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2022年4月 7日 (木)

「新ドキュメント 太平洋戦争1941第1回開戦~前編~」③

       

今日は令和4年4月7日。

   

前記事に引き続き、

昨年12月8日放映の「NHKスペシャル  新ドキュメント 

太平洋戦争 1941 第1回 開戦 ~前編~」の聞き書きをします。

   

  

ナレーター:1941年、太平洋戦争開戦の年が開ける。日本はアメ

  リカの経済制裁の影響であえぎ始める。

1月のニュース映像「全国から集められた銅や鉄類の献納品は1千ト

  ンに達しました。」

ナレーター:国は不足した鉄などの資源を補うため、市民から供出さ

  せた。街中から金属が消え、経済全体が冷え込み始めていく。

  作家永井荷風は、散歩の途中で見た光景を、日記に綴っている。

日記「道すがら、虎ノ門より櫻田へかけて立ちつらなる官庁の門を見

  ると、今まで鉄製だったのをことごとく木製に取り換えていた。

  これは米国より鉄の輸出を断られたためである。」

ナレーター:市民の日記から、「品切れ」「枯渇」など物資不足に関

  する単語を抽出。1941年1月以降、増加傾向が顕著になって

  いく。同じ時期、戦争への関心も高まっていた。戦争に関する単

  語数も、増加に転じていた。

  生活の不満の高まりを背景に、アメリカに対する過激な論調が目

  立つようになっていた。当時のオピニオンリーダー、徳富蘇峰、

  1月、ラジオでこう呼びかけた。

発言「米国は日本が積極的に進んでいけばむろん衝突する。しかしぼ

  んやりしていても米国とは衝突する。早く覚悟を決めて、断然た

  る処置をとるがよい。」

ナレーター:さらに当時のベストセラー作家が刊行した本、「日米戦

  はば」

記述「米国なお反省せず。我が国の存立と理想を脅かさんとすること

  あらば、断然これと戦うべし。日本は難攻不落だ。」

ナレーター:今で言うインフルエンサー的存在。戦争を煽るような言

  葉が、人々をとらえ始めていた。この頃、雑誌が日米戦は避けら

  れるかというアンケートを行った。4割もの人々が「避けられな

  い」と回答した。

日記「米英の妨害を断然排除して進まねばなるまい。」

ナレーター:静岡、伊東市で書店を営む竹下浦吉さん。不穏な未来を

  予測していた。

日記「日本がドイツと同盟して東亜に新秩序を確立せんとする以上、

  どうしても米英との衝突は免れぬと思う。」

ナレーター:子育て中の主婦金原さんも、危機感をいだくようになっ

  ていた。

日記「日米間の情勢について、だいぶ悲観的な話を聞くようになり、

  ママたちも本気で心配するようになっている。本当に日米戦が起

  こったら、東京空襲も免れないし、住代ちゃんのような弱い子を

  お医者もいない田舎に連れて行って、もしものことがあったらと

  思うと暗然とする。しかし、何という時代に生まれ合わせたもの

  か!強い母にならねばならない。」

ナレーター:開戦の8カ月前、国の指導者たちは、アメリカとの決定

  的対立を避けるための外交交渉に乗り出そうとしていた。背景に

  は、陸軍が極秘で行ったアメリカとの戦力比較のシュミレーショ

  ンがあった。その報告に立ち会った将校のエゴドキュメントが残

  されていた。そこには、指導者たちの本音が、吐露されている。

日記「3月18日。物的国力判断を聞く。」

ナレーター:陸軍の中枢で、政策決定に関わった石井秋穂中佐。この

  日、参謀本部で明かされたシュミレーションの結果は、陸軍の首

  脳に衝撃を与えた。

日記「誰もが、対米英戦は予想以上に危険で真にやむをえざる場合の

  ほかやるべきでないという判断に達したことを断言できる。」

ナレーター:資源豊富なアメリカとの戦争が、2年以上に及んだ場合、

  日本側の燃料や鉄鋼資源が不足することが判明。これを受け、陸

  軍大臣東条らは、日米戦争は回避すべきと判断した。    

  軍や政府の決定を知る由もなかった金原さん。育児日記に大きな

  変化が現れる。

日記「今こそ、日本の歴史の大転換期であり、住代の育児日記も母の

  目に映った世の有様を書き記していこうと思う。」

ナレーター:6月。金原さんを震撼させる出来事が起きる。

日記「世界の情勢は、また大変なことになってきた。独ソ開戦。寝耳

  に水のこのニュースに世界中大混乱である。日本の立場こそ、デ

  リケートなものになってきた。」

ナレーター:ドイツが突如ソビエトを侵攻し、独ソ戦が勃発。金原さ

  んは敏感に感じ取っていたように、日本の運命を大きく左右する

  ことになる。

  独ソ戦勃発から10日後。それまでアメリカとの戦争を避けよう

  としてきた指導者たちが、ここで決定的な判断ミスを犯す。

  日本軍が南部仏印、今のベトナム南部に進駐したのだ。

日記(石井秋穂)「自存自衛上、立ち上がらねばならない場合に備え

  て、あらためて南部仏印に軍事基地をつくるという要求が生まれ

  つつあった。

