「横道世之介」① 映像では表しにくい文体
今日は令和2年3月31日。
令和元年度の最終日。
令和元年度はすごい年でした。
6月5日から休みだして、
復職プログラムで復帰したのが3月2日。
よく休みました。
今日は午前中出勤。
新年度に備えて気づいたことを少し準備。
教材研究で動画を1本、教室で視聴。
「NHKスペシャル 食の起源 ③ 脂」
魚などに含まれるオメガ3脂肪酸は積極的に取り、
オメガ6脂肪酸を取り過ぎないようにしようと思いました。
午後は自宅で読書。今年度最後の読破です。☟
「横道世之介」(吉田修一著/文春文庫)
録画してあった映画「横道世之介」も見始めました。
夕方は、整体に行って、腰痛予防の体操を新しく教えてもらいました。
映画「横道世之介」は今晩、そして明朝に分けてみる予定です。
映画は面白そうですが、独特の楽しい文体は、
映像では表現できないぞと思いました。
どんな文体か?
さっそく引用していきたいです。
読んでいて、声を出して笑ってしまう体験は、いつ以来だろう?
長崎県出身で、東京の大学に進学した世之介。
上京して、無事にマンションに着いたことを
家に電話した件(くだり)。
(父)「そうか、それより、お母さんが今朝からずっと泣き通しで
・・・・」
(世之介)「泣き通し?なんで?」
「さぁ、女親にしか、この気持ちはわからんらしい」
面倒臭そうな父親が受話器の向こうで母親を呼ぶ。そばにいたよ
うで、今にも泣き出しそうな声で母親が出る。
たかが息子を東京に出すくらいで、なんでこう悲しむのかわから
ない。
なんとなく気が重くなった世之介は、「あのさ、目覚ましの乾電
池って、どれくらい持つのかな?」と訊いた。唐突な息子の質問に
母親も泣くタイミングを逸したらしい。
それでも母親は、難産だったらしいお産の話から始め、隙あらば
泣こうとする。元々、女優気質のある母親である。親戚の葬式とか、
息子の旅立ちとか、こういう一世一代の見せ場を逃すわけがない。
親戚の葬式などは、あまりにも大袈裟になくものだから、必ず母の
元に葬儀場の係員が請求書を持ってくる。
(13p)
こんな感じで、会話でないところが面白い文体なので、
映像で表わすのが難しいと思います。
「世之介」という名前に関する文章も引用します。
やはり「好色一代男」の主人公名でした。
※参考:ここでも道草 「近松よろず始末処」① 「好色一代男」の主人公の名前(2020年3月20日投稿)
ちなみに世之介が自分の名前の由来を知ったのは中学校1年の国
語の時間であった。もちろん小学校の先生たちも井原西鶴の「好色
一代男」の主人公と同じであることは知っていたであろうが、短パ
ン姿の少年に教えてよいものか迷ったに違いない。
中学の国語教師が定年退職間近の「稲爺(いなじい)」と呼ばれ
る助平そうな爺さんだった。初めての授業の時、出欠確認で「横道
世之介!」と呼ばれて返事をすると、「ほぅ。大した名前をつけて
もらったなぁ」とニヤニヤ笑い、親に由来を聞いたことがあるかと
訊かれた。
「はい。昔の小説の主人公で理想の生き方を追い求めた男の名前
からです」
世之介が父親に教わった通りにはきはきと答えた。はきはきとし
た答え方が面白かったのか、興に乗った稲爺が、年頃の少年少女を
前にして、「理想の生き方を追い求めた」という男の話をたっぷり
1時間もかけてしてくれたのだ。
遊女、遊郭の説明が始まった辺りで、クラス委員の女子が抗議し、
男子は喝采。それでも稲爺の話は止まらない。床(とこ)の責め道
具を好色丸(よしいろまる)に積み込む終盤近くなると、あまりの
破廉恥さに隣の女の子は啜(すす)り泣く。世之介はどうしていい
のか分からない。
やっと終業のチャイムが鳴って、稲爺が満足げに出ていった。途
端に教室は騒然となり、女子は親に報告すると声を上げるし、「そ
んな立派なもんなら、一度見せてみろ」と世之介は他の男子たちか
らズボンを脱がされそうになっていた。
(17p)
「定年退職間近」が引っかかりました。
いつの間にか消えていくような教師にはなりたくないですね。
稲爺のような下ネタ話はしないと思いますが、
私らしく、何か目立って終えたいと思います。
社会科教師ですが、井原西鶴は教えても、「好色一代男」の内容は、
題名から想像するのみで、実際はわかっていません。
真面目に・・・読んでみるかな。これも教材研究。
(知るとしゃべりたくなるかもしれません)
つづく
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