井上智さんの本より/「子どもたちの進む先は、こんなに柔軟なんだ!」
今日は令和元年9月7日。
夏に井上賞子先生の話を聞きました。
※ここでも道草 20190809報告1 これぞ”特別支援” 井上賞子先生(2019年8月11日投稿)
井上賞子先生の旦那さんである
井上智さんの本を読みました。
ディスレクシアである井上智さんが、
50代で大学に挑戦したお話が中心の本です。
引用します。
大阪芸術大学短期大学部通信教育部の特修生に
出願するにあたり、次のことを事務局に申し込みました。
・自分にはディスレクシアという障害があり、
紙媒体での読み書きがとても厳しいということ。
・障害に関しては、診断書の提出も可能だということ。
・しかし、理解の力には問題はなく、ICTを活用することで
学習は可能であるということ。
・具体的には、レポートやテストにおいて、パソコンの使用を
許可してほしいこと。
・スクーリングの際は、板書の撮影や携帯へのメモを
認めてほしいということ。
(42p)
井上さんは、電話でお願いしたら、「学内で検討してから回答」
ということになります。2日後。
かかってきた!!!
「先日、お問い合わせいただいた件ですが・・・」に続いて、
「本学で、LDの方の支援を行った前例はありません」ときた。
やっぱりな。前例がないことは、ダメだろうな。
絶望的な気持ちになったところに間髪を入れず、
「前例はありませんが、学内で検討した結果、
ICT機器の活用で学べるというのであれば、
使用を許可します。」と言われた。
そのときの気持ちを、なんと言ったらいいんだろう。
うまくお礼が言えたのかさえ、定かではない。
そのくらい興奮した。
ただただ、頭をぺこぺこ下げていたことだけは覚えている。
「ICT機器の活用で学べるというのであれば、
使用を許可します」そうだよな。当たり前だよな。
オレにとってはメガネなんだ。
これがなければ学べないんだ。
本当は許しを請う種類のものではないはずなんだ。
でも、この回答がどれだけ貴重なものかも自分は知っている。
啓発活動をしていた日々、出会った子どもたちも
保護者の人も、口をそろえて言っていたのが、
「前例がないと許可してもらえない」だった。
時には現場の先生でさえ、「前例がないと学校の許可が出ない」
と頭を抱えていた。
あのさ、どっちかというと、「前例がない」ことの方が、
大問題なんだと思う。
それって、オレみたいな子をほっておいたってことやろ?
「これがあればできる」って分かっているのに、
取り上げてたってことやろ?
もちろん、それが分からなかった時代も、
それができる機器がなかった時代もあったことは分かってる。
でも、今は違う。
機器もある、「これがあれば学べる」と分かっている
ケースだってある。
それなのに「前例がないから」っていう理由で断られるって
本当におかしなことだと思う。
おかしいことのはずなのに、あまりにもそっちが多数派だから、
きっと今回も「前例がない」と断られるのが、怖かった。
だから、本当に「ICT機器の活用で学べるというのであれば、
使用を許可します」の一言に心躍った!
自分の選んだ大学を、入る前から誇りに思った!
子どもたちの進む先は、こんなに柔軟なんだ!
それがうれしくて、うれしくて、そこにたどり着く前に
力尽きてしまう子どもたちがたくさんいる現場が悲しくて・・・・。
たくさんの人に知ってほしいと思った。
大学は、1人ひとりの学び方を、
ちゃんと受け入れてくれる。あきらめないで。
そして、あきらめさせないで。
「前例」でなく、その子とその子の未来を見てほしい。
心からそう願わずにはいられなかった。
(43~45p)
井上賞子先生がセミナーの中で「子どもたちの進む先は、
こんなに柔軟なんだ!」という言葉を使っていました。
この本のここにそのもとの言葉がありました。
言葉というより叫びかな。
前例がないからと言ってあきらめることなく、
あるいはあきらめさせることなく、とにかく動こう。
そう思わせてくれる井上智さんの体験であったし、
いい叫びだと思い、しっかり引用しました。
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