加古里子さん/「さとこ」ではなくて「さとし」でした
今日は10月11日。
サークルで紹介してもらった本です。
「絵本のひみつ」(余郷裕次著/茨城新聞社)
絵本を見る時の視点を教えてくれました。
たとえば「絵本モンタージュ(残像)の効果」
「絵本モンタージュ」とはなんだ?
引用します。
絵本モンタージュとは、一枚の絵画を見るだけでは得られない
イメージや心理的効果を、複数の絵画を組み合わせること
(めくることの残像効果)で、聞き手(読者)に得させる仕掛け。(24p)
複数の絵画を組み合わせることで伝えるなんて、
絵本作家はそこまで考えているの?と思ってしまいます。
そこで具体例に挙げられているのが
「だるまちゃんとてんぐちゃん」(加古里子作・絵 1967年 福音館書店)です。
実際に地元の市立図書館で借りて、子どもたちに読み聞かせをしました。
この本について、余郷さんはたくさん書いています。
「私の一番好きな絵本」として紹介しています。
「宇宙に一冊絵本を持って行くとすれば、
私は迷わず『だるまちゃんとてんぐちゃん』を選びます」(103p)
そのお気に入りの「だるまちゃんとてんぐちゃん」の絵本モンタージュ効果について
次のように書いています。
赤いだるまちゃんが、白いだるまちゃんに対して、
表紙以外全て見開きにおいて左側に描かれる絵を組み合わせることによって、
聞き手(読者)を主人公のだるまちゃんに共感させ、
子ども(だるまちゃん)の欲求を大人(だるまどん)が、
全面的に肯定してくれるという感覚を味わわせる仕掛けになっています。
同時に、友達(てんぐちゃん)が自分(だるまちゃん)を認めてくれるという
感覚も味わうことになります。 (24~25p)
なぜ、表紙の配置だけが違うのでしょうか。
それは、だるまちゃんが「じゃんけん」に負けているからです。
つまり、不利な状況を表現する配置になっているのです。
同時にだるまちゃんは片目しか描かれていません。
これも、だるまちゃんが不利な状況、
ストレスのある状況にあることを表現し、
それを聞き手(読者)に共感させる仕掛けなのです。
そのストレスが、本文で解消される仕掛けなのです。 (101p)
「だるまちゃんとてんぐちゃん」の魅力は、
まさに大人が子どもの欲求を繰り返し肯定し受け入れてくれるところにあります。
現実の生活の中では、大人が様々な要求を子どもにつきつけます。
せめて信頼する身近な大人に、この絵本を読み聞かせてもらうことができれば、
子どもたちの癒しが実現するのではないでしょうか。 (102p)
まだこの本を読んでいない人、読みたくなったでしょ。
本当にそうなっているの?本当にそんな効果があるの?
確かめたくなったでしょ。ぜひ読んでみてください。
作者の加古さんはそこまで考えて描いたの?
加古さんのプロフィール部分の写真です↓
1926年、福井県生まれ。
現在は?間もなく90歳になられる年です。
失礼ながら・・・・ご存命なのかな?
調べてみました。
ご存命でした。素晴らしい。
ビックリしたのは、女性だと思ったら男性でした。
「里子」は「さとこ」と読まずに「さとし」でした。
(「だるまちゃんとてんぐちゃん」の表紙をよくみれば、
ちゃんと里子に「さとし」とふりがながありました)
http://www.asahi.com/articles/DA3S11720038.html
本名は中島哲(なかじまさとし)さんでした。
Wikipediaによると、
「絵本制作の方法論などを解説した『加古里子 絵本への道』(1999年)」
という本の書かれているそうです。
十分に絵本モンタージュ効果も考えて描いたのかも?
そう思えてきました。 ※参考:Wikipedia 加古里子
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