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2020年4月22日 (水)

「世界」(2020年5月号)① 福島県浪江町の元住民が戻りたくない理由

  

今日は令和2年4月22日。

  

ここでも道草 「世界」5月号がやっと手に入りました(2020年4月13日投稿)

やっと手に入れた月刊誌「世界」2020年5月号(岩波書店)を

あらたかた読み切りました。

  

Epson291   

読んでみて、世の中には知らないことがたくさんあるんだなあと

あらためて思いました。

すべてのことを知って、それぞれについて自分の考えを持ち、

できることは実行していく・・・なんてことは1人の人間には

無理なことだとあらためて思いました。

運よく出合った情報には、真摯に向き合っていきたいです。

何から引用しようかな。

     

福島の話。

帰還困難区域であったところが、

除染して帰還困難が解除しました。

ところがもと住民にとっては複雑な気持ちになるようです。

浪江町の菅野さんの発言。

  

「実は私のところは2年前から特定拠点解除が始まっています。5

年で除染して、該当する人たちを家に帰すと。それでウチもその該

当になってしまったんです。だから近所の人たちから『まあ、おめ

たちは運が悪いな』と言われる。そったらもん、帰れるわけねえべ、

って。でも選ばれてしまった以上、私たちは『帰れない人』から『

帰らないことを選ぶ人』になるのです。これだけ国が税金を使って

除染をしたのにと、今度は帰らないことを責められる立場になる。」

(中略)

「除染作業をしてもらったということは、誰かに被曝労働を強いた

ということでもあるんです。私たちが避難しているところの汚染を、

自ら被曝しながらどかしてくれる人たちがいる。そのやりきれなさ。

そんなにまでして除去してくれているのに、私たちはそこに住める

とは思えない。そのことの申し訳なさ。だって山は除染しないんで

すよ。我が家の水源は1キロ先の山の中です。そこにはまだ10μ

(マイクロ)シーベルのところもある。いくら表面を剥いでも、周

りの山が除染されていないから、雨が降れば放射性物質も流れ出る

し、風で飛んでくる。今でもフクイチからは放射性物質が出続けて

いるわけですから。たとえば横浜の公園で1μシーベルト以上の汚

染があったら、直ちに黄色いロープが張られて、除染したというこ

とがニュースになる。でも福島では年間20ミリまで被曝しても構

わないことになっているんです。レントゲン室は5ミリまでの被曝

はやむを得ないと言われますよね。私たちはレントゲン室で子育て

しても構わないということですよね。それが福島の暮らしなんです。」

(200p)

   

  

実際に福島県に行って、大熊町に行ってみて、

帰還することができるようになったのに、

元住民は戻っていない状況を見てきました。

この菅野さんのような思いをもっている人が多いのかなと

想像します。

  

「福島イノベーション・コースト構想」というのがあります。

東日本大震災および原子力災害で甚大な被害を受けた浜通り地域に、

新たな産業基盤を築くことを目指す巨大な国家プロジェクトです。

最先端産業を集積し、雇用を生み出し、

地域を復興しようというものです。

実際にすでに施設ができあがっています。

しかし、元住民の暮らしとは結びついていないようです。

浪江町の菅野さんの発言です。

 

「立派な建物が建って、研究所ができて、でも人の暮らしとか、

子どもたちや年寄りの健康に目を向けない。結局、生産性でし

ょう。どうやって日本に経済的な効果が与えられるかが重要な

のでしょう。そして県外から人々が来て働けるように住宅を作

り、地元に住民票をおろしなさいと。そうすれば浪江町や大熊

町の人口が増える。町はこれだけ復興したと。でも追い出され

た人たちは外であえいでいる。私たちを置いて、町は行ってし

まう。それがイノベ構想なんだろうなと思っています」

(201p) 

  

  

被災地には最先端の産業施設ができてきていますが、

そこに最先端産業を興すことが主目的になってしまい、

元住民が戻ってきて昔のように暮らすことが

置いてきぼりになってしまったように感じます。

災害後9年目を迎えた3月11日前後で、

福島県の特集番組をいくつか見ました。

よその市町村で根をおろしている人たちがたくさんいて、

その人たちの多くは、もう戻らないと言っていました。

「世界」を読んで、戻らない理由があらたに見えてきました。

  

  

つづく

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