「北斎インパクト」/バカラ 1878年ホイールの開発
今日は11月12日。
前投稿に引き続いて、
11月4日放映の「北斎インパクト~世界が愛した超絶アート~」より。
聞き書きします。
ナレーター:新たなデザインへの挑戦は、ガラス加工の技術にも
大きな変革をもたらしました。
ナレーター:パリから東に300㎞。
ロレーヌ地方、バカラ村の工房を訪ねました。
ナレーター:バカラは今から250年あまり前、
フランス王ルイ15世から製造を許されたことに始まる
由緒あるガラス工房です。
ナレーター:高く評価されてきたのが、カッティング。
表面を削り取って、形を整えていく技術です。
ナレーター:北斎と出会うまでは、
直線と曲線によるシンプルな造形が特徴でした。
一方、北斎の影響を受けた新たなデザインには
繊細な自然な描写が欠かせません。
しかし、それをガラスの表面に施すことは、
当時の技術では不可能でした。
ミカエル・レルシュさん:北斎の装飾性のある生き生きとした
線描を何とか表現したいと思いました。
そのために私たちはこれまでにない、
新しい技術を特別に開発する必要があったのです。
ナレーター:試行錯誤を繰り返した職人たち。
1878年。ついに「ホイール」と言われる
ガラスを研磨する道具を開発します。
ガラス職人:丸い形や角張ったものなどがあってね、
15種類ものホイールを使い分けるんだ。
ナレーター:ホイールを使い分けることで、
部分ごとに削り取る深さを変えることができます。
無色透明なガラスでも表現の幅が一気に広がったのです。
ガラス職人:深く削ると前に見え、浅く削ると奥にあるように見えます。
輪郭は浅く削り立体感をつけます。
ナレーター:よっく見てください。
深く彫った葉っぱの部分は手前に見え、
浅く彫った木の枝は奥に見えます。
下の写真:向こう側のガラスにピントが合うことで、魚が浮かび上がってきます。
「竹林の不二」と同じような手前の景色の向こうに見える景色という構図)
ナレーター:北斎に触発され、北斎をも超えようとめざしたガラス職人たち。
その情熱が生み出した技術革新は、
ヨーロッパにおけるガラス工芸を飛躍的に進化させたのです。
ミカエル・レルシュさん:北斎の芸術性と
私たちの開発した技術とが融合することによって、
自然界にあるものを生き生きと表現できるようになりました。
日本とフランスの文化的な架け橋ができたのです。
ホイールの開発、そしてそのホイールを使った技法。
深く削れば手前にあるように見え、
浅く削れば奥にあるように見える。
確かにそうでした。
こういう一つ一つの発見が、
きっとうれしかっただろうなと共感できます。
こういう視点で「バカラ」のガラス製品を
生で見てみたいと思うようになりました。
社会科の教科書では、
北斎の絵がヨーロッパの芸術家に影響を与えたとありましたが、
芸術家にはガラス職人・ガラスデザイナーも
含まれていたのですね。いい勉強になった番組でした。
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