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2020年11月25日 (水)

「風の影(下)」を読みました

   

今日は令和2年11月25日。

  

この本を読みました。

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「風の影(下)」(カルロス・ルイス・サフォン著/

木村裕美訳/集英社文庫)

  

3連休中に読めませんでしたが、昨晩読破。

ここでも道草 「風の影(上)」を読みました(2020年11月22日投稿)

  

小説を読むことの面白さがわかる本です。

フメロ刑事が出てくるシーンは、いつもドキドキしました。

小説「出口のない海」を読んで、

回天が出撃するシーンでドキドキした時と似た気持ちになりました。

文章を読むだけで、現場にいるような感覚になれる面白さ。

  

サフォンは、本文中で、世間が本を読まなくなっていることを憂い、

そのようになって来た理由として、テレビの普及を挙げています。

テレビ大好き、録画大好きの私は、

もし、テレビがなかったら、

もっと読書をしていただろうなと思います。

本もテレビも好きで、両方を追った時もありましたが、

忙しい日々の中で、テレビを主にすると宣言して久しいです。

昨年の休職で、逆転しました。

そのおかげで、このような面白い小説にも出合えました。

   

 

訳者のあとがきを引用します。

  

現代的なミステリータッチのこの小説が、19世紀文学風の厚みを

そなえているとすれば、それは作中人物の多彩さと、巧みな性格描

写によるといえよう。フェルミン・ロメロ・デ・トーレスやフォル

トゥニーなどの主役級は言うにおよばず、ピソの管理人からカフェ

のウエイター、タクシーの運転手からバスの乗客の婦人たちにいた

るまで、登場するのはみな血のかよった人間であり、スペインでた

しかに存在するタイプの人ばかりだ。ちなみに、名もない人物をす

べて数えあげると、ざっと百人ほどが登場している。そして余分な

役者はひとりもいないのである。彼らの証言、報告、告白、あると

きは沈黙が、物語のいちばん奥深くにある「見えざるもの」に、す

こしずつ読者をみちびいていく。隠されたジグソーパズルのピース

をひとつ、またひとつと提供しながら、彼らは同時に、魂と肉をそ

なえた実体をもつことで、作品の底辺を支えているのだ。体制側と

反体制側、信仰家と無神論者、伝統派と自由主義、資産家と労働者、

それぞれの時代を生きる人びとの実像が、本書にあっては実に豊か

に、ときには絶妙なユーモアをこめて描かれていて、読む者を最後

まで飽きさせない。

(422p)

  

100人。

そんなに登場していたのですね。

小説家の頭の中って、すごいなあと思います。  

  

本文からの引用。

  

歳月は、フメロ刑事の記憶に寛大ではなかった。フメロを憎んだ人間

も、怖れていた人間も、もう彼のことを思いだしもしない。

何年かまえに、偶然、グラシア通りでパラシオス刑事と出くわした。

彼は警察をやめて、いまは、ボナノバ通りの学校で体育の授業を受け

もっている。パラシオスの話によると、フメロの栄誉を表した記念プ

レートが、いまだにライエタナ通りの警察署の地階にあるらしいが、

新しく設置されたジュースの自動販売機で完全におおい隠されたとい

う。

(415p)

    

最近の私のテーマ。

「所詮、人間は忘れてしまう」

登場するシーンではドキドキさせられたフメロ刑事でさえ、こうなんだ。

時の試練をくぐり抜けるものは本の僅か。

※参考:ここでも道草 「思考の整理学」③ 時の試練(2020年10月25日投稿)

 

考えようによっては、少しぐらい愚かなことをしても、

周りの人は忘れてしまうのです。

やってしまったことでくよくよせずに新しいことをやっていこう。

そんなことを思う日々です。

あれだけの悪行をやったフメロ刑事だって忘れ去られるのです。

 

 

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