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2020年3月17日 (火)

「星ちりばめたる旗」④ 442連隊の勉強につながった

  

今日は令和2年3月17日。

  

前記事に引き続き、

星ちりばめたる旗」(小手鞠るい著/ポプラ社)

より引用します。

  

  

まわりを有刺鉄線の柵で囲まれ、監視塔からは、戦闘装備に身を固

め、自動小銃を手にした兵士が24時間、人々に銃口を向けている。

どこからどう見ても、ここは明らかに強制収容所であり、無実の日

系人を犯罪者に仕立て上げ、社会から隔離している「監獄」---

ケンはそう名づけているーーーに違いない。仲間たちのなかには「

日系人専用の刑務所」と呼んでいる人もいるし、「人種差別刑務所」

と呼んでいる人もいる。

去年の7月、バスを降りて、初めてこの地を踏んだときの絶望感を、

ケンは思い出す。「湖ないね」と言った、末っ子のハンナの不思議

そうな表情が浮かんでくる。

トゥーリレイク。その名の通り、この土地にはもともと巨大な湖が

あった。水辺には、ネイティブアメリカンが生活用具に加工して使

っていた「トゥーリ」という名の葦が生い茂り、あたりには、さま

ざまな水鳥の棲息する沼地や、野生動物の暮らす豊かな森が広がっ

ていたという。かれこれ20年ほど前に、政府はこの湖を買い上げ

て、水を抜いてしまった。ニューディール事業の一環として、ここ

に3500エーカーの農地を開発しようとしたらしい。しかし、な

んらかの事情が発生し、放置された。水を抜かれ、荒れ果てたまま

捨て置かれた土地に築かれたのが、トゥーリレイク収容所だった。

隣の部屋で暮らしている男からそのような話を聞かされたとき、あ

まりの皮肉に、ケンは顔を歪めて笑い出してしまった。

「国から放棄された土地に、国から見捨てられた日系人を集めたっ

てことか。僕らの家や財産を抜き取って」

冬の厳しさは想像を絶するものだが、夏の猛暑もまた、限界を超え

ていた。

猛暑を和らげるはすの風でさえも、牙を剥いて襲いかかってきた。

あたりの砂塵を巻き上げながら、バラックとバラックのあいだを吹

き抜けていく強風は、さながら砂嵐のようだった。薄い壁の節や割

れ目を通して、砂塵は容赦なく部屋のなかまで吹き込んでくる。何

度シャワーを浴びても、体じゅうがざらざらする。細かい砂の粒子

が目に入ってくるため、眼球は充血して真っ赤になった。突風が吹

いているとき外に出ると、無数の砂粒が皮膚に当たって、針で刺さ

れているように痛かった。

(274p)

  

たくさん引用しましたが、

この本で描かれている在米日系人の収容所は、

ここまでひどかったのかと思えるものでした。

戦争が起これば、世界各地でひどいことは起こっていたのです。

  

  

17歳以上の二世男子のためには、特別な登録所が設置された。そ

こには、陸軍から派遣された下級将校と思しき徴兵面接官が詰めて

いた。

この特別な登録所で、ケンはきょうの午後、登録を済ませた。

登録のために用意された質問は28個。収容所内で物議を醸してい

たのは、最後のふたつ、第27番と第28番である。

「あなたは、アメリカ合衆国軍隊に入隊し、命令に従ってどこへで

も行く意志がありますか?」

ケンは、面接官の目をまっすぐに見つめて「イエス」と答えた。

「けっこうだ」

「あなたは、アメリカ合衆国に忠誠を誓い、日本の天皇、他の外国

や政府の勢力や組織のための、いかなる形の忠誠も服従も拒否し、

合衆国のために、内外の敵からの攻撃に対して、勇敢に戦う意志が

ありますか?」

視線を逸らさずケンは「イエス」と答えた。

「非常にけっこうだ」

ふたつの質問に「イエス、イエス」と答えた二世男子には、収容所

を出て、しかるべき場所でしかるべき訓練を受けたあと、日系人だ

けで構成されている陸軍戦闘団に入り、戦場へと向かう道が用意さ

れていた。

アメリカ合衆国への忠誠の道。

それは、死と隣り合わせになった道でもある。「おまえらは敵性外

国人だ」と一方的に決めつけ、収容所へ放り込んでおいて、今度は

「アメリカのために戦え」か。多くの二世男子と同様、憤懣やるか

たない気持ちを抱きながらも、ケンはこの道を選んだ。「日系アメ

リカ人は、日本との戦いには参加しない。敵味方の区別がつかなく

なるから。きみたちに赴いてもらいたいのは、ヨーロッパ戦線だ。

きみたちの倒すべき敵はナチスドイツだ」という陸軍側の説明を信

じて。

(277~278p)

  

ケンは陸軍第422連隊戦闘団に入ります。

またまた昔の勉強とつながります。

ここでも道草 「驚きももの木20世紀」その3/442連隊の精神(2018年2月4日投稿)

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