「昭和十七年の夏 幻の甲子園 戦時下の球児たち~」読破
今日は8月4日。
今朝、「幻の甲子園」を読破。
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私は教師だけど、この作者がやられていることにはすごく興味があります。
ある出来事について、関係者に話を聞いて、
実際どんな事があったのか出来事を構築していく。
素晴らしい仕事だと思います。
教師をやりながらでも、こんな仕事をやってみたいなと思いました。
昭和17年の8月に行われた高校野球甲子園大会。
戦争時だったために昭和16年は中止になっていた大会が復活したかに見えました。
しかし主催者は、それまでの大阪朝日新聞社ではなく文部省でした。
高校野球は、戦意高揚のために利用されようとしたのです。
センターのスコアーボードには、
「勝って兜の緒を締めよ」「戦い抜かう大東亜戦」と大きく掲げられていました
でも出場した高校生は、他の甲子園大会に出場した選手のように、
甲子園を目指して猛烈な練習をして甲子園出場を果たし、
精一杯戦います。それは戦時中も、今も変わりません。
そんないつもと変わらない高校生の戦いっぷりを著者は丹念に書いています。
そして、戦時中の高校生だから体験せざるをえなかったことも書いています。
70年前のこと。
当時の高校生は80歳後半。
そういう人たちから聴いたことが随時織り込まれて話は進んでいきます。
大会で優勝したのは徳島商業。
しかし、徳島県が初優勝を果たしたのは、
昭和57年(1982年)の池田高校となっています。
主催者が異なる昭和17年の甲子園大会は別大会扱いなのです。
準優勝の平安中学の富樫淳が1回戦で達成したノーヒットノーランも、
大会史には存在しません。
昭和17年の大会は「幻の甲子園」と呼ばれています。
出場した選手や、その時代に生きて、選手を応援した人たちにとっては
決して「幻の甲子園」ではなかったはずです。
でも「幻」扱いをしたら、それは選手や応援した人を否定するように思えます。
この本を読んで、私にとって「幻の甲子園」は、もう幻ではありません。
輪郭のはっきりした現実の甲子園になりました。
もしかしたら埋もれていってしまう歴史が、
生存者がギリギリ残っていた今、浮かび上がってきたイメージです。
8月7日、第92回全国高校野球選手権大会開会式のある日の晩放映される
「幻の甲子園」に注目です。絶対見逃さない。
午後8時~8時45分。45分間でどう表現するのか楽しみ。
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