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2020年4月 4日 (土)

「続横道世之介」① そこは普通に侍でいいんじゃないか

今日は令和2年4月4日。

  

新年度が始まって、3日が過ぎました。

ドキドキして過ごしていました。

3月の休校中に比較して、

周りの先生方の動きが慌ただしくなってきました。

もちろん私もあわただしいです。

みんなに紛れて、3日間がやり通せたことが大きいです。

朝普通に出勤し、仕事をして、勤務時間をやり切って

駐車場を出るときは気持ちがいいです。

休職中のように、人目をはばかるようなところもないし、

働いていないという後ろめたさもなくなってきました。

「あと定年まで2年しかない」という気持ちから、

最初から少々エンジンをふかし過ぎのところを自覚しています。

セーブしよう。

    

   

昨晩は、映画「横道世之介」(2013年)を最後まで見ました。

面白い映画でした。

主人公の世之介と、彼女の与謝野祥子が、

お互いに呼び捨てをして、恋人通しであることを確かめ合うシーンは、

原作とは違った雰囲気でしたが、それはそれでよくてジーンをしました。

「世之介」

「祥子」

「ハイ」

のくり返しでした。

 

ただ以前にも書きましたが、小説「横道世之介」の”文体”は、

映像で表現するのは難しかったと思います。

  

今日、おそらく読破してしまう予定の次の本。

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 「続横道世之介」(吉田修一著/中央公論新社)

  

この本から、映像では表現しにくい文体を、いくつか引用しまう。

まずは冒頭です。

  

  

 信号はとうに青に変わっている。池袋駅西口五差路の交差点、横

歩道を大勢の人たちが渡っていく。その中にぽつんと突っ立った

まの男がいる。周囲がやたらと動くので、動かぬ男はやけに目立

つ。

(7p)

   

こんな感じで、世之介登場です。

  

世之介が床屋に行くシーン。

   

 「いつも通り?」

 理容師に聞かれ、「はい」と世之介は頷(うなず)いた。

 わりと常連だが、髪を刈ってもらっている間に言葉を交わしたこ

とはない。以前、店主のおばさんだけのときに、ものすごく遠回し

な言い方で、この強面の理容師が刑務所で利用技術を習得してきた

ことを教えてもらった。以来、世之介は目も当てられない偏見だと

は分かっていながらも、もみあげや襟首を剃ってもらうとき、その

剃刀でスッと首を掻き切られる妄想に脅えることがある。

 だが、実際には掻き切られるどころか、この理容師に刈ってもら

うと、とにかくすっきりして気持ちがいい。それこそ一昔前のヤク

ザ映画を見たあとではないが、彼に髪を短く刈ってもらって外へ出

ると、なんとなく肩で風を切って歩きたくなる。

(38p)

  

う~ん、ここは比較的映像にはしやすいのかもしれません。

次の文体はどうでしょう?

  

ある女性(あだ名は”吉原炎上”が床屋にやってきて、

頭を五分刈りにしてほしいとやってきます。

  

 例の床屋で、散髪を終えた世之介と交代に、例の吉原炎上が椅子

に座ったのである。ちなみにすれ違うとき、

「あんた、名前、なんて言うの?」

と、唐突に彼女から訊かれ、

「横道だけど、横道世之介」と世之介が答えた。

先に反応したのは強面の理容師の方で、

「ほう、浪人みたいだな」と笑う。

そこは普通に侍でいいんじゃないかと思いはしたが、これ以上、話

をこじらせてもどうかと思い、敢えて触れずにソファに座った。

(43~44p)

  

この文体は、映像では表現しにくいと思いませんか。

 

つづく

 

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