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2022年7月12日 (火)

通算8200本目の投稿/「ペリリュー・沖縄戦記」④ 味方も殺す戦場

     

今日は令和4年7月12日。

 

前記事に引き続き、

「ペリリュー・沖縄戦記」(ユージン・B・スレッジ著

伊藤真/曽田和子訳 講談社学術文庫)より。

   

9月18日、われわれ第五連隊第三大隊がいったん後方へ下がるた

め東へ移動しているとき、仲間の一人が悲しそうに言ったーーー「

なあ、スレッジハンマー。第一連隊のやつに聞いたんだが、彼らは

銃剣を構えてあのいまいましい尾根に正面攻撃をかけているが、ど

こから撃たれているのかもわからず、肝心のニップの姿すら見えな

いらしい。このことを教えてくれた若いやつはほんとうに落ち込ん

でいたよ。とても生きて帰れるとは思えないからな。どうみたって

馬鹿馬鹿しいじゃないか。あんなことを続けてても何にもならん。

みすみす虐殺されてるようなもんだ」

「そうだな。どっかの見栄っ張りの士官がもう一つメダルでも欲し

いんだろうよ。おれたち歩兵はそのために戦場で倒れるんだ。士官

は勲章をもらって、国へ帰って、大いに英雄扱いされる。英雄だな

んて、馬鹿馬鹿しいにもほどがある。部下の兵士を殺されておいて、

どこが英雄なんだ」と別の古参兵が恨みごとを言った。

まさに恨めしいことこのうえなかった。顔見知りの仲間のなかで、

ふだんなら人一倍楽観的な者でさえ、いずれわれわれ第三大隊もあ

の恐ろしい尾根の攻撃に投入されるに違いないと、確信していた。

そしてそれをひどく恐れていた。

(149~150p)

   

歩兵なら思うであろう内容の会話です。

死んでいくのは、前線の歩兵です。

  

私は胸ポケットに国際ギデオン協会の小さな新約聖書を入れていた

が、初めのころはずっと汗で濡れっぱなしだった。日本兵は緑色の

ゴムでできたポケットサイズの袋を持っており、折り畳んで持ち運

べるこの防水性の袋に家族の写真や手紙類など私物を入れていた。

私は日本兵の遺体からその袋を一つ「失敬」し、新約聖書のカバー

にした。おかげでこの小さな聖書はペリリュー島から沖縄戦終了ま

で、私とともに無事に雨と泥をくぐり抜けた。

(151p)  

  

このエピソードのように、米兵は日本兵の遺体からいろいろなもの

をかすめ取っています。今回のように実用品として。

ある時は記念品として。そしてある時は金歯をもぎ取ります。

戦場では、平時では考えられないことが行われます。

  

  

ある晩、アメリカ兵たちがひそんでいる時に、

一人のアメリカ兵が騒ぎ出しました。

恐怖のストレスが限界を超えて、騒ぎ出したのです。

仲間が止めようとしても止まりません。

鎮痛剤のモルヒネを打っても効きません。

このままでは、ひそんでいる場所が日本兵にわかってしまい、

砲撃をうけるのは必至です。

殴っても、騒ぎは止まりません。

塹壕用のシャベルで叩けという指示があって、実際に行われました。

静かになりました。

  

このまま永久に明けることがないのではないかと思われた闇が薄れ、

待ちかねた夜明けがついに訪れたとき、われわれは誰もが神経を擦り

切らせていた。私は昨夜の事件について真相を見極めようと、数歩離

れた指揮所の壕まで出向いていった。男は死んでいた。遺体はポンチ

ョを掛けて掩蔽壕(えんぺいごう)のわきに横たえてある。ヒルビリ

ーをはじめ、ハンクや指揮所の面々の精悍な顔に刻まれた苦悩と心痛

の色が、夜のうちに彼らが味わった恐怖を物語っていた。(中略)

誰だってあのような状況に置かれれば、同じことをするしかなかった

ろう。哀れな戦友の命を奪ったのがこの男たちだったのは、たまたま

のことにすぎないのだ。

(160p)

  

この出来事は、8年前の記事を思い出させます。

ここでも道草 「ペリリュー」その5/味方も殺す戦場(2014年8月19日投稿)

同じく、シャベルで味方兵士を殴って殺した証言があります。

同じ出来事でしょう。

そして、この出来事は、ドラマ「ザ・パシフィック」でも

描かれています。

戦争の悲惨さを示す出来事です。

今回のタイトルは、8年前と同じにしました。

  

今晩はここまで。

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