「医者、用水路を拓く」④ 用水路は蛇籠工と柳枝工が採用されていた
今日は令和元年12月26日。
24日の記事に引き続き、
「医者、用水路を拓く アフガンの大地から
世界の虚構に挑む」(中村哲著/石風社)より引用します。
例えば2003年11月に、私たちPMS(ペシャワール会医
療サービス)の用水路建設現場が米軍ヘリコプターに機銃掃射
を受けたとき、米軍当局は「疑わしきは攻撃してから、確認す
る」と述べた(日本大使館説明による)。さらに、「戦死した
戦友を思う気持ちを分かってほしい」と付け加えたという。こ
ちらとしては、「空爆で罪もなく肉親を失った人々の気持ちも
分かってほしい」と抗議したかったが、そんな発言をすれば、
「反米的、親タリバーン的」だと烙印を押されかねない雰囲気
である。工事に差支えが出るのはまずいと思い、黙っていた。
(83~84p)
圧倒的な軍事力であるアメリカ軍側でも、犠牲者が出ています。
その死を理由に空爆が増える。アフガニスタンの犠牲者が増え、
反米の感情が高まる。国は親米と反米にさらに分かれていく。
空爆は憎しみを増幅し、その後の治安を難しいものにします。
シリア(前記事)だって、いい方向んは行かないはず。
私(中村哲)は、「環境をいうならば、コンクリート三面掩蔽
(えんぺい)を避け、蛇籠(じゃかご)工と柳枝工(りゅうし
こう)の水路は最も先進的な『環境配慮』のお手本となるだろ
う」と、大見得を切って力説した。
(87p)
「柳枝工」がアフガニスタンで行われていました。
※関連:ここでも道草 樹木の入ったお名前「柳」(2019年8月2日投稿)
この時の勉強とつながりました。
しかし、(用水路建設の)現場を見ながら今振り返ってみれば、
「自分が専門家だったら決して手をつけなかっただる」と思え
ることばかりである。圧倒的な物量と機械力、精密な測量と理
論的研究を誇る日本の公共土木技術は、世界屈指のものである。
それだけに、専門分化が著しくて門外漢の入る余地が少なく、
医療現場に似た点がないではない。しかし、だからといって日
本の土木技師がやってきても、直ぐに役に立つとは思えない。
文化や習慣はもちろん、技術力も機械もない現地では、勝手が
ずいぶん異なって、思い通りにならないのである。
だが医療の場合でも、過去同様であった。日本では優秀な医療
技術者といえども、豊富な診断機械と無制限に必要薬品が使え
福祉社会に支えられた技術であって、診断ひとつとっても、聴
診器や打鍵器など人間の五感だけが頼りでは身動きがつかない。
医療も含め、「技術者」には、「モノのない現地に合わせて何
とかする」訓練が不可欠で、年余をかけて自らを再教育せねば
ならぬことが多い。
(95p)
この本で再三述べられている中村哲さんの持論です。現地を状
態を知って、それに合わせていかなければなりません。機器が
そろっていないことで去っていく技術者、医療者がいたそうで
す。
日本とアフガニスタンとの地形や河川を見ると、類似点がある。
それは、河川の勾配が急であること、季節の水量の変動が大き
いことである。日本列島は山が海岸から近く、山間部の河川は
急流が多い。また、夏になると集中豪雨、台風などで急激に増
水する。明治時代に治水事業で招かれたオランダ人技師デ・レ
ーケ
が、日本の河川を評して、「これは川ではない。滝だ」と述べ
たのは有名な話である。
(98~99p)
「これは川ではない。滝だ」発言は以前に
聞いたことがあります。ここで復習ができました。
つづく
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