「脳科学者の母が、認知症になる」⑥ 介護という状況自体が権力関係を作り出す
今日は令和2年1月28日。
前記事に引き続き、
「脳科学者の母が、認知症になる」
(恩蔵絢子著/河出書房新社)より引用していきます。
役割については、ミルグラム実験と呼ばれるもので、強制され
たり、あまりにもこだわったりすると、非道な結果を引き起こ
すことがあると示されている。その現実的な例として、第二次
世界大戦中、アウシュビッツ強制収容所の所長を務めた、アド
ルフ・アイヒマンがいる。彼は、権力者からその役割を任され、
数百万のユダヤ人を殺害してなお、着実に任務を果たしたこと
を誇った。彼がもともと極悪な人物であったのかといえば、そ
うではなく、ごく普通の、凡庸な人物だった、と哲学者ハンナ・
アーレントが分析している。普通の人物でも、自分に与えられ
た「役割」を背負いすぎて、本当に非道なところまで行ってし
まうことがあるのである。
(136p)
これが認知症の介護とどのように関係するかというのが、
下の文章です。
「できる人」「できない人」、「面倒を見る人」「見られる人」
という意味で、介護という状況自体が権力関係を作り出す可能性
がある。「介護者」「被介護者」という役割を担ううち、介護者
には「やってあげている」という意識が、被介護者には「やって
もらっている」という意識が、いつのまにか作り上げられて、「
私がやってあげているのだから逆らうな」「私が悪いのだから逆
らってはいけない」となってしまうことがあるかもしれない。
これは、病気になってしまった人の主体性の感覚、自由を奪うこ
とである。そして、介護者の自由も奪うことである。「なんで私
がやってあげなければならないの?私には私の生活があるべきな
のに、あなたのせいで奪われている」という気持ちになるからで
ある。
だから、互いを守るために、きっと何もかも大まじめに「私がや
ってあげなくては」と引き受けようとしない方がいいのである。
互いに一生懸命になってしまうことによる害というものもあるの
だ。負担にならないあ範囲で自分にできることをすればいい。そ
れを強調しておきたい。
(136~137p)
陥りやすいことだと思います。
私自身もその危険もあるけど、他の人たちにも声かけをしていきたい。
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