ナレーター:独ソ戦により日本にとって背後のソビエトの脅威がなく

  なった。その隙に、アメリカの禁輸政策のため欠乏する資源を手

  に入れようと、東南アジアの資源地帯を、抑えようとしたのだ。

  アメリカは、日米のパワーバランスを崩しかねない日本軍の行動

  に強く反応した。そして、日本への石油の輸出を止めた。石油の

  9割をアメリカからの輸入に頼っていた日本にとって、計り知れ

  ない打撃だった。軍の指導者たちは、アメリカがそこまで強硬に

  反応するとは、想定していなかった。南部仏印進駐に関わった石

  井は、こう振り返っている。

日記「大変お恥ずかしい次第だが、南部仏印に出ただけでは、多少の

  反応は生じようが、祖国の命取りになるような事態は招くまいと

  の甘い希望的観測を抱えておった。」

ナレーター:希望的観測が招いた石油の禁輸。アメリカとの戦争に慎

  重だった海軍も、態度を大きく変える。

発言「じり貧になるから この際決心せよ」

ナレーター:海軍のリーダー、永野修身。この捨て鉢とも受け取れる

  言葉の裏には、永野なりの算段があった。

発言「今後は、ますます兵力の差が広がってしまうので、今戦うのが

  有利である。」

ナレーター:石油が底をつけば、戦争はできない。その強迫観念が、

  指導者を戦争へと駆り立てようとしている。

  事態を冷静に見ていたリーダーもいた。海軍次官。澤本頼雄。開

  戦に強く反対する。

メモ「資源が少なく国力が疲弊している状況では戦争に持ちこたえる

  ことができるか疑わしい。」

ナレーター:澤本は戦争に勝ち目はなく、日米の外交交渉で解決をは

  かるべきだと主張した。

メモ「この方向に向かうことこそ、国家を救う道である」

ナレーター:開戦まで半年を切っていた7月。市民の生活はいっそう

  過酷な状況になっていた。物資不足に関するグラフは、さらに高

  まりを見せる。

日記「帰りに八百屋に寄り、何でもいいから買おうと思ったが何もな

  し。あわれ菜っぱ一束、胡瓜一本も買うこともできない。」

日記「食べ物の悲惨 うまいもの食ったのはいつのことなりしか 肉

  なしデー ついに冗談ではなく実現す」

ナレーター:国民の食糧不足を補うため、政府がたんぱく源として推

  奨したのが、昆虫食。蚕から絞り出した油を食用油に、搾りかす

  でうどんを。さまざまなレシピを発表していた。生活に困窮する

  市民。人びとは、日々積み重なる不満をどこに向けていたのか。

  井上重太郎さん。大阪で精米店を営み、かつては政府の米の管理

  に、強い不満を記していた。国が米を統制するようになり、価格

  は下落。個人経営では、立ち行かなくなっていった。

日記「組合の人々は集会して、米の共同販売のことを相談している。

  やむをえない 時勢に従うほかはないようになってきた。」

ナレーター:国策によって追い詰められ、自分の店をたたまざるを得

  なくなった井上さん。しかし、逆に国に協力する言葉や活動が増

  えていく。その一つが、隣組だ。食糧の配給など、生活を国が統

  制するための地域組織。国防のための奉仕を求められた。

日記「近衛首相の放送があったが、愛国心を説き、国民の総力をもっ

  て、困難の克服を強調された。全国一斉に隣組の常会を開くとい

  う。今夜は自分のうちで開いてくれと頼まれている。全国民がは

  りきっている。」

ナレーター:戦時体制の元、言論を取りしまり、愛国教育を強化して

  きた日本。多くの国民は、協力して、国の危機を乗り切るべきと

  考えるようになっていた。

  娘が1歳を迎えた金原さん。育児日記に、戦争への覚悟の言葉が

  現れるようになる。

日記「住代ちゃんにあげるおやつを探し回って、午前中をつぶしてし

  まった。パン屋さん全部休み。世界戦争も実現するかもわかりま

  せん。住代ちゃんも食べるものも不満足ですが、でもしっかりや

  っていきましょう。大東亜建設のため、次の日本を背負って立つ

  のは住代ちゃん あなたがたなのです。丈夫に育って、立派にお

  国のために尽くしなさい。パパもまた一命を国に捧げねばならな

  くなるかもわかりません。」

ナレーター:「お国のため」生活の不安とアメリカとの戦争の予感が

  結びつき出てきた言葉だった。

日記「アメリカの参戦も時期を早めるだろうとの予測もある。肉がな

 いお菓子がないどころの騒ぎではなくなってきたのだ。しかしこれ

 もお国のためと思えば我慢する。」

専門家「自分たちを苦しめているのは政府ではなく、背後でイギリス

  やアメリカが経済的に圧迫していくので、われわれの生活はどん

  どん追い込まれていくと。自分たちの生活を苦しめている敵、英

  米を叩いたら、生活も元に戻る。そういう意味で、お国のためと

  いうことが、素直に受け入れられていた。」

  

  

ここまでにしよう。

つづきは明日の朝にしよう。疲れた。

49分番組のうち、38分まで聞き書きをしました。

明日の朝で終わりになる予定です。  

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