「続横道世之介」① そこは普通に侍でいいんじゃないか
今日は令和2年4月4日。
新年度が始まって、3日が過ぎました。
ドキドキして過ごしていました。
3月の休校中に比較して、
周りの先生方の動きが慌ただしくなってきました。
もちろん私もあわただしいです。
みんなに紛れて、3日間がやり通せたことが大きいです。
朝普通に出勤し、仕事をして、勤務時間をやり切って
駐車場を出るときは気持ちがいいです。
休職中のように、人目をはばかるようなところもないし、
働いていないという後ろめたさもなくなってきました。
「あと定年まで2年しかない」という気持ちから、
最初から少々エンジンをふかし過ぎのところを自覚しています。
セーブしよう。
昨晩は、映画「横道世之介」(2013年)を最後まで見ました。
面白い映画でした。
主人公の世之介と、彼女の与謝野祥子が、
お互いに呼び捨てをして、恋人通しであることを確かめ合うシーンは、
原作とは違った雰囲気でしたが、それはそれでよくてジーンをしました。
「世之介」
「祥子」
「ハイ」
のくり返しでした。
ただ以前にも書きましたが、小説「横道世之介」の”文体”は、
映像で表現するのは難しかったと思います。
今日、おそらく読破してしまう予定の次の本。
「続横道世之介」(吉田修一著/中央公論新社)
この本から、映像では表現しにくい文体を、いくつか引用しまう。
まずは冒頭です。
信号はとうに青に変わっている。池袋駅西口五差路の交差点、横
断歩道を大勢の人たちが渡っていく。その中にぽつんと突っ立った
ままの男がいる。周囲がやたらと動くので、動かぬ男はやけに目立
つ。
(7p)
こんな感じで、世之介登場です。
世之介が床屋に行くシーン。
「いつも通り?」
理容師に聞かれ、「はい」と世之介は頷(うなず)いた。
わりと常連だが、髪を刈ってもらっている間に言葉を交わしたこ
とはない。以前、店主のおばさんだけのときに、ものすごく遠回し
な言い方で、この強面の理容師が刑務所で利用技術を習得してきた
ことを教えてもらった。以来、世之介は目も当てられない偏見だと
は分かっていながらも、もみあげや襟首を剃ってもらうとき、その
剃刀でスッと首を掻き切られる妄想に脅えることがある。
だが、実際には掻き切られるどころか、この理容師に刈ってもら
うと、とにかくすっきりして気持ちがいい。それこそ一昔前のヤク
ザ映画を見たあとではないが、彼に髪を短く刈ってもらって外へ出
ると、なんとなく肩で風を切って歩きたくなる。
(38p)
う~ん、ここは比較的映像にはしやすいのかもしれません。
次の文体はどうでしょう?
ある女性(あだ名は”吉原炎上”が床屋にやってきて、
頭を五分刈りにしてほしいとやってきます。
例の床屋で、散髪を終えた世之介と交代に、例の吉原炎上が椅子
に座ったのである。ちなみにすれ違うとき、
「あんた、名前、なんて言うの?」
と、唐突に彼女から訊かれ、
「横道だけど、横道世之介」と世之介が答えた。
先に反応したのは強面の理容師の方で、
「ほう、浪人みたいだな」と笑う。
そこは普通に侍でいいんじゃないかと思いはしたが、これ以上、話
をこじらせてもどうかと思い、敢えて触れずにソファに座った。
(43~44p)
この文体は、映像では表現しにくいと思いませんか。
つづく
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