「長期ひきこもりの現場から」④ 強烈なストレス→際限なくループ
今日は令和2年4月12日。
不登校・ひきこもりの生徒に対応する場合に、
知っておいた方がいいことがたくさん書いてある本でした。
前日の記事に引き続き、
「ドキュメント・長期ひきこもりの現場から」
(石川清著/洋泉社)より引用します。
今日はこれから外秩父の敏幸君の家を訪ねるところだ。おそらく、
ゴールデンウィーク中は、調子が悪かっただろう。一部のひきこも
りの当事者にとって、毎年のゴールデンウィーク中は大きく気分が
落ち込む。
同年代の若者が、羽目をはずしてレジャーや恋、仕事を勤(いそ)
しみながら充実した人生を謳歌しているのに、なぜ自分はひとり取
り残されて、自室で鬱々とした日を過ごしているんだろう・・・・
そんな自問自答を1日じゅう頭の中で延々と反芻しているからであ
る。
ゴールデンウィーク以外にも、鬼門の時期がいくつかある。まず、
クリスマスから年末年始、成人式にかけての日々。次いでバレンタ
インデー前後。夏のお盆前後の行楽シーズンや、秋のシルバーウィ
ーク、最近ではハロウィンの前後にも調子を落とす人が出ている。
寒暖の差が大きかったり、気圧が低くなると、抑うつ状態になる
人もいる。
(98~99p)
敏幸君は自分の後頭部の形が気になり、それを隠すためもあって
髪の毛をずっと切らずに、ひきこもりの生活をしていました。
髪の毛の長さは2メートル近くになりました。
しかし、石川さんと東南アジアを旅した後に、
ばっさりと髪を切ってしまう。
なぜ切ったのかという石川さんの問いに、敏幸さんが答えます。
「イシさんとタイの北部のパーイっていう山の中の盆地の町に行っ
たじゃないですか。あそこにレゲエ系の髪の長い人がいっぱいいた
でしょ。それこそ、なかには4、5メートルまで髪を伸ばして、直
に地面にひきずって、歩くような人がいたじゃないですか。髪の毛
の先に泥がまとわりついて玉になって、そのまま歩いている人もい
たでしょ。それを見たら、髪の毛へのこだわりがなぜか消えちゃっ
て、どうでもよくなりました。あの人たちには、もう勝てないし。
ああなりたいわけでもないんです。それで、ちょっともったないけ
れど、切っちゃったんです。もっと普通でいいかなって。いやー、
すがすがしいですし、自分の頭がこんなに軽いもんだって初めてわ
かりました」
(101p)
後頭部の形はいいのかと石川さんが聞きました。
「いや、前は気になっていたんですけれども、タイの北部で首にリ
ングをはめて長く伸ばした人たちに会ったでしょ。他にも耳たぶを
長く伸ばしたり、下唇に大きな皿をはめている人たちもいたじゃな
いですか。旅行者でも、刺青したり、動物みたいな格好をしている
人もいたりして。ああいう人たちのなかにいたら、あまり外見のこ
とが気にならなくなっちゃったんです。」(中略)
とにかく、敏幸君はタイの奥地で、さまざまな外見で暮らす、い
ろいろな人たちに出会って、醜形恐怖(自分の容姿や外見を過度に
気にして生活に支障が出ることもある脅迫神経症状の一種)がかな
り減じたようである。
(102p)
優君と父親の相性はよくありませんでした。
酒に酔うと父親は、ひきこもりの優君に、
「怠け者!」「いい年してごろごろするな」「早く働け!」と
叱咤しました。
優君は黙って我慢していましたが、
時にくってかかることもありました。
そんなとき、決まって泣きながら仲裁に入るのは母親だった。優君
はなんとなく申し訳なくなって、母親とも顔を合わせるのが辛くな
ってしまい、逆にしばらく母親を無視してしまった時期もあった。
そうすることで、今度は母親の心が傷ついた。
閉塞的な家庭環境のなかで、家族の誰かが発した強烈なストレス
は、このように家族のメンバーの間で際限なくループしてしまう。
(103p)
辛いループです。
閉塞的な家族の雰囲気を、第3者が壊してあげる必要があります。
長期間ひきこもる当事者と接するとき、十分な信頼関係が構築さ
れていないと、たった一度のわずかな言葉のかけ違いや意識のすれ
違いで関係が断絶してしまうことがある。そのまま二度と回復しな
いこともある。(中略)
幸い、マモル君との関係は断絶せずに修復できたのだが、それま
でに3、4ヶ月かかってしまった。
(111p)
焦らず、手探りで関わっていかなければいけないと思います。
つづく
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