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2022年9月 2日 (金)

「定本納棺夫日記」① ケガレとハレ

     

今日は令和4年9月2日。

   

この本を読みました。

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「定本納棺夫日記」(青木新門著/桂書房)

  

青木山門さんの訃報を見たのが、読むきっかけになった本。

ここでも道草 訃報 青木新門(2022年8月9日投稿)

  

「納棺夫日記」はその通り、日記であり、ストーリーがあるものでは

ありませんでした。

死者を湯灌・納棺する仕事をするにあたって、

死者と死者を取り巻く人たちと接することから

気づいたことや思ったことを綴った本でした。

親鸞に関して力説している箇所は、う~ん半分くらいの理解かな。

   

引用していきます。

  

この「ケガレ」の内容は、既に古代の「延喜式」の中に細かく規定

されている。その中でも特に死穢(しえ)と血穢(けつえ)はケガ

レの最たるものとされている。

死穢とは、死や死者を不浄なものとしてとらえ、死や死者に纏わる

一切のものは不浄なものと忌諱(きき)の対象とされた。また血穢

は、怪我などの出血の「ケガ」の意味もあるが、女の出血(月経)

の穢れが強調され、やがて女性そのものが穢れた存在とされてゆく。

また今日でも、糞尿のことを汚穢(おわい)という地方があったり、

便所のことを御不浄と言ったりしているように、糞尿もまたケガレ

の対象であった。

これらケガレから逃れることが、人々の最大の関心事であった。見

えないように遠ざけたり、一線を引いて隔離したり、女人禁制にし

たり、ありとあらゆる努力をするのである。

しかしどうしても隔離したり遠ざけたりできない場合がある。そん

なときは不浄やケガレを浄化する儀式としてオハライやキヨメを行

い、一瞬にして「ハレ」に転換するのである。

ハレとは晴れの日や晴れ着のハレであって、清浄な神聖な状態のこ

とをいう。

このケガレとハレとの関係において、清められた大相撲の土俵へは

女性は上がれなくなり、比叡山はもちろん、富士山や立山や白山な

どの霊山も女人禁制となる。

死者が出れば、忌中の紙を張り、火葬場から戻れば、清めの塩で清

める。これもまた、ケガレとハレから派生した事例である。

(31~32p)

   

ケガレとハレの関係を知ることができました。

なぜ清めるのに塩なのかという理由は、

続きの文章で知ることができました。

  

なぜキヨメに塩なのかという問いに、『古事記』の神話によるとす

る説もある。それはイザナギノミコトが黄泉の国(死の国)からこ

の世に帰ってきた時、黄泉の国は不浄の世界であったと告げ、穢れ

た体を海水で清めたとされている。すべてがこの『古事記』の記述

によって、海水を塩と水に分けた形で、今日まで千数百年も継承さ

れている。

大相撲の塩と水、葬式の清めの塩と手桶水、料亭などの打ち水と塩

といった具合で、塩と水はケガレをハレに転換する小道具として、

日本神道の神事とともに厳然と生き残っている。実に根深いのであ

る。理屈や何かで解決できる問題ではない。

「穢らわしい」と妻に叫ばれ、寝つけないまま古い書物をペラペラ

めくっていた。

(32p)

   

古事記によって、塩と水で清めるという説があるのですね。

今まで、何も考えずに、葬式帰りに塩を体に振っていました。

理由を知って振るのでは、大きく違います。

歴史の上にいることを感じます。

  

  

鉛色の空からは、絶え間なくみぞれが落ちてくる。このみぞれに濡

れたうら寒いモノクロ風景こそが、この地方特有の貌(かお)なの

である。

気象が風土の貌を作ってゆく。山に雪が降っているのではなく、雪

が山を描いてゆく。

みぞれが降り始めたら、北陸に住む人々は冬が来たと実感する。

(34p)

  

青木新門さんの故郷は富山県です。

「雪が山を描いていく」という表現が強く印象に残りました。

確かにそうであり、雪によって山が描かれた時に、

冬山シーズンが来たことを感じます。

気象が風土の貌を作っているのですね。

  

 

  

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