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2019年10月13日 (日)

「朝焼けのピンネシリ」/カラスのひなをとりに登る辰太郎

  

今日は令和元年10月13日。

  

本「朝焼けのピンネシリ~新十津川物語5~

(川村たかし著/偕成社)読破。

印象に残った文章を書き留めます。

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主人公、中崎フキの息子、6年生の辰太郎が、

神社にあるヤチダモの木に登って、

カラスの巣の中にいるひなを取ろうとするシーン。

  

「カラスが巣をかけているんだわ。」

「なんじゃい、カラスか。カラスくらいうじゃうじゃいるべ。」

「ところが巣の中には、ひながいるぞ。何羽おるじゃろかの。」

なるほど、親鳥がえさをはこんできては、

あわただしくとびたっていった。

「ひなのうちからそだてたら、カラスでも人になつくっての。

人間のことばもしゃべるって。」

辰太郎は声をひそめた。

「あいつをとれんかのら。」

「よーし、見にいくべっちゃ。」

(30p)

  

飼うためにひなを取りに、木に登る辰太郎。

   

辰太郎は手につばをつけた。

ななめにかたむいた幹をふみつけるように両足をかけ、

そのままこいだ。

からだじゅうが、やすりでこすられたように熱かった。

「すべるなよ。気ィつけろ。もうちょっとで枝じゃい。」

伊佐吉のひそめた声が幹をつたってのぼってくる。

「心配すな。」

ほおをこすりつけんがら、彼は息をととのえる。

それからぐっとこぐ。枝に手がかかった。

からだをひきずりあげた。

ちらっと足もとを見ると、

ふたりは魚のような顔を上むけていた。

 

だしぬけに、ひゅっとなにかが目のまえをかすめた。

空気が音立ててわれた。

親鳥がおそいかかってきたのだ。

二どめは頭すれすれに羽根を打つ音がして、

目のまえを巨大なかたまりがひるがえった。

からだじゅうのあせがさーっとひいていく。

二羽のハシブトガラスが、かわるがわる舞いおりてくる。

「お~い、なんとかしてくれ。カラスをなんとかしてくれ。」

「よしきた。」

  

もう社務所のことも、巡査のこともいっておれなかった。

このへんのカラスは、小さな子どもの頭くらい穴をあけるほどの

するどいくちばしを持っている。

ひなを守ろうとして必死になれば、

なにをするかわからなかった。

下のふたりが投げあげる小石が、

こつんと幹にあたる音がした。

辰太郎はまたよじのぼる。

 

二羽のカラスはなんどもとびかかってきた。

しまいには羽根のさきがからだをたたいた。

辰太郎は半分泣いていた。

泣きながらも二番めの枝をよじのぼる。

枝のさきに巣があった。

社務所の屋根が見える。

とうとう巣にたどりついたとき、なみだはひっこんでいた。

ひなは三羽だった。

彼は三羽ともふところにねじこむと、そっとひきかえすことにした。

おりるほうがこわかった。

(32~33p)

  

私も以前、勤務校でカラスの巣を観察したことがありました。

ここでも道草 カラスの産卵があるかも/カラスの巣の観察スタート(2017年2月21日投稿)

カラスのひなを飼って、言葉をしゃべらせたいと考えて、

木に登って取ってきてしまう。

すごい行動力です。

今どきの子ではやらないでしょうね。

  

3人はこの後、校長先生と神主に叱られて、

再び木に登って、ひなを巣に返しています。

楽しいエピソードでした。

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 (35p)絵:鴇田幹

 

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