「羊は安らかに草を食む」① 人生の店じまいの段で笑顔
今日は令和3年3月3日。
月曜日に心療内科、火曜日に内科に行きました。
待合室で待つ時間は私にとって読書タイム。
ところが、どちらの病院も、待ち時間は10分未満。
読書が消化不良で、家に帰ってから部屋でつい読書。
今年は「番画」生活をして、読書は減らす方針ですが、
一気にこの本を読んでしまいました。
「羊は安らかに草を食み」(宇佐美誠著/祥伝社)
やっぱり読書はいいと思った本です。
これは映像化不可能。
酷(むご)いシーンは、無理でしょう。
文字を読んで想像するから許される世界です。
読書の醍醐味を味わえた本でした。
主人公は老婆3人。
益恵さん86歳、アイさん80歳、富士子さん77歳。
そして益恵さんは認知症。
近々施設に入ることになっています。
この設定からして、今の私には身近です。
それでは印象に残った文章を引用します。
「認知症の人は、残った記憶を搔き集め、それぞれの『世界』を創り
上げる。そこに意味と調和を見出す。それが認知症の人の平安なんだ。
その『世界』が彼らをつなぎ留めていてくれる」
(70p)
父親を見ていて上のように思います。
残った記憶を搔き集めて、現状と折り合いをつけて、
今を生きているのです。
父親は頑張っています。
三井寺で夕刻に撞(つ)かれる鐘は、近江八景「三井の晩鐘」として
親しまれている。環境省が選んだ「残したい”日本の音風景100選”」
にも選ばれた荘重な音らしい。益恵も何度も聴いたはずなのだ。だか
らこそ、俳句にして残したに違いない。
(74~75p)
引退したなら、こんな文章に触れたり、いい映像を見たりしたら、
「さっそく行ってみようかな」と動けるのだろうか。
そんな生活をしてみたい。
将来、三井寺に実際に行ったなら、この記事を思い出そう。
自分(アイ)も含め、戦中戦後を生き抜いてきた者は、物を粗末にで
きない。アイは益恵の仕草を見ながら思った。何でも取っておく癖を
娘の美絵に指摘されて、捨てられてしまうことが度々あった。
(139p)
私の父親も母親もそうでした。
捨てないので、押入れがとんでもないことになっていました。
戦中戦後を生きてきた証だったのですね。
「楽しそうやね、益恵さん」満喜は目を細める。「今は安気に暮らし
ておいでるんじゃね。昔を思い出して辛がることもあるかもしれんけ
ど、それでも今がええということはええことよ」
アイには、満喜の言いたいことがよくわかった。益恵は、背負ってき
たものは重いかもしれないが、人生の店じまいをする段になって、こ
うして笑っていられることがすべてだ。それは偶然でも何でもなく、
彼女自身が獲得したものだ。
(170~171p)
父親のこととして思う。
笑顔で人生の店じまいをさせてあげたいなと。
自分のこととして思う。
笑顔で店じまいできるように、
良かれと思うことは今のうちから実行しておこう。
そんな人生を獲得したい。
つづく
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