「避けられた戦争」② 2022年からの「歴史総合」で、両大戦間期がどう書かれるか
今日は令和2年8月2日。
前記事に引き続き、
「避けられた戦争 1920年代・日本の選択」
(油井大三郎著/ちくま新書)より引用します。
他の教科書でも世界史と日本史の教科書の間には同様のギャップ
がみられる。つまり、日本史の場合、第一次世界大戦で獲得した山
東半島などの利権がパリ講和会議で返還を迫られたことへの反発か
ら、右翼的な対外膨張思想が誕生したという基調で書かれているの
であり、軍事力で領土や市場の拡大を図る「旧外交」を当然視する
論調がうかがえる。
それに対して、世界史の場合は、史上初の総力戦が戦われる中、
膨大な犠牲者を出した反省から戦争によらないで紛争を解決する方
途の開拓から国際連盟の創設や民族自決権の承認による国民国家の
創設という「新外交」への転換が図られた点が強調されているので
ある。簡単にいえば、日本史では「旧外交」の継続性が強調されて
いるのに対して、世界史では「新外交」への転換が重視されている
のである。
このようなギャップが発生する背景には、第一次世界大戦の受け
止め方に関して日本と世界の間に大きな差が存在しており、それが
戦後体制のあり方の認識にも及んでいると思われる。この点は、歴
史教育の問題だけでなく、両大戦期に関する歴史研究における国際
関係史と日本史の間のギャップとなっている点は今後、本論で詳し
く検討したいと考えている。
2022年から高校の歴史教育では、近現代史の世界史と日本史
を統合した「歴史総合」という科目が新設され、必修教科となるだ
けに、今後、世界史と日本史におけるギャップを研究面だけでなく、
教育面でも縮小する努力が益々必要になるだろう。
(20~21p)
高校の世界史と日本史で、「旧外交」側の考えと
「新外交」側の考えに別れていたなんて、初めて知りました。
というか、「旧外交」「新外交」という視点をもったことが、
私には最近でした。
※ここでも道草 「大人のための昭和史入門」/第一次世界大戦は「国家総力戦」だった。しかし日本は・・・(2020年6月30日投稿)
以上の引用した文章は「プロローグ」に書かれていたものでした。
著者は、「あとがき」でも「歴史総合」について書いています。
この本を書いた契機のひとつとして。
もう一つの契機として、2006年秋に、高校の必修科目である
世界史を他の科目で代替する「世界史未履修問題」の発覚があった。
この問題の背景には、憶える用語の多い世界史を生徒たちが敬遠す
る傾向があると知り、日本学術会議などの場で、他の先生方ととも
に、解決策として、世界史と日本史を統合する新科目の設定を提案
した。また、高校と大学で歴史教育に携わる先生方とともに、20
15年に高大連携歴史教育研究会の結成に関わり、新科目の在り方
などを検討してきた。幸い、2022年から必修として近現代史の
世界史と日本史を統合した新科目「歴史総合」が必修科目として開
設されることとなり、新科目に向けた議論が一層、加速してきた。
世界史と日本史との統合には色々困難な面があるが、両大戦間期も
その代表例であり、私としては、歴史教育の面からも本書を書く必
要があると感じた。
(308~309p)
「世界史未履修問題」について調べ、次の12pの論文を読みました。
なぜ「世界史」に限らず地理歴史が
未履修になったのか考えています。
受験科目にないからという理由だけでなく、
「世界史」の教える内容に魅力がないからではないか。
学ぶ意欲の出る内容にすべきと書いています。
2022年の「歴史総合」に期待したいです。
学生の学ぶ意欲にも配慮した新科目と予想されます。
教科書を手に入れてその工夫を見てみたいし、
両大戦間期の記述がどうなったのか見てみたいです。
以前勉強したこととつながります。
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