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2024年8月23日 (金)

介護保険の改定がどうなった?③ 福祉用具の買い取り? 在宅ひとり死について

  

今日は令和6年8月23日。

  

前記事に続いて、

「史上最悪の介護保険改定?!」(上野千鶴子・樋口恵子編/

岩波ブックレット)のことを書いていきます。

  

本年度からの介護保険制度は、数年前に改定案が審議されていました。

その改定案がひどいことを、上野千鶴子さんは訴えます。

そんな改定案のひどさを書いたのが、この本です。

実際に、改定案はどうなったのか、

上野千鶴子さんを知りたいがために読んだ本ですが、

記事の内容は脱線して、改訂案がどうなったのかを見ています。

  

上野さんは、改定案の特にひどいものを4点挙げました。

そのうち3点については、見送られました。

廃案になったわけではなくて、見送りです。

3年後の2027年度に向けて、審議が行われます。

  

それでは4点のうち、最後の1点。

  

・福祉用具の一部をレンタルから買い取りに

   

これについては、なぜ反対なのか、私にはピンときませんでした。

その点について、福祉用具のプロ、高齢生活研究所所長、排泄用具の

情報館「むつき庵」代表の浜田きよ子さんが、本書で書いているので

引用していきます。

  

パソコンを例に、福祉用具について考えてみます。私がパソコンを使

い始めたのは一九九四年頃です。当時はパソコンなしでもやっていけ

ると思っていましたが、いまではなくてはならないものになっていま

す。福祉用具もこれと同じです。見ず知らずの用具であるために、

「あんなの「不要だ」という人も多いけれど、試しに使ってみると、

そのよさを知ってもらえる。つまり、見ず知らずの道具の便利さを知

るには、道具に出会い、なじんでいく必要があります。一方、使い方、

選び方を間違えると、事故につながりかねないので注意を要します。

人間の手によるサービスは見えやすく、わかりやすいのですが、人が

いないと成立しません。これに対し、福祉用具は存在するだけで暮ら

しが変わります。ベッドから起き上がれない人が、その人に合った手

すりや介助バーなどを使えば、起きて立ち上がることができるように

なることは多々あります。福祉用具は二四時間そばにあって、暮らし

を支えるものです。

また、杖一本で暮らしが変わると言っても過言ではありません。ただ、

長さ、握りの形状などがその人に合っていなければ上手く使えないし、

杖の先ゴムの摩耗は転倒につながりかねません。四点支持杖、ロフス

トランドクラッチなどは介護保険でレンタルになっていますが、T字杖

は自費購入です。比較的安価な福祉用具ですが、こういう杖もきちん

と選べたらいいと思います。

日々心身の状態は変わっていきます。変化に応じて適切な道具を使っ

てこそ役に立つのですが、自分で購入するとなれば、何を買っていい

のかわからない、あるいはお金がかかるからいま使っている用具で我

慢する、といったことが生じてくるでしょう。 必要なのは杖ではなく、

歩行補助車かもしれません。

(41〜42p)  

  

さらにもう少し引用します。

  

使う人、介護者、環境のことも考えて選ぶことで、福祉用具は役に立

つ。そうした観点で選ぶことで、その方の生活を支えることになる。

自分で簡単に選んでいいものではないのです。

福祉用具がレンタルから外されると、購入するにしても判断の基準も

わからず、多少知っている人に聞いて「これで間に合うのでは?」と

言われたものを買ってしまったり、安価なものを買ってしまったりす

る懸念があります。生活が楽ではない方が自己負担で杖を買うとなる

と、安さで選んでしまうかもしれません。実際に、自分で安い杖を買

って、柄が折れてしまったという例もありました。それだけでなく、

転倒して、骨折、入院、 自宅に戻った時には、介護度が上がっという

方もいます。杖は長さ、形状、ゴムチップ、すべてその人に合わせる

必要があります。

ずさんな福祉用具の選択は、転倒など、事故につながりかねません。

(42〜43p)

  

福祉用具に精通した方だと思います。

福祉用具はその人に適したものでなくてはならない。適したものを使

用することで、安心して使えて、さらには要介護度を下げる可能性も

出てくる。そのためには、レンタルにして、使ってみて、

適していないなら交換していくのがいいという考えなのでしょう。

私も、父親の介護で、福祉用具のトーカイさんに、

とてもお世話になりました。

必要となると、すぐに飛んできて準備してくれた思い出があります。

我が家には、スロープ、もたれる柱や取っ手、介護ベットなどが、

たくさん持ち込まれました。

どこに柱や取っ手をつけるのかは、

トーカイさんが相談に乗ってくれました。

トイレのもたれる棒は、相談して取り替えたりしました。

レンタルなので、行動が速かったのでしょう。

買い取りになったら、もう少し慎重になっていたかもしれません。

買ったはいいけど、使ってみたらうまくいかなくても、

また買うのは負担なので、我慢するかと思ったかもしれません。

そして父親が亡くなると、

トーカイさんがやってきて全て持ち去りました。

我が家から介護色はきれいさっぱりなくなりました。

自分で処分するとなるとたいへんだったことでしょう。

  

東京新聞 財務省、貸与やめ介護費削減狙う 杖や歩行器「購入」案 ケアマネら反対「自立支援に逆行」

2022年7月の記事です。

この記事では、その他の反対理由が書いてありました。

  

