「脳科学者の母が、認知症になる」⑧ 根本的な感情の作る「その人らしさ」
今日は令和2年1月28日。
前記事に引き続き、
「脳科学者の母が、認知症になる」
(恩蔵絢子著/河出書房新社)より引用していきます。
私は、認知機能の作る「その人らしさ」と、もっと根本的な感
情の作る「その人らしさ」と、二つのその人らしさがあるので
はないだろうか、と考えた。
(159p)
脳科学者らしい視点だと思いました。
なるほどです。
さらに話は深まっていきます。
物事を論理的に理解する能力や理性をなくして、感情や本能だ
けになるなんて、動物と一緒なのではないか?認知症の人たち
が、いくら最後まで残っている力を使って精一杯問題に対処し
ようとするからと言って、感情や本能だけになっては、人間ら
しさがあるなんて言えないのではないか?と考える人もいるか
もしれない。
一体、身体や感情の何が希望であるのか、ここから考えてみよ
う。
(169p)
ここから「感情」についての論が始まりますが、一部のみ引用。
我々は、恐怖を適切に感じるからこそ、痛い目に遭う機会を減
らすことができる。不安や、それ以外のうまく言語化できない
ような微妙な感情が動くからこそ、自分にストップがかけられ、
理性的な振る舞いができる。
「感情的になるな」「絶対に良いこと、絶対に悪いことは何か、
理性で分析してこそ、適切な行動ができるのだ」などと言われ
た時代は長く、私自身、そう思い込んできたのだが、ここ数十
年の脳科学研究により、これらは必ずしも正しくないことが明
らかになった。脳科学の今の常識はむしろ、「感情がないと理
性的には行動できない」となっている。
本当は、理性だけでは、何が良いのか悪いのか、どうしても決
着がつかないことが人生の中ではたくさんあって、だからこそ、
私たちは感情を頼りに行動する必要がある。
(179p)
理性ではどうしたらいいのか決定できない状況というのは、我
々の人生にもたくさんある。たとえば、どちらの学校に行くべ
きなのか、誰を恋人に選ぶべきなのか。実際に選んで先に進ん
でみなければ、本当にそれで良かったのか決定できない問題ば
かりである。あれこれとそれなりに条件を比較することはでき
るけれども、結局は「感情」に頼って選び取るしかない。
感情は、理性だけではとても対応できないような、不確実な状
況で、なんとか人間を動かしてくれるシステム、意思決定をさ
せてくれるシステムなのである。
(181~182p)
どんなに物事の理解力が衰えても、彼らの感情的判断は、尊重
するべきなのかもしれない。
アルツハイマー病であっても、感情的反応は健康的な人と同じ
であり、それはやはり、生物として進化してくる上で膨大な時
間をかけて獲得してきた、生存に役に立つ「正しい」判断なの
であり、なかなか失われないものなのだ。
(189p)
感情による判断(反応)は、意外にも正しいようです。
つづく
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