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2018年6月10日 (日)

「AI vs 教科書が読めない子どもたち」からの引用3/埼玉県戸田市の先生たちの実践

 

今日は6月10日。

  

前投稿に引き続き、「AI vs 教科書が読めない子どもたち

(新井紀子著/東洋経済新聞社)からの引用です。

 

ここまで読むと「読解力を上げる方法なんてないんだ」

と思うかもしれません。いいえ、そんなことはないのです。

埼玉県戸田市では2016年以降、小学6年生から中学3年生まで

全員がRSTを受検しているとお伝えしました。

それだけではないのです。

埼玉県では(まだ一部ですが)先生たちもRSTを受検します。

なぜか。RSTでは問題を使いまわすので、

例題以外の問題を公開しません。

ですから、先生たちは自分でRSTを受検しないと、

どんな問題が出題され、どうして生徒たちがつまずいたのか、

わからないのです。

先生が自ら受検するのは勇気が要るに違いありません。

「もし、自分も解けなかったらどうしょう 」

と心配になるでしょうから。

実際に受検した先生方からは次のような感想をいただきました。

「実際にRSTをしてみるまで,教科書の文章を読むことが

こんなに難しいこととは思いませんでした。

解説を聞いてみるときちんと読んでいれば正解できたなと

思う問題ばかりで普段いかにきちんと読んでいないかを痛感しました」

「日ごろいかに自分があいまいに文を読んでいるかを

理解することができました。RST はとても興味深く、

すべての教科において『教科書を読む』ことの大切さ、

そしてそれに『国語』という教科が

いかに深く関わりを持っているのかの自覚を持つことができました」

特に、中学·高校の先生方は、教科担任制ですから

自分の科目以外の教科書がどのように書かれているか、

ほとんど読んだことがありません。

読みなれていない分野の教科書から出題される問題に取り組むことで、

生徒たちが「読み」のどこでつまずいているのか

実感できたのでしょう。

戸田市ではさらに、学校内で先生たちが放課後集まって、

RSTの問題を自力で作ったり,どうすれば読めるようになるのかの

授業の検討を毎週のように重ねたりしているそうです。

その活動をしている先生に「大変でしょう?」と尋ねると、

「いいえ、楽しいです」

という返事が返ってきました。

「元々、子どもたちが好きで、教えるのが好きで教員になっているので。

子どもたちがわかっている,という手応えを感じられると嬉しいんです」

なるほど。

  

  

学校というところは,本当に大変な職場です。

どこかの学校でいじめなどのす不祥事があるたびに、

全国一斉に「アンケート調査をしろ」というようなお達しが下ります。

調査調査の明け暮れです。

中教審の委員の思いつきとしか思えない、

プログラミング教育とかアクティブラーニングとか

キャリア教育とか持続可能性社会教育とかを突っ込まれ、

さらには小学生から英語教育。

いい加減にしてくれ! と多くの先生たちは内心、

思っていたのかもしれません。

子どもが好きで教えるのが好きで教員になった彼らです。

「教えたら、わかる」という手応えこそが

最大のモチベーションになるのでしょう。

(225~226p)  

  

その通り!

  

  

そういう中で、埼玉県が独自に行っている

 

「埼玉県学力学習状況調査」が行われました。

そこで、驚くべきことが起こったのです。

それまで戸田市は埼玉県全体の中で、

ずっと中くらいの成績でした。

それが突如として,中学校は1位、小学校は2位で、

総合1位の成績に急上昇したのです。

1年だけの結果からは何とも言えませんし、

因果関係の検証も必要でしょう。

でも、光明が見えてきた気がします。

科学的なデータに基づいて、先生たちが

「きちんと教科書が読めるためにはどうしたらよいか」を研究し、

実践する、そういう地味でベーシックなことが、

いかに重要かということを示唆する結果ではないでしょうか。

(226p)

  

こういう実践例が、明日からの・・・いやいや今晩からの

行動力につながります。

 

教科書を読めるようにする教育を

全国2万5000人を対象に実施した

読解力調査でわかったことをまとめてみます。

・中学校を卒業する段階で、

 約3割が(内容理解を伴わない)表層的な読解もできない

・学力中位の高校でも、半数以上が内容理解を要する読解はできない

・進学率100%の進学校でも、内容理解を要する読解問題の正答率は

 50 %強程度である。

・読解能力値と進学できる高校の偏差値との相関は極めて高い

・読解能力値は中学生の間は平均的には向上する

・読解能力値は高校では向上していない

・読解能力値と家庭の経済状況には負の相関がある

・通塾の有無と読解能力値は無関係

・読書の好き嫌い、科目の得意不得意,

 1日のスマートフォンの利用時間や学習時間などの自己申告結果と

 基礎的読解力には相関はない

 

高校生の半数以上が、教科書の記述の意味が理解できていません。

これでは、8割の高校生が東ロボくんに敗れたこともうなずけます。

記憶力(正確には記録カですが)や計算力、そして統計に基づく

おおまかな判断力は,東ロボくんは多くの人より遥かに優れています。

このような状況の中で, AIが今ある仕事の半分を代替する時代が

間近に迫っているのです。.れが、何を意味するのか、

社会全体で真摯に考えないと大変なことになります。

(227~228p)

 

  


まだつづく

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