「スネークダンス」① コロッセオの描写
今日は令和4年7月31日。
この本を読みました。
「スネークダンス」(佐藤まどか著/小学館)
芸術の都ローマで生まれ育った圭人は、古い町並みをスケッチするの
が好きだった。父親が亡くなったことを機に母と日本に帰国する。
住みなれた土地を離れて引っ越してきた東京でも、スケッチしながら
歩いていると、忍者のような姿の人が、スプレー缶を持ちダイナミッ
クに落書きしている。
なんだこれ?! すごいな。
芸術と出会う喜びと挑戦を描く青春小説。(Amazonの紹介文)
もう一つ引用します。
【編集担当からのおすすめ情報】
イタリアの建築物やアートが少年目線でたくさん語られるところも、
読みどころとなっている。天才ではない普通の少年が、何を感じ、
何を見つけていくのか・・・。
イタリア在住の作者ならではの読みごたえのある物語です。
(やっぱりAmazonに載っていた紹介文)
そうなんです。
作者の佐藤まどかさんは、1987年からイタリア在住。
きっと同じくらいか、佐藤さんの方が少し年下と予想。
イタリアに35年も住んでいるだけあって、
イタリアの建築物についての描写が詳細で勉強になりました。
コロッセオの描写。
そのまま歩いていくと、コロッセオが見えてくる。西暦80年に建
てられた円形闘技場だ。地下、アリーナ席、そして四階席からなり、
収容人数は8万人だというから、現在の巨大スタジアムと同じぐら
いだろう。(中略)
テレビや映画はおろか、娯楽がほとんどない時代である。古代ロー
マの政治家たちは、不満をつのらせ暴力に走ることがないよう、兵
士や市民を満足させるためにこの巨大な闘技場で凶暴な見せ物をオ
ーガナイズしていたらしい。
今では床がぬけて丸見えになっている地下から、ライオンなどの獰
猛(どうもう)な生き物が出てきて、グラディアトーレと呼ばれた
剣闘士と闘っていた。
一番の見せ物は、やはり剣闘士同士の、流血の闘いだった。死者が
出ることもよくあり、そのたびに観客は興奮した。演出が凝ってい
て、現代の演劇やコンサートのように、地下からまきあげられるエ
レベーター式の檻に入った猛獣や、はねあげ式の台にのった剣闘士
が現れると、会場がわきあがった。
とくに人々が熱狂したのは、大がかりな模擬海戦だったという。古
代ローマ人が得意だったローマ水道を使って水を運び、コロッセオ
に地下水路を張りめぐらせ水をひいて、本物の船をうかべ、海戦を
したというのだからおどろきだ。
(39~40p)
海戦までやっていたのは、この本で初めて知りました。
地下があって、そこから猛獣や剣闘士が登場したとなると、
きっと会場は盛り上がっただろうなと想像できます。
コロッセオの描写はまだつづく。
おどろくことは他にもあった。現在ではただ野外劇場のように天井
が開いているが、当時は天幕が張られ、しかも太陽の動きにより天
幕を動かせる仕組みになっていたという。
(40p)
どんな仕組みになっていたのでしょう。
ここで公開処刑も行われていた。皮肉なことに、多くの命が消えて
いったこのコロッセオで、現在は死刑制度廃止のイベントが行われ
る。イタリアは死刑制度が廃止されて久しいが、世界のどこかの国
で死刑制度が廃止されると、その象徴としてライトアップされる。
(41p)
これも知らなかったことです。
死刑制度に反対する象徴としてコロッセオはライトアップされるのですね。
※参考:死刑制度廃止を呼びかけ、コロッセオがライトアップ - イタリア(2007年)
十年ほど前から、コロッセオは部分的に大修復中だ。昔あったはず
の床を半分だけ再築し、地下を修復し、今までは入れなかった地下
も見学できるようになる。また、猛獣の入っていたまきあげ式の舞
台装置なども復元されるらしい。
完全に修復が終わって公開されるころ、圭人はもう日本だ。残念で
もあるが、同時に、復元されてしまったコロッセオを見たいかどう
か、少し疑問でもある。
たしかに、あのままではどんどん朽ち果てていっただろう。
しかし、それもまた味わいがあるといえばあるのだ。
(41~42p)
コロッセオが修復中であることも、この本で初めて知りました。
修復したら、観光客が増えそうです。
いつか行くことがあるのでしょうか。
以上がコロッセオの描写。
情報たっぷりの描写でしょ。
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