「AI vs 教科書が読めない子どもたち」からの引用/RST
今日は6月10日。
「AI vs 教科書が読めない子どもたち」(新井紀子著/東洋経済新聞社)を
拾い読みしました。
勉強になった。
今までの授業のやり方を後押ししてもらい、
さらに授業をどうやって変えていくといいかを
示唆してもらえた気持ちです。
引用しておいて、くり返し読んで、血や肉にしていきたい。
(AIに奪われずに)「残る仕事」の共通点を探してみると、
コミュニケーション能力や理解力を求められる仕事や、
介護や畦の草抜きのような
柔軟な判断力が求められる肉体労働が多そうです。
AIでは肩代わりできなさそうな仕事なのですから当然ですが、
それは第2章で見てきたAIに不得意な分野と合致します。
つまり、高度な読解力と常識、
加えて人間らしい柔軟な判断が要求される分野です。
もう少し詳しく説明すると、AIの弱点は、
万個教えられてようやく一を学ぶこと、応用が利かないこと,
柔軟性がないこと,決められた(限定された)フレーム(枠組み)の
中でしか計算処理ができないことなどです。
繰り返し述べてきたとおり、A1には「意味がわからない」ということです。
ですから、その反対の、一を聞いて十を知る能力や応用力、
柔軟性、フレームに囚われない発想力などを備えていれば、
AI恐るるに足らず、ということになります。
では 現代社会に生きる私たちの多くは
AIには肩代わりできない種類の仕事を不足なく
うまくやっていけるだけの読解力や常識、
あるいは柔軟性や発想力を十分に備えているでしようか。
常識の欠如した人が増えてきているのは嘆かわしいことですが、
大半の人が持ち合わせていなければ,それはもはや常識とは言いませんから、
常識や無意識の人間らしい合理的判断は
大半の人が持ち合わせていることにしておきます。
問題は読解力を基盤とする、コミュニケーション能力や理解力です。
(171~172p)
「読解力」に視点が絞られてきました。
子どもたちの「読解力」がどうなっているのか?
その読解力を調査するために、新井さんは
リーディングスキルテスト(RST)を開発しました。
RST開発の部分の文章を引用します。
方法論はありました。
コンピューターや言語学の専門家らと一緒に、
東ロボくんに読解力をつけさせるための挑戦を
続けていたからです。
AIが文章を論理的に読めるようになるとしたら、
まずは文がどこで区切られるか、
つまり文節が理解できなければなりません。
それができたら,「何がどうした」という主語と述語の関係や
修飾語と被修飾語の関係を理解しなければなりません。
これを「係り受け解析」(以下「係り受け」)と言います。
たとえば、「私はパスタが好きです」という文では、
「私」が「好き」に〈係り〉、
「好き」は「私」を<受ける)関係にあるという言い方をします。
また、文章には「それ」「これ」といった
指示代名詞が頻繁に出てきますから,
指示代名詞が何を指すかも理解できなければなりません。
それを「照応解決」(以下、「照応」)と言います。
文節と係り受け,照応ができれば、
単純な文章は読めるようになります。
「照応」や「係り受け」は聞き慣れない言葉かもしれませんが、
これから頻繁に出てくるので,憶えておいてください。
自然言語処理研究者は、
係り受け解析や照応解決のベンチマークを作って,
AIに解かせることによってA1の性能を測っています。
係り受け解析では、分野にもよりますが、
80 %程度の精度は出ています。
これを参考にして人間向けのテストを作れば、
基礎的読解カを判定するテストになると思いついたのです。
「係り受け」や「照応」は自然言語処理で
すでに盛んに研究されています。
一方、長年研究されているのに、
なかなか精度が上がらないものがあることを知りました。
「同義文判定」です。
「同義 判定」は2つの違った文章を読み比べて、
意味が 同じであるかどうかを判定します。
これができると、たとえば、入学試験の記述問題を
AIが自動採点できるようになる可能性があります。
解答例と学生の解答を読み比べられるからです。
そのため、研究が続けられていました。
が、うまくいっていません。
それ以外に,意味を理解せず、フレーム問題につまずき、
常識のないAIにはできそうにないもの,、
つまり人間がAIに勝てる可能性がある重要分野として
「推論」「イメージ同定」「具体例同定」という課題を、
新たに設定しました。
「推論」は文の構造を理解した上で、生活体験や常識、
さまざまな知識を総動員して文章の意味を理解する力です。
「イメージ同定」は、文章と図形やグラフを比べて、
内容が一致しているかどうかを認識する能カ、
「具体例同定」は定義を読んで
それと合致する具体例を認識する能力です。
定義には、国語辞典的な定義と、
数学的な定義の2種類があります。
推論,イメージ同定、具体例同定の3つは、
意味を理解しないAIではまったく歯が立ちません。
つまり、A1に読解力をつけさせるための研究で積み上げ、
エラーを分析してきた蓄積を用いて、
人間の基礎的読解力を判定するために開発したテストが
RSTなのです。
RSTはAIの正解率が80%を越える「係り受け」や
急速に研究が進んでいる「照応」と、
AIがまだまだ難しいと考えられている「同義文判定」、
AIにはまったく歯が立たない「推論」「イメージ同定」
「具体例同定(辞書・数学)」の6つの分野で
構成しました。
(185~188p)
長く引用しました。
RSTの「係り受け」~「具体的同定」は大事だと思い、
書き写しました。
RSTの結果から見えてきたこと。
次の投稿に続く。
コメント