう議論されているか?」(アニー・ローリー著/上原裕美子訳
/みすず書房)
特別定額給付金10万円のこともあって、
「ベーシックインカム」に興味を持ち、
この本を読んでみました。
引用します。
想像してみてほしい。あなたの家の郵便受けに配達される小切手
という形で、もしくは銀行口座への入金という形で、毎月お金が届
けられる。
それで生活は維持できるが、あくまでぎりぎりという金額だ。
(中略)
シンプルで、ラディカルで、そしてエレガントなこの提案には、
名前がある。ユニバーサル・ベーシックインカム(UBI)だ。ユ
ニバーサル
(普遍的、全員一律)と呼ぶのは、コミュニティまたは国家の住民
全員が皆同じように受け取ることを指している。ベーシック(基礎
的)と呼ぶのは、最低限の生活が実現する金額であることを指して
いる。そしてこのお金はインカム(所得)という位置づけであるこ
とを指している。
(4p)
この本で何度も出てくる「UBI]の説明です。
オバマ元大統領は辞任挨拶において、「経済的混乱の次の一波は
海外からくるわけではない。容赦なく進む自動化の波が、善良な中
間層の職を奪っていくだろう」と述べた。雑誌の表紙も、書籍も、
ケーブルテレビのニュース番組も、同じことを叫んでいる。ロボッ
トの脅威はトラックドライバーだけを襲うわけではない。金融トレ
ーダーにも、広告会社幹部にも、大学教授にも、倉庫の労働者にと
っても、等しく脅威になるのだ、と。
一説によると、これまでは新しい機械が発明されるときには新し
い雇用も誕生していたのに対し、今回の技術発展にはそうした創出
もなく、これまでより急スピードで雇用破壊のほうを進めているの
が問題なのだという。
(19~20p)
ロボット化あるいはAI化によって、
働きたくても働くことができない社会になってしまうという説です。
21世紀の技術的失業に関しては、さらに背筋が寒くなる話があ
るーーーーこれは過去に起きてきた変化の単なる特大版ではなく、
もっと根深い意味で性質の異なる破壊だと考えられるのだ。今回の
変化の大前提は、スマートなコンピュータシステムがみずから学習
して成長するという点にある。つまり機械は人間の手を借りないだ
けでなく、人間の仕事を無用にしていくのである。
(21p)
人類はこれまで技術革新を生み出す側だった。人類が、より優れ
た機械を開発し、人類が、コンピューティングシステムに改良を重
ねてきた。だが人工知能や、ニューラルネットワークや、機械学習
というテクノロジーは、機械に自己修練の力を与えたのだ。
(24p)
機械学習の専門家を対象にした最近の調査で、AIが人間をしの
ぐ時期を予想させたところ、言語の翻訳では2024年までに機械
のほうが賢くなるだろうとという答えが出た。高校生レベルの論文
執筆は2026年までに、トラック運転手は2027年までに、小
売店舗での勤務は2031年までに、ベストセラー書籍の執筆なら
2049年ーーーひやひゃものだーーーまでに、そして外科手術な
ら2053年までには機械が人間より巧みにこなすようになる。こ
の調査の報告書は「50%の確率で、AIは45年以内にあらゆる
作業で人間を上回り、120年以内に人間の仕事がすべて自動化さ
れる」という見解を打ち出した。
(24~25p)
職業がなくなっていく社会とベーシックインカムがどうつながるか。
次の文章。☟
格差が際限なく広がり、大量失業の波が押し寄せれば、今のシス
テムはあっけなく崩れ去る。ベーシックインカムが、そうした人々
がおぼれて沈んでゆかぬことを目指した政策であることは間違いな
い。「機械は仕事を奪うといわれているが、収入まで奪わせるべき
ではない。社会の大多数を巻き込む雇用不安の問題には、もはや困
窮者を限定的に救う政策ではなく、大衆全体を守るという視点の福
祉政策で立ち向かわなければならない」と、世界銀行シニア・エコ
ノミストのウーゴ・ジェントリーニが世界経済フォーラムで発言し
ている。「ゆえに、(ベーシックインカム給付が)デジタル時代に
採るべき道として浮上するのである」
(27p)
というわけです。
さらに・・・・
サンフランシスコのベイエリア、主にシリコンバレーと呼ばれる
一帯は、近年ではUBIのメッカとなっている。この地で発展して
きたテクノロジー産業の大物たち、たとえばイーロン・マスクやビ
ル・ゲイツらが、UBIを「21世紀のソーシャルワクチン」「
21世紀の経済的権利」「人々のためのベンチャーキャピタル」な
どと呼び、この方針への関心を表明しているからだ。(中略)
問題を作り出している側が、その問題を解決すると信じる方針を
主張するとは、いささかアイロニーを感じることは否めないーーー
何しろ、経済全体の労働基盤を破壊しつつあるテクノロジーの開発
者たちが、その同じ口で、現状の福祉政策を根本から変える新たな
対策を謳っているのだから。
(28~29p)
イーロン・マスクという名前は、最近のニュースで知りました。
5月31日(日本時間)に、
民間初の有人宇宙船打ち上げ成功を為した
企業のトップがイーロン・マスク氏でした。
ニュースで見たばかりの人名が、読んでいる本に出てきてビックリ。
つづく
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