「それはホロコーストの”リハーサル”だった」より2.「断種法」
今日は1月4日。
前投稿に引き続き、
2015年11月7日放映の
【ETV特集 それはホロコーストの”リハーサル”だった
~障害者虐殺70年目の真実~】より
ナレーター:
そうした中、ある精神科医と法律家が1冊の本を出版します。
「生きるに値しない命を終わらせる行為の解禁」
この本では、生きるに値しない障害者などを生かしてきたことは、
行き過ぎの行為であった。
彼らの排除、つまり殺害は決して犯罪ではない。
むしろ社会にとって有益なのだと結論付けました。
歴史学者ハンス=ヴァルター・シュムール教授:
ある種の理想主義でした。
社会をうまく操作すれば、 健康な社会が作れるという幻想です。
国民全体を健康にするために、患者は殺してもいいという考えが
浸透していったのです。
ナレーター:
こうした思想に目をつけたのが、ヒトラーでした。
政権をとる7年も前、著書「わが闘争」に、
このような言葉を残しています。
「肉体的にも精神的にも不健康で無価値なものは、
子孫の体にその苦悩を引き継がせてはならない」
「国家は幾千年も先まで見据えた
保護者としてふるまわなければならず」
「個人の願いや我欲などは何でもないもの
としてあきらめるべきものである」
1933年1月、ヒトラーはついに念願の政権を取ります。
この時、国民は、新しいリーダー誕生を、熱烈に歓迎しました。
当時ドイツは、第一次世界大戦の敗戦で、
巨額の賠償金を課せられ、国民に、
屈辱的な気分が広がっていました。
それに追い打ちをかけたのが、1929年の世界恐慌。
国民の実に3分の1もが仕事を失っていました。
ドイツ民族の優位性を強調し、
ドイツ帝国の復権を約束したヒトラーは、
自信をなくしていた国民の心を捉えるのです。
ヒトラーの演説:
我々はやるべきことをするのだ
国民の理解があれば、
国民が自身の義務を果たせば
ドイツの歴史は全世界に認められるだろう。
世界は思い知るのだ。
そこには団結したドイツ国民がいることを。
ナレーター:
政権を掌握すると、ヒトラー率いるナチス党は、
ユダヤ系商店のボイコット運動を行うなど、
ユダヤ人排除を堂々と行います。
同時に遺伝病や障害者をなくすことを目的とした法律も整備します。
遺伝病の子孫を予防する法律、通称「断種法(だんしゅほう)」です。
当時は遺伝すると思われていた知的障害者や精神障害者などが、
次の世代の配慮として、子どもができないように
手術を受けなければならないとされました。
「断種法」をスムーズに施行するための
手引書も用意されました。
これを書いたのは、あのドイツ精神医学研究所のリューディンでした。
ある集まりで話した彼の言葉が残っています。
「ヒトラーのおかげで、30年間、
私たちが夢見てきた優生思想が、実現された」
ヒトラー一人の考えで、いろいろなひどいことをしたのではなく、
その時代の学者・医者の考えをうまく利用したのです。
「断種法」に関する部分の聞き書きは省略しますが、
生殖能力を取り除く強制断種手術を受けさせられたのは、
ドイツ全土で40万人にものぼったそうです。
40万人という数の大きさに驚かされます。
徹底して行われたと想像します。
次の投稿につづく。
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