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2022年2月19日 (土)

本「天衣無縫」読破/肩身がせまい想いをする作風

       

今日は令和4年2月19日。

    

この本を読みました。

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「天衣無縫」(織田作之助著/角川文庫)

   

この表紙には目を奪われます。

マンガ・アニメの「文豪ストレイドッグス」の

キャラクターです。

中学生の生徒に買わせてしまう魅力ある表紙です。

そして「天衣無縫」というタイトルもいい。

今年になって初めて知った織田作之助の本を、

私も読む機会をもちました。

ここでも道草 織田作之助作「夫婦善哉(めおとぜんざい)」/番画〈653〉(2022年2月5日投稿)

   

表紙裏には次のように書いてありました。

  

太宰治や坂口安吾らとともに無頼派として活躍し、大阪という土地の

空気とそこに生きる人々の人生の機微を巧みに描き出した著者。その

代表的作品を収めた、短編傑作編。

  

なるほど、そんな作品群だと思いました。

 

その夜、ことに自作が発売禁止処分を受けて、もう当分自分の好きな

大阪の庶民の生活や町の風俗は描けなくなったことで気が滅入り、す

っかりうらぶれた隙だらけの気持ちになっている夜、(略)

(204p)

  

自分でも大阪の庶民の生活や町の風俗を描くことが

好きだと書いています。

この本に載っている短編はまさにそうでした。

  

「ほう?今宮の十銭芸者か」と海老原は知っていて、わざと私の顔を

見ずに、

「ーーーオダサク好みだね。併(しか)し君もこういう話ばっかし書

いているから・・・」

「発売禁止になる・・・・・?」と言い返すと、いやそれもあるがと、

注がれたビールを一息に飲んで、

「ーーーそれよりもそんな話ばかし書いているから、いつまでたって

も若さがないと言われるんだね」そう言いながら突き上げたパナマ帽

子のように、簡単に私の痛い所を突いて来た。

(「世相」209p)  

   

「文豪ストレイドッグス」でも織田作之助は

「オダサク」と呼ばれています。

生徒情報です。

そして実際に「オダサク」と呼ばれていたようです。

確かに若さはない内容かなとも納得します。

  

  

難波から高野線の終電車に乗り、家に帰ると、私は蚊帳のなかに腹

ばいになって、稿を起した。題は「十銭芸者」ーーー書きながら、

ふとこの小説もまた「風俗壊乱」の理由で闇に葬られるかも知れな

いと思ったが、手錠をはめられた江戸時代の戯作者(げさくしゃ)

のことを思えば、いっそ天邪鬼な快感があった。デカダンスの作家

ときめられたからとて、慌てて時代の風潮に迎合するというのも、

思えば醜態だ。不良少年はお前は不良だと言われると、もはやます

ます不良になって、何だいと尻を捲(ま)くるのがせめてもの自尊

心だ。闇に葬るなら葬れと、私は破れかぶれの気持ちで書き続けて

行った。

(「世相」213p)

   

こんな気持ちで書いていたんだなと思わせてくれる文章です。

   

家人は吐きだすように言った。私がそのような小説を書くのがかね

がね不平らしかった。良家の子女が読んでも眉をひそめないような

小説を書いてほしいのであろう。私の小説を読むと、この作者はど

んな悪たれの放蕩無頼かと人は思うに違いないと、家人にはそれが

恥ずかしいのであろう。親戚の女学校へ行っている娘は、友達の間

で私の名が出るたび、肩身がせまい想いがするらしい。

(「世相」214p)

   

確かにこの本に載っていた短編は、放蕩無頼感のあるものでした。

中学生は飛びついてはいいが、小説の中身にとまどうだろうな。

「夫婦善哉」を読んで思ったことです。

しっかり者の女房に、どうしようもない旦那の構図。

それでも最後は、一人よりも二人なのがいいというオチ。

自分はここまでどうしようもない旦那だとは思っていなかったけど、

待てよと思うところもあります。

結婚してから今まで、何かかあか言っても、仕事中心だったもんな。

たいした旦那ではないなと振り返ります。

退職後は、奥さんのことを考えないとな。

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