介護保険で貸与(レンタル)される杖(つえ)や歩行器、手すりなど

の福祉用具を巡り、財務省の審議会が利用者による「購入」を提案し、

介護現場が猛反発している。貸与ではケアマネジャーらが定期訪問し、

高齢者の状態変化に応じて用具の調整・交換などを行う。財務省側の

狙いは、ケアマネジメント費用など介護給付費の削減。ケアマネらは

「購入では訪問しなくなり、状態悪化を見逃す可能性がある」などと

語り、自立支援に逆行すると訴える。

  

レンタルだと、定期的なケアマネージャーの訪問は義務であり、

その度に福祉用具が最適なのか検討します。

しかし、買い取りだと、ケアマネージャーの訪問は義務でなくなり、

おそらく訪問の費用は出ないのでしょう。

そうなれば介護の給付費は減るのです。

財務省の給付の削減のための案なのでしょう。

  

以上のことを踏まえて、改定案がどうなったのかを

調べました。

 

安寿 福祉用具の選択制導入 2024年度介護保険制度改定を解説します

このサイトが勉強になります。

一部、レンタルと買い取りの選択制になったようです。

引用します。

  

今回、貸与と販売の選択制を導入される福祉用具は、もともと貸与の

対象品であった固定用スロープ(可搬型を除く)、歩行器(歩行車を

除く)、単点杖(松葉づえを除く)、及び多点杖で、比較的低価格で

購入することで利用者の負担が軽減できるものに限られます。具体的

な選択制導入のプロセスでは、福祉用具専門相談員や介護支援専門員

が利用者に十分な説明を行い、必要な情報を提供します。医師や専門

職の意見、利用者の身体状況を踏まえた上で、最終的な提案が行われ

ます。

Img_7187

一部、買い取りがOKになったようです。

ほとんどがレンタルOKなので、改定案は一部だけの改定に

なったようです。

  

したがって、上野千鶴子さんの抗議は、うまく行ったようです。

そこで上野千鶴子さんは言います。

  

私たちの抗議アクションは効果をもたらした。上記の「改悪」案のほ

とんどすべてが「先送り」になったからだ。だが油断はできない。

「先送り」ということは、そのうちまた出てくるということだ。これ

からの三年間は、国政選挙のない政権与党にとっては「黄金の三年間」

私たち市民にとっては「暗黒の三年間」、政府はやりたい放題をする

だろう。放っておいてはいけない。

本書を読んで、そんなことが起きていたの!!とびっくりしたあなた。

無知は罪です。でも、この本を手にとったことで、あなたは私たちの

仲間になる。いつも言うことだが、権利と制度は黙って向こうから歩

いてこない。 要求しないと得られない。介護保険だってがんばって手

に入れたものだ。しかも様々にして要求したのとはちがうものが差し

出される。手に入れたと思ったものさえ知らないうちに足元から掘り

崩されていく。監視し、参加し、闘い続けなければ、今あるものを守

ることすらできない。

  

闘う気持ち満々です。

ここまで読んで、なぜ上野千鶴子さんが、

保守系政治系YouTuberにボロボロ言われるのか不明です。

でも最後に言っていることに、ヒントがあるようです。

引用します。

  

最後に証言しておきたいことがある。 介護保険二三年の歴史は一四

兆円規模の準市場を生み出し、人材と事業を育てた。その過程で現

場は確実に進化した。 介護保険のない時代には可能でなかった

「在宅ひとり死」も可能になった。日本の高齢者介護のケアの質は、

世界に誇るレベルに達している。現場を担うひとたちが、誇りを持

って働きつづけることができるように、そして高齢者が安心して老

後を過ごせるように、この宝を守ってほしい。

  

「在宅ひとり死」?

この本も読むといいのですが、動画の本紹介から。


YouTube: 『在宅ひとり死のススメ』上野千鶴子著 ブックレビュー とくし丸、ひとり死のお役に立つ⁉️【みのるチャンネル】

  

この動画によると、家で1人で静かに死にたいと

思っている人が多い。

でも「孤独死」と言われてマイナスに見られるし、

警察沙汰になることもある。

でも、介護保険制度のおかげで、「在宅ひとり死」が

できる世の中になってきたとのこと。

ただ介護保険は3年ごとに悪い方向に改定しようとする

動きがあるので、気をつけないといけない。

 

そんな内容の本だそうです。

「孤独死」ではなくて「在宅ひとり死」

「オールドミス」ではなく「おひとりさま」

マイナスのイメージがある言葉を、

他の言葉に置き換える努力をされてきたようです。

どうも突かれたのは、結婚批判の部分かな。

フェミニストで、女性の地位向上、男女平等を

主張してきた人。

ただ結婚は批判するけど、恋愛は否定していません。

この辺りが、保守系の人たちに突かれるところかなと

思います。

  

ただ、「在宅ひとり死」

認知症になってしまうと難しいかなと思います。

父親の様子を見て。

認知症でも大丈夫だと、「在宅ひとり死のススメ」には

書いてあるようです。

   

  

上野千鶴子さんはどんな人か?

その興味で読んでみた本。

今日、図書館に返そうと思います。

  

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