「本のエンドロール」① 「夢」は「日々の仕事を手違いなく終わらせること」
今日は令和3年5月3日。
この本を読みました。
「本のエンドロール」(安藤祐介著/講談社)
面白かった。
学校の仕事を差し置いて読んでしまった本ですが、
明日から仕事を頑張ろうと思わせてくれる本でした。
引用します。
「仲井戸さんはどうして豊澄印刷を選んだんですか。印刷業界は上
向かない、現実を直視できない者は辞めたほうがいいと言うのに、
なぜでしょう」
「縁だよ。就職活動をして、内定が取れたのが豊澄印刷だった。や
れるだけのことをやろうと続けてきて、気が付けば入社十七年目だ」
普段からクールで、ともすればドライな印象を受ける仲井戸から「縁」
という人間臭い言葉が出たのは意外にも思えた。
(82~83p)
「縁」は大事だと私は思っています。
結局「縁」なんですよ。
縁があるから出会ったり、出合ったりします。
本当はたくさんの「縁」の中から、
とことん「縁」を突っ込んでいきたいという衝動があるけど、
やっぱり「退職したら」の思考に行ってしまいます。
まだ閉店時刻の二十二時まで十五分ある。浦本は店内の棚を見て回
った。豊澄印刷のみならず、他社の造った本が競い合うようにして
並んでいる。
浦本は書店を歩いて回るのが好きだ。どの本にも、カバーや帯など
に工夫が凝らされている。カバーのイラストや色使い、帯のコピー、
紙の感触。
作者、出版社の編集者や営業・広報担当、印刷会社や製本会社の人
々、取次の人々。多くの努力の結晶が書店に辿り着き、こうして並
んでいる。
自分の携わった本が書店の書棚に並ぶ姿を見ると、浦本は勇気づけ
られる。
(139p)
本の文章は作者が書きますが、
その文章が本になって書店に並ぶまでには多くの人が関わります。
この本はそんな人たちのことを書いた本でした。
主人公の浦本は、印刷会社の営業職。
本ができるまでの知っている人が本屋に行くと、
こんな視点になるのですね。
私もこの本を読んで、この視点をもらった気持ちです。
舞い込んでくるトラブルはいつでも、嫌になるほど具体的だ。しば
しば無力感に駆られるが、逃げずに向き合わなければならない。
仲井戸が「夢」だと言った「日々の仕事を手違いなく終わらせるこ
と」はある意味、本当に難しく、夢のような話なのかもしれない。
(188p)
毎日の仕事はそうだと思います。
毎日、手違いなく終わらせることを積み重ねていくことで、
周囲からの信頼を得られるのです。
本づくりの仕事は、それがとっても難しい仕事のようです。
つづく
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