「最期の一手」とはどの一手?
今日は7月29日。
竹原ピストルのアルバム「PEACE OUT」を
ずっと生活のBGMにしています。
その中の1曲「最期の一手 ~聖の青春~」が特にお気に入りでした。
※ここでも道草 まずはこの曲がお気に入り「最期の一手 ~聖の青春~」(2017年7月10日投稿)
この曲につられて本を読みました。
「聖の青春~病気と闘いながら将棋日本一をめざした少年」
(大崎義生著/角川つばさ文庫版)
この本を読むと、「最期の一手 ~聖の青春~」の歌詞の意味がわかってきます。
♪ 生きて 生きて たどり着いた最期の一手
最も繰り返して歌われるこの歌詞は特にわかるようになりました。
病気の体の身でありながら、ずっと将棋をやり続けた村山聖さん。
癌にむしばまれてもうった一手とは?
原作を読むと2候補あります。どっちだろう?
平成9年2月28日、竜王戦での羽生善治さんとの対戦です。
上記の本には次のように書いてありました。
将棋の言葉でわからないところもあるけど、
引用します。
羽生はこの局面を自分に利があると読んでいた。
2歩得の上、次には5二銀と打ち込む厳しい狙いがある。
しかし、村山はここで羽生の読みを上回る好手(こうしゅ)を出す。
7五飛と一つ浮いた手が、まさに盤上この一手とも言える絶命の強手であった。
その手を見て羽生は自らの形勢判断の誤りに愕然としたという。
「村山将棋の最大の長所は感覚の鋭さにあります」と羽生は言う。
「棋譜を調べることによって得たうまさというよりも、
それ以前の感覚的なセンスのよさがあり、
指されてみればなるほどなと思うが、
指されなければ気がつかずに通過してしまっている、
というようなセンスのいい手が多いのです。
その典型的な例が7五飛の一手で、私はこの手は一瞬も考えていませんでした。
指されてみてはじめて、自分では優勢と思っていた局面が、
そうではなかったことに気づかされました。
大胆かつ繊細な好手で、村山さんの感覚の鋭さがよく出ている一手だと思います」
(241~241p)
7五飛の意味は、もし狙い通り5二銀と打ち込めば同玉、
3二飛成に5五飛と角を抜いてしまおうというもの。
羽生はやむなく6六銀と打ったが、以下7四飛、7三角成、同飛、5二銀、同玉、
3二飛成、7一飛と進み進退に窮した。
最後の7一飛が7五飛からの一連の読み筋で、
3二飛成と成りこんだ先手の竜の行動範囲を見事に制限しているのだ。
(242p)
この対戦、村山さんが勝利します。
村山の生涯を代表する名局の誕生であった。 (242p)
よく意味がわかりませんが、7五飛が「最期の一手」の候補です。
もう一つは、ちょうど1年後の平成10年の2月28日。
NHK杯決勝でのやっぱり羽生善治さんとの対戦。
上記の本では、次のように書いてありました。
羽生善治との間で行われた決勝戦は、村山の指し回しが冴えわたり、
もうどこで投げてもおかしくないというところまで羽生は追いつめられる。
最終盤、羽生はすでに諦めていた。
次の手を待って投了しようと心を整理していた。
そんな難しい局面ではないし、村山がここで間違えるわけがないことは
誰よりも羽生がいちばんよく知っていた。
パシッ、と村山が駒を打ち下ろした瞬間、信じられないことが起こっていた。
まさかの大落手(らくしゅ)である。
それは何手もかけて念入りに築き上げてきた優位を
一瞬にして瓦解させてしまうような大ばかだった。
勝った羽生もあっけにとられ、申しわけなく思うような急転直下の
形勢逆転だった。
負けた村山もあまりの見落としに悔しさを通り越し、
どうしたらいいのかわからないような表情をしている。
そうして、二人で天を仰いで、二人の最後の対局は終わった。
(260~261p)
この羽生さんとの最後の対局でさした、失敗の一手を言うのでしょうか?
失敗の一手については、「落手(らくしゅ)」と言うようです。
この落手については、何と実際の映像があるようです。
次の投稿で書きます。
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