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2020年3月 8日 (日)

「人はなぜ・・・許せないのか」⑤ フランスと日本の議論の違い

今日は令和2年3月8日。

  

昨日の記事に引き続いて

 「人は、なぜ他人を許せないのか?」(中野信子著/

岩波新書)より引用していきます。

    

著者の中野信子さんは、フランスで学んでいました。

  

日本に戻ってきて考えるのは、日本で行われている議論のほと

んどが、フランスで私が見てきた議論とは異質のものだという

ことです。

(80p)

 

どう違うか?

  

あるテーマAに対して、Xという主張、Yという主張を持って

いる人がいるとします。

フランスであれば、一方が「Aについて話をしたい。私はXだ

と考える。その理由はかくかくしかじかだが、あなたはどうか

な?」と語り始めたら、もう一方は、「私はあなたと考え方が

違う。私はYだと考える。その意味するところはかくかくしか

じかで・・・」と応じます。そこからお互いが、より議論を掘

り下げていき、この部分はどう考えるか?とか、この部分は賛

成だがこの部分は理由になっていないのではないか?あるいは

この部分まではお互いに共有できる、などといった具合に発展

していきます。人と人が合うたび、大きなテーマが世間の話題

になるたびに毎日こんな調子で、はたから見ていると、みんな

とても楽しそうに意見を交わしていました。

(80p)

  

  

そして日本人の場合は・・・

  

同じように、あるテーマAに対して、Xという主張、Yという

主張を持っている人がいるとすると、だいたいこんな具合に展

開していくのです。

「Aについて、あなたはYだと主張しているが、その考え方は

いかがなものか?」「いやいや、Xなどと言い張っているあな

たこそ失礼千万だ!」「なんだその態度は!生意気な。人の顔

をつぶすのか?」「大した勉強もしていないくせに、何を熱く

なっているの。どちらもみっともないよ」

これもこれで、はたから見ている限りでは面白そうですが、日

本の議論は何だか様式美的で、深堀せずにステートメント(意

見)を争わせ、最終的には本質の探究ではなくて、喧嘩コント

のような戦いになってしまうのです。もっとも、これをプロレ

ス遊びのように捉えるのであればエンターテインメントとして

成立するのかもしれませんが、正直議論と呼べるのか、私には

疑問です。

(81~82p)

 

日本では主張と人格とが分離されず、容易に人格攻撃へとつな

がります。

(83p)  

  

議論の違いについてもう少し深く考えてみると、フランスでは、

議論のできる人が一人前であり、議論のできない人は未成熟で

ありバカにされるということになると言えるでしょう。

(83p)  

  

 

なぜこのような違いが生じるのか?

  

閉ざされていて自然環境の厳しかった島国の日本と、さまざま

な人種と文明の交差点として、多様性と議論が当たり前だった

ヨーロッパ大陸との違いかもしれません。彼ら(フランス人)

にとって意見の対立は、互いに意見を持つ人間同士として対等

だからこそ、立ちのぼってくる現象として捉えられているので

す。

ちがっていることは当然で、違いがどうあれ、その理由や背景

を議論しながら理解を深めていく社会と、同質なのが当たり前

で、違っているものがあれば排除しようとする力の働く社会。

そのどちらが良いのかは、環境・地理・社会条件により変化し

ます。個人的には、フランスにいたときの方が疲れはするけれ

ど、言いたいことを我慢しなくてよいのは楽だったという印象

があります。どのような考え方をもっていても、どんなスタイ

ル、どんな容姿でいても、「私はこうである」という考えさえ

説明できれば平然としていても誰も文句を言いませんし、許容

されないということは、そう多くはありません。

(86p)

    

   

日本もだんだんフランスタイプの議論を

するようになっていくのではないかと思います。

1997年に「みんな一緒」という時代が終わり、

「それぞれ一人一人」の時代が始まったという

藤原和博さんの説が思い浮かびました。

ここでも道草 「本を読む人だけ」① 「それぞれ一人一人」という時代に変わった(2020年1月7日投稿)

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