「朝焼けのピンネシリ」/カラスのひなをとりに登る辰太郎
今日は令和元年10月13日。
本「朝焼けのピンネシリ~新十津川物語5~」
(川村たかし著/偕成社)読破。
印象に残った文章を書き留めます。
主人公、中崎フキの息子、6年生の辰太郎が、
神社にあるヤチダモの木に登って、
カラスの巣の中にいるひなを取ろうとするシーン。
「カラスが巣をかけているんだわ。」
「なんじゃい、カラスか。カラスくらいうじゃうじゃいるべ。」
「ところが巣の中には、ひながいるぞ。何羽おるじゃろかの。」
なるほど、親鳥がえさをはこんできては、
あわただしくとびたっていった。
「ひなのうちからそだてたら、カラスでも人になつくっての。
人間のことばもしゃべるって。」
辰太郎は声をひそめた。
「あいつをとれんかのら。」
「よーし、見にいくべっちゃ。」
(30p)
飼うためにひなを取りに、木に登る辰太郎。
辰太郎は手につばをつけた。
ななめにかたむいた幹をふみつけるように両足をかけ、
そのままこいだ。
からだじゅうが、やすりでこすられたように熱かった。
「すべるなよ。気ィつけろ。もうちょっとで枝じゃい。」
伊佐吉のひそめた声が幹をつたってのぼってくる。
「心配すな。」
ほおをこすりつけんがら、彼は息をととのえる。
それからぐっとこぐ。枝に手がかかった。
からだをひきずりあげた。
ちらっと足もとを見ると、
ふたりは魚のような顔を上むけていた。
だしぬけに、ひゅっとなにかが目のまえをかすめた。
空気が音立ててわれた。
親鳥がおそいかかってきたのだ。
二どめは頭すれすれに羽根を打つ音がして、
目のまえを巨大なかたまりがひるがえった。
からだじゅうのあせがさーっとひいていく。
二羽のハシブトガラスが、かわるがわる舞いおりてくる。
「お~い、なんとかしてくれ。カラスをなんとかしてくれ。」
「よしきた。」
もう社務所のことも、巡査のこともいっておれなかった。
このへんのカラスは、小さな子どもの頭くらい穴をあけるほどの
するどいくちばしを持っている。
ひなを守ろうとして必死になれば、
なにをするかわからなかった。
下のふたりが投げあげる小石が、
こつんと幹にあたる音がした。
辰太郎はまたよじのぼる。
二羽のカラスはなんどもとびかかってきた。
しまいには羽根のさきがからだをたたいた。
辰太郎は半分泣いていた。
泣きながらも二番めの枝をよじのぼる。
枝のさきに巣があった。
社務所の屋根が見える。
とうとう巣にたどりついたとき、なみだはひっこんでいた。
ひなは三羽だった。
彼は三羽ともふところにねじこむと、そっとひきかえすことにした。
おりるほうがこわかった。
(32~33p)
私も以前、勤務校でカラスの巣を観察したことがありました。
※ここでも道草 カラスの産卵があるかも/カラスの巣の観察スタート(2017年2月21日投稿)
カラスのひなを飼って、言葉をしゃべらせたいと考えて、
木に登って取ってきてしまう。
すごい行動力です。
今どきの子ではやらないでしょうね。
3人はこの後、校長先生と神主に叱られて、
再び木に登って、ひなを巣に返しています。
楽しいエピソードでした。
(35p)絵:鴇田幹
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