本「アメリカの教室に入ってみた」より3・・・インクルーシブ教育/日本とアメリカの比較
今日は8月16日。
前投稿に引き続いて、
「アメリカの教室に入ってみた」(赤木和重著/ひとなる書房)より引用します。
引用したい文章はたくさんあるけど、
時間的な制約もあり。しぼる!
日本とアメリカでは「インクルーシブ教育」のイメージが同じではないと
赤木先生は言います。
私を含めた日本の実践者の多くは、
「インクルーシブ教育」と聞くと
「様々な子どもが、同じ授業の中で同じ内容を学ぶ」
「様々な子どもが一緒に遊んで絆を深める」と考えがちです。
こういう考えは、インクルーシブ教育を進めるうえで
当たり前のように感じます。
しかし、この前提は、決して当然のことではないとわかりました。
(123p)
どう違うか、かいつまんで。
シラキュースのインクルーシブ教育を象徴するキーワードは2つ。
①difference(違い)
生まれ落ちた瞬間から肌の色が違うといった生物学的な違い
宗教による文化的な違い
子どもによって学習内容が違う
障害のある子どもは、取り出して指導を受けることもある
障害のない、優秀な子どもでも授業を抜けて他の学習をすることがある
障害を含めた違いを当たり前のこととして、
受け入れる姿勢があります。
だからこそ、多少の違いがあっても気にならないでしょうし、
むしろそれを肯定的にとらえる雰囲気があります。
この雰囲気は、障害のある子どもにとっては、楽ちんだと思います。
みんなと同じようにする必要もないし、
むしろ違いはユニークなものとしてとらえる雰囲気すらあるわけですから。
(124p)
②individual(個人主義)
「つながりを(それほど)重視しない」と表現できる
Mind your own business(自分のことをちゃんとしなさい)という指導
お友達が授業の輪から外れて勝手な行動をしたときに、
その子にかかわることは推奨されなかった。
教師はあえて子ども同士をつなげようとはしない
日本のインクルーシブ教育を象徴するキーワードは2つ。
①sameness(同じ)
生物学的に同じ割合が高い
単一民族ではないが、アメリカと比較して肌の色や毛の色が同じ傾向が強い
体格も似ている
文化的に大きな違いはない
宗教的な対立は少ないし、食習慣も似ている
日本の場合、多様性とは言いつつも最終的には、
「一緒・一斉」という「同じ」を象徴する枠組みの中で
保育・教育が行われています。
学年も同じ、カリキュラムも同じ、授業内容も同じ、という
「一緒・一斉」という強固な枠組みの中で、
障害のある子どもも、そうでない子と
同じように学ぶことを目指していきます。
子どもの特性をふまえた上で、
様々な工夫が行われることがありますが、そこに通底しているのは、
「今、この授業の中で、皆が一緒に学ぶにはどうしたらよいか」
という問題意識です。
そして、その「同じ」枠から外れた子どもは、
「問題」のある子どもとしてとらえられます。(中略)
私が見てきたシラキュースの現場では、
「皆と同じことを同じようにする必要はない」という価値観が前提です。
違いが尊重されるのです。
だからこそ、それぞれの子どもの意向を大事にして、
ことさらつながりを求めることなく保育が行われています。
(126p)
②relationship(つながり)
日本では、「障害のある子とない子がともに学ぶ」と言うとき、
「ともに」の中に何らかの相互作用を想定します。
障害のない子どもと障害のある子どもが、
かかわる中でお互いに成長するというのは、
多くの実践記録でも報告されています。
また、インクルーシブ教育に関係する本の多くが、
「つながり」を重視しています。
インクルーシブ教育を考えるうえで「つながり」を重視することは、
当然のように思えます。
自明すぎて、「つながらないインクルーシブなんてない」と
思われるかもしれません。
しかし、これまで報告してきたように、
〈つながり=インクルーシブ教育の必須要件〉とは言いきれません。
少なくとも日本のような「つながり」を前提とする必要はないのです。
Mind your own businessを前提としたうえでの「つながり」と、
友達との仲を優先する「つながり」とでは意味が異なります。
日本の場合はややもすると、とにかく一緒の場にいるだけではダメで、
かかわりあいながらでないと「よい」インクルーシブ教育とは
言えない雰囲気があります。
下手をすると「つながり過剰」インクルーシブ教育になります。
(127p)
この本を読んだことで、インクルーシブ教育は
どうやってやったらいいんだと考えるようになりました。
でも難しい。
思い浮かんでいたのは、日本式インクルーシブ教育でした。
このままでは難しい。
何か新しい発想をしないと、うまくいかないのは目に見えています。
まだ続く。
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