天声人語「ヘビににらまれたカエル」
今日は令和2年7月5日。
昨日の「天声人語」がよかったです。
ここに書き写します。
2020年7月4日朝日新聞朝刊より。
俗に「ヘビににらまれたカエル」と言う。恐怖で身がすくみ動け
なくなることを指す。絶体絶命の哀れなカエルが浮かぶ。だが最新
の研究によれば、実はあの不動の姿勢こそ最善の防御策だという▼
動物学者の西浦望(にしうらのぞみ)博士(33)は、シマヘビと
トノサマガエルの駆け引きを屋内外で撮影した。解析してわかった
のは、カエルが先手をとって跳躍すると、空中では進路を変えられ
ないため、ヘビに動きを読まれるおそれが高くなること。ヘビがし
びれを切らして攻撃に出るのを忍耐強く待っていたらしい▼捕まえ
る側にとっても、先手は必ずしも上策ではなかった。ヘビは折り曲
げた体をバネのように伸ばして突進する。もし最初の攻撃が空振り
すると、再攻撃の前にまた体を曲げる時間が要る。その間に、田や
川、池など水場に逃げられるリスクが高まるそうだ▼研究には300
時間以上を要した。在籍していた京都大周辺のほか、滋賀や三重、
徳島でもカメラを回した。不審者かと思った住民が木刀を手に迫っ
てきたこともあったという▼ふいに浮かんだのは、昭和の大横綱双
葉山の立ち合いである。後手をとるかに見せて優位に立つ「後の先
(ごのさき)」を理想とした。だれに教わったわけでもないのに、
カエルたちが双葉山顔負けの知略を備えていたのは驚きである▼カ
エルの鳴き声が列島に響く季節である。研究に触れ、どうしてもヘ
ビよりカエルの方を応援したくなる。古池や蛙(かわず)逃げ切れ
水の音!?
「ヘビににらまれたカエル」の新解釈になるほどと思いました。
カエルの手法と双葉山をつなげるところが愉快でした。
やっぱり知識豊富だと、いろいろつながって面白いことになりそう。
そんなことを思った「天声人語」でした。
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