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2021年3月 4日 (木)

「メディア論の名著30」パニックはなかったという記述

   

今日は令和3年3月4日。   

  

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「メディア論の名著30」(佐藤卓己著/ちくま新書)

  

この本を図書館で借りてきました。

読みたかったのは30分の1。

  

名著の1冊である

ハドリー・キャントリル著「火星からの侵入」

(原著刊行年1940年)に関する記述です。

この記述の中で、1938年10月30日、ハロウィーンの

夜に流れたラジオ劇中の「火星人襲来」ニュースで

全米がパニックになったという話は違うよという部分を

拾ってみました。

  

「逃げまわって死者まで出る騒ぎ」は新聞紙のデマであり、大パニ

ック(群衆的錯乱行動)はまったく確認できていない。にもかかわ

らず、こうしたパニック神話が持続してきたのは、世界的な社会心

理学者キャントリルがものした本書が存在するためでもあろう。実

際、私自身も「現代メディア史」(1998年)で「弾丸効果論」

の古典として本書に言及したとき、大パニックの存在そのものには

まったく疑ってはいなかった。

(133~134p) 

   

「弾丸効果論」については、

Wikipedia メディア効果論で勉強できました。

佐藤卓己さんも、疑っていなかったことを認めて、

パニックはなかったとしています。

  

新聞は競合するニュースメディアの「ハロウィンのいたずら」番組

に過剰反応したが、実際にパニック発生で生じたとされたショック

死や軍隊出動の記録は確認されていない。ロックフェラー財団の資

金援助で行われたキャントリルのラジオ研究(「火星からの侵入」

1940)では、ラジオの効果を強調すべく聴収者の反応が過大に

評価されていた。

(134~135p)  

  

新聞が過剰反応した模様。

  

そもそも、今日の災害社会学研究(E・L・クアランテリなど)の

知見では、ハリウッド映画の戦争・災害シーンはともかく、現実の

パニック(恐慌)状態では人々は逃避するよりその場にとどまるこ

とが多く、錯乱行動が発生するのは例外的だとされている。必要な

情報を得ることができない人間は、豪雨でフロントガラスから外が

見えない自動車運転手とよく似た状況に置かれており、そこでアク

セルを踏み込むドライバーは稀である。たとえパニックを意味する

内容に「不安、狼狽などに起因する激しい個人的感情」から「社会

的混乱をもたらす集合行動」までの幅があるとしても、パニックで

後者のみがイメージされる一因に本書の「火星人襲来パニック」神

話があると言えよう。

(135p)

   

災害社会学研究の知見からも、「社会的混乱をもたらす集合行動」は

起きにくいと論じています。

「本書」=「火星からの侵入」にはどんなことが書いてあるのかなと

興味は持ちますが、私の追求はここまでです。

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