本「ご隠居さん」① 合わせ鏡 津軽弁 蛇含草
今日は令和5年11月15日。
この本を読みました。
「ご隠居さん」(野口卓著/文春文庫)
この本を知ったのは、
facebookのグループ「昔の道具-民具たち」の
記事でした。
鏡を磨く人が主人公の小説とのこと。
面白そうと思い、図書館で予約しました。
明治時代になって、その職業は消えましたが、
昔の鏡のことを思えば、こんな職業もあったんだろうなと
想像してみる楽しみがありました。
今朝、図書館に返したいので、
早起きして、残りのページを読みました。
今から、引用作業です。
鏡磨ぎには元手があまりかからないが、手間賃も安いので働き盛りの
男はやろうとしない。江戸での一人働きの鏡磨ぎは、老人の小遣い稼
ぎと決まっていた。お得意が大店ともなるとけっこう重労働で、老い
た身には堪える。ご隠居さま、奥さまに若奥さま、お嬢さま、それに
上女中などと、女子衆の数が多いからだ。
一人一枚ならいいのだが、手鏡から鏡台に掛ける柄付きのおおきなも
のまで、かなりの枚数になった。主鏡である映し鏡と合わせ鏡、外出
用の懐中鏡、ほとんどの女性がその三枚を持っている。
下女でさえ、ちいさな手鏡くらいは持っていた。おそらく、古株の奉
公人からもらったものだろう。下心のある男にそっと渡されたのかも
しれない。
(47〜48p)
当時の鏡事情がわかる文章です。合わせ鏡が必要だったのですね。
長い蛇の話がいつの間にか酒虫に移ってしまいましたが、ここで息
抜きに短い話題をおひとつ。秋津島とも呼ばれるこの国で一番短い
話の遣り取りは、「どさ」「ゆき」だそうです。書いて四文字です
からたしかに短い。津軽でしたかの語で、あの辺りは冬が寒いから、
なるべく口を開けないで言葉を節約する。 「どさ」は「どちらへお
出掛けですか?」、対して「ゆさ」は「湯に入りに」という意味だそ
うです。どうせなら、祝辞なんかもこう願いたいと思いますね。
(71p)
今でも津軽弁は、言葉が短いようです。
※和楽 「どさ」「ゆさ」えっ今なんて言った?津軽弁はなぜ聞き取りにくいのか調査してみた
このサイトから引用。
「わたし」を「わ」
「おいしい」を「め」
「食べてください」を「け」
「はい、どうぞ」を「か」
寒さ故に、口を少しでも開けたくない気持ちが感じられます。
面白いです。
徳さんという男が知り合いの家を訪ね、蛇草という草をもらいます。
ある人が旅をしているときウワバミ、「夏の医者」にも出ましたが大
蛇ですな、これが猟師を呑みこんで苦しんでいるのに出会いました。
ところがウワバミがある草を食べると、あら不思議、お産を終えたよ
うに膨らみが消えてしまったとたまたま相手が餅を焼いていましたの
で、餅の好きな徳さんはたまらない。つい一つ食べたところ、それを
友人が咎めて喧嘩になり、行き掛かりから一箱ある餅を全部食べてし
まうということになります。いろんな曲喰いをしながら、ほとんど食
べたのですが、わずかを残して家に帰りました。
友人は徳さんを帰したものの、心配になってようすを見に来ました。
奥で寝ているというので襖(ふすま)を開けてみると、餅が着物を着
て・・・・・というオチ。
(75〜76)
落語「そば清」は面白い。
このブログでも、何度も記事にしました。
「蛇含草(じゃがんそう)」という話があって、
それが元の話だったのですね。
と、今知ったように書いていますが、
「蛇含草」は初めて聞いた言葉でないような。
きっと昔出合っていますね。